74歳の男性。肺尖部がんによる腕神経叢への直接浸潤により環指・小指〜前腕中央・内側にかけて痛覚過敏を訴えている。腕神経叢への浸潤部位はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
肺尖部がんは、その位置から腕神経叢の下部(特にC8, T1神経根が合流して形成される下神経幹)に直接浸潤しやすい特徴があります。環指・小指から前腕内側にかけての痛覚過敏は、C8・T1神経支配領域の症状であり、これは下神経幹の障害に最も合致します。
選択肢ごとの解説
- 1. C7神経根の障害は主に中指や示指、前腕後面の感覚異常、および上腕三頭筋や手関節伸筋の筋力低下を引き起こします。正しくは:C7神経根の障害は主に中指や示指、前腕後面の症状を呈します。選びやすい理由:神経根レベルでの障害という点で関連があるように見えますが、症状の分布が異なります。混同注意:C6、C8神経根の症状との混同。
- 2. C8神経根の障害では、小指と環指の尺側(小指側)半分に感覚異常が出ますが、通常、前腕中央まで広がるような症状よりは、より末梢に近い範囲で現れることが多いです。また、下神経幹はC8とT1神経根が合流して形成されるため、より広範囲の症状を示します。正しくは:C8神経根の障害は小指と環指の尺側に症状を呈しますが、前腕中央まで広がる症状には下神経幹の方が適切です。選びやすい理由:小指・環指の症状があるのでC8神経根と直結させやすいですが、下神経幹はC8とT1を合わせた広範な支配を持ちます。混同注意:下神経幹との区別。下神経幹はC8とT1の線維から構成されます。
- 3. 正解。下神経幹はC8神経根とT1神経根が合流して形成されます。C8およびT1神経根の支配領域は、環指・小指、そして前腕の内側から中央部にかけての感覚を司ります。肺尖部がんはしばしばこの部位に浸潤し、関連する症状を引き起こします。選びやすい理由:小指・環指の症状からC8神経根と迷うかもしれませんが、前腕中央まで含めると下神経幹がより正確な部位です。混同注意:C8神経根との混同。下神経幹はC8とT1神経根が合わさったもので、より広範な尺骨神経支配領域に関与します。
- 4. 外側神経束は、主に筋皮神経と正中神経の外側根を形成します。これらの神経は、主に上腕二頭筋や上腕筋の運動、前腕の外側部の感覚を支配します。問題文の症状とは一致しません。正しくは:外側神経束の障害は主に前腕の外側部の感覚異常や上腕二頭筋の筋力低下に関連します。選びやすい理由:腕神経叢の一部であるため選択肢に入りやすいですが、支配領域が異なります。混同注意:内側神経束や後神経束との混同。
- 5. 後神経束は、腋窩神経と橈骨神経を形成します。これらの神経は、主に肩関節の運動(三角筋など)や上腕三頭筋、前腕伸筋群の運動、上腕後面や前腕後面の感覚を支配します。問題文の症状とは一致しません。正しくは:後神経束の障害は主に上腕後面や前腕後面の感覚異常、および伸筋群の筋力低下に関連します。選びやすい理由:腕神経叢の一部であるため選択肢に入りやすいですが、支配領域が異なります。混同注意:外側神経束や内側神経束との混同。
国試ポイント
この問題は、腕神経叢の解剖学的構造とその神経支配領域、特に特定の症状(疼痛、感覚異常など)がどの部位の障害に起因するかを理解しているかを問うものです。肺尖部がんのような疾患と関連付けて出題されることも多く、臨床的な知識も必要とされます。
混同注意
C8神経根と下神経幹の区別が最も重要です。C8神経根は小指と環指の尺側半分に症状が出ますが、前腕中央まで症状が広がる場合はT1神経根の関与、すなわち下神経幹の障害を示唆します。また、神経根、神経幹、神経束ごとの支配領域を正確に理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の問題が出た場合には、症状の正確な分布(どの指、前腕のどの部位、上肢全体のどの部分か)を詳細に把握し、それが腕神経叢のどの構成要素(神経根、神経幹、神経束、末梢神経)の支配領域と一致するかを判断することが重要です。また、運動麻痺の有無や具体的な筋力低下パターンも確認するポイントとなります。
関連知識
パンコースト症候群(Pancoast syndrome):肺尖部がんによる腕神経叢、交感神経節、椎体への浸潤によって生じる症候群で、肩や腕の痛み、ホルネル症候群(Horner's syndrome)、小手筋萎縮などを呈します。腕神経叢の各部位(神経根、神経幹、神経束、末梢神経)の支配領域と、それに対応する運動・感覚機能について詳細な知識が求められます。