Duchenne型筋ジストロフィーで正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィン遺伝子の変異によるX連鎖劣性遺伝性疾患で、進行性の筋力低下を特徴とします。ガワーズ徴候は、この疾患でみられる近位筋(特に下肢帯)の筋力低下が原因で、床から立ち上がる際に手で自分の体を押し上げるようにして立ち上がる典型的な動作であり、病状の進行とともに顕著になります。他の選択肢は、知的障害の頻度、筋萎縮の開始部位、関節拘縮の発症時期、歩行不能となる時期に関して、DMDの特徴とは異なる記述でした。
選択肢ごとの解説
- 1. デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者さんでは、約1/3から1/2に知的障害が認められることが多く、まれではありません。通常は軽度な場合が多いですが、存在することは知られています。正しくは:知的な発達遅延は比較的多く見られます。選びやすい理由:筋疾患であるため、神経認知機能への影響はないと誤解する可能性があります。混同注意:他の特定の筋ジストロフィー型や、筋疾患が直接的な脳疾患ではないため、知的機能には影響しないと考える誤解と混同しやすいです。
- 2. デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、通常、股関節周囲や肩甲帯などの体幹に近い(近位)筋肉から筋力低下や萎縮が始まり、進行していきます。末端(遠位)の筋肉の障害は比較的後から現れます。正しくは:筋萎縮は近位筋から始まることが多いです。選びやすい理由:筋疾患全般で末梢神経障害と混同して末梢から症状が出ると考える可能性があります。混同注意:遠位型筋ジストロフィーや、ギランバレー症候群などの末梢神経疾患と混同する可能性が考えられます。
- 3. 関節拘縮はデュシェンヌ型筋ジストロフィーの進行に伴い発生しますが、発症の初期段階(歩行が可能な時期)よりも、疾患が進行し筋力低下が顕著になってから、特に足関節(尖足)や股関節、膝関節などに生じやすくなります。正しくは:疾患の進行とともに、特に歩行能力の低下と並行して関節拘縮が生じやすいです。選びやすい理由:筋ジストロフィーでは最終的に拘縮が生じるため、初期からと誤解する可能性があります。混同注意:拘縮が早期から問題となる別の疾患や、DMDで最終的に拘縮が起こるという事実と、その時期の混同が考えられます。
- 4. デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者さんは、多くの場合、7歳から12歳頃、平均的には10歳前後で歩行能力を失います。5歳までというのは通常よりも早い時期です。正しくは:7歳から12歳ごろまでに歩行不能になることが多いです。選びやすい理由:小児期に進行する疾患であるため、早期に歩行不能になると誤解する可能性があります。混同注意:発症時期(3-5歳頃にガワーズ徴候などで気づかれることが多い)と歩行不能になる時期の混同が考えられます。
- 5. 正解。ガワーズ徴候は、大腿や殿部の近位筋の筋力低下が原因で、床から立ち上がる際に手で自分の膝や太ももを押し上げながら立ち上がる特徴的な動作です。デュシェンヌ型筋ジストロフィーの初期から中期にかけて見られる代表的な徴候の一つであり、筋力低下の進行と関連しています。
国試ポイント
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは国家試験で頻繁に出題される疾患の一つであり、その疫学、病態生理、主要な臨床症状(特にガワーズ徴候、仮性肥大、歩行能力の推移)、合併症(知的障害、心筋症、呼吸機能低下)、理学療法管理のポイントなどが問われます。特に特徴的な徴候と、病期の進行に伴う変化を正確に理解しているかが重要です。
混同注意
筋ジストロフィー全般(Becker型、福山型、筋強直性ジストロフィーなど)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、先天性ミオパチー、多発性筋炎/皮膚筋炎などの炎症性筋疾患、ギランバレー症候群などの末梢神経疾患と混同しやすいです。特に、Becker型筋ジストロフィーとは遺伝子異常部位は同じですが、症状の重症度や進行度が異なる点を理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関する問題が出た場合、まず遺伝形式とジストロフィン欠損という根本原因を想起します。次に、小児期に始まる進行性の近位筋力低下が引き起こす典型的な症状(ガワーズ徴候、仮性肥大、歩行様式、関節拘縮の時期)を時系列で追っていきます。さらに、心筋症や呼吸器合併症など、生命予後に影響する重要な合併症も確認するようにします。治療やリハビリテーションの目標も病期によって異なるため、その理解も深めておくと良いでしょう。
関連知識
・遺伝形式: X連鎖劣性遺伝。男性に発症し、女性は保因者となります。 ・原因遺伝子: ジストロフィン遺伝子。 ・病態: 筋細胞膜の安定性に関わるジストロフィンタンパクの欠損により、筋細胞が破壊され、脂肪・線維組織に置換されます。 ・特徴的な症状: ガワーズ徴候(近位筋力低下による立ち上がり動作)、仮性肥大(特に腓腹筋)、トレンデレンブルグ歩行/動揺性歩行(股関節周囲筋力低下による)、尖足(アキレス腱短縮による)、側弯症(進行期に多く見られる)、心筋症(約9割に合併)、呼吸不全(横隔膜などの呼吸筋力低下による)。 ・発症・進行: 乳幼児期に症状が出始め、3-5歳頃にガワーズ徴候などで気づかれることが多いです。7-12歳頃に歩行能力を失い車椅子生活へ移行します。20歳前後で呼吸・循環不全により死亡することが多いですが、医療の進歩により延命傾向にあります。 ・知的障害: 約1/3から1/2に軽度の知的障害を合併することがあります。