87歳の女性。転倒して左股関節痛を訴え、入院となった。受傷後2日目に後方侵入法で手術を受けた。術後のエックス線写真(別冊No. 3)を別に示す。正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
人工股関節置換術(THA)後方アプローチでは、股関節の屈曲、内転、内旋の複合運動が脱臼の危険性が高い肢位とされています。靴下着脱時にこの危険肢位を避けるためには、股関節を外旋位に保ち、膝を外側に開くようにして行うのが安全です。
選択肢ごとの解説
- 1. 股関節後方アプローチ後の脱臼肢位は、股関節屈曲・内転・内旋の複合運動です。そのため、内転位に保持することは脱臼リスクを高めます。正しくは:安静時は股関節を軽度外転位に保持し、内転を避けることが推奨されます。選びやすい理由:安静肢位の指導は重要であるため、正しい知識があれば選択しない。混同注意:他の股関節手術(例:前方アプローチ)後の禁忌肢位や、股関節疾患全般の安静肢位と混同しやすい。
- 2. 正解。股関節後方アプローチでは、股関節屈曲、内転、内旋が禁止肢位となります。靴下の着脱動作は、通常股関節屈曲・内転・内旋を伴いやすいため、外旋位を保つことで禁止肢位を避けることができます。具体的には、膝を外側に開く(股関節外転・外旋)ようにして足を反対側の膝に乗せる(股関節屈曲を抑えつつ外転・外旋位で操作する)と安全です。選びやすい理由:特定の動作での肢位に関する具体的な指示なので、正しいと判断しやすい。
- 3. 大腿四頭筋セッティングは、大腿四頭筋の等尺性収縮運動であり、術後早期から痛みに応じて開始されるのが一般的です。通常、術後1週ではなく、術後早期(当日または翌日)から開始されます。正しくは:手術後早期(術後当日または翌日)から、痛みに合わせて大腿四頭筋セッティングを開始する。選びやすい理由:筋力トレーニング開始時期は重要な情報であり、術後早期に開始される運動と関連付けて考えやすい。混同注意:他のより負荷の高い筋力トレーニング(例:抵抗運動)の開始時期と混同しやすい。大腿四頭筋セッティングは比較的低侵襲な運動である。
- 4. この時期と方法の組合せは、本症例の術後理学療法として適切ではありません(公式正答を参照)。選びやすい理由:股関節周囲筋の筋力トレーニングはリハビリテーションの重要な要素であり、早期に開始したいというイメージから選択しやすい。混同注意:大腿四頭筋セッティングなど、より早期に開始される運動と混同しやすい。中殿筋のトレーニングは、特に後方アプローチでは切開部位への配慮が必要となる。
- 5. この時期と方法の組合せは、本症例の術後理学療法として適切ではありません(公式正答を参照)。正しくは:術後早期から部分荷重を開始し、数週から数か月で段階的に全荷重へと移行する。選びやすい理由:荷重制限は術後管理において非常に重要であり、長期にわたる制限が必要な場合もあるという知識から、重い制限が正しいと誤認しやすい。混同注意:他の重度の骨折や骨接合術で、骨癒合まで長期間の免荷が必要な場合と混同しやすい。
国試ポイント
人工股関節置換術後のリハビリテーション管理、特に脱臼予防のための禁止肢位とその具体的な日常生活動作への応用、および術後早期の運動開始時期に関する知識が問われています。X線写真から術式(後方侵入法)を判断できるかどうかも重要です。
混同注意
後方アプローチと前方アプローチの禁止肢位の違い、および各筋力トレーニングの開始時期や荷重制限の期間は、混同しやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、術式(前方・後方)が明示されているか、患者の年齢や骨の状態、使用されたインプラントの種類(セメント固定かセメントレスか)が提示されているかを確認し、それらによってリハビリテーションプロトコルがどのように変化するかを判断する必要があります。また、具体的な日常生活動作の指導内容について、禁止肢位との関連を深く問われる可能性があります。
関連知識
人工股関節置換術(THA)の術式(後方、前方、側方アプローチ)、それぞれの筋切離部位、脱臼しやすさ、禁止肢位、術後早期リハビリテーションの段階付け、大腿四頭筋セッティング・中殿筋トレーニングの目的と開始時期、荷重制限の原則(セメント固定とセメントレス固定の違いなど)。