周術期の肺塞栓症で誤っているのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
肺塞栓症の主な原因となる深部静脈血栓症(DVT)の予防には、血流のうっ滞を防ぐことが不可欠です。そのため、手術後の早期離床や下肢の積極的な運動が推奨され、安静臥床はむしろDVT発生のリスクを高める要因となります。したがって、「予防のため安静臥床とする」という記述は誤りであり、設問の「誤っているのはどれか」に対する正答となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 肺塞栓症は、肺の血管が血栓によって詰まることでガス交換が妨げられ、呼吸困難や胸痛などの症状が現れる典型的な病態です。選びやすい理由:肺塞栓症の主要な症状であり、多くの人が知っている事実のため、正しい記述として認識されやすいです。混同注意:症状の程度は塞栓の大きさによって異なり、軽度の場合は他の呼吸器症状と混同されることがあります。
- 2. 広範囲の肺塞栓症は、肺動脈圧を急激に上昇させて右心不全を引き起こし、心臓への負担が大きくなることで突然の心停止、つまり突然死につながるリスクが非常に高いです。選びやすい理由:肺塞栓症の重篤性を表す重要な情報であり、正しい記述として判断しやすいです。混同注意:突然死の原因は多岐にわたりますが、肺塞栓症もその一つとして特に術後など特定の状況でリスクが高いことを認識する必要があります。
- 3. 長期間の安静により下肢に形成された深部静脈血栓は、離床して歩行を開始した際の筋ポンプ作用によって剥がれ落ち、血流に乗って肺に運ばれやすくなります。そのため、活動を開始した直後に症状が出現することがよくあります。選びやすい理由:離床時の体の動きが血栓を移動させるというメカニズムを理解していれば、正しい記述として納得できます。混同注意:安静期間中にも血栓は形成されますが、症状が顕在化するのは血栓が移動するきっかけである活動開始時であることが多いという点で混同しやすいです。
- 4. 正解。肺塞栓症の主な原因である深部静脈血栓症(DVT)の予防には、血流の停滞を防ぐことが重要です。そのため、早期離床、下肢の運動、弾性ストッキングの着用、間欠的空気圧迫装置の使用、抗凝固療法などが推奨されます。安静臥床はむしろ血流を停滞させ、DVTの発生リスクを高めるため、予防策としては適切ではありません。正しくは:予防策として早期離床や下肢の積極的な運動を促します。選びやすい理由:手術後には「安静」が重要だと考える一般的な認識があるため、血栓予防にも安静が良いと誤解しやすいです。混同注意:他の疾患や手術部位の保護のための安静と、血栓予防のための運動促進が混同されやすいです。
- 5. 肺塞栓症の90%以上は、下肢の深部静脈にできた血栓(深部静脈血栓症)が剥がれて肺動脈に運ばれることで発生します。したがって、下肢静脈血栓は最も一般的な原因です。選びやすい理由:肺塞栓症と深部静脈血栓症の関連は基本的知識であり、正しい記述として理解されやすいです。混同注意:まれに骨盤内静脈など他の部位からの血栓も原因となりますが、圧倒的に下肢からの発生が多いという点で、誤解を避ける必要があります。
国試ポイント
周術期における肺塞栓症(PE)とその原因となる深部静脈血栓症(DVT)に関する基本的な病態生理、症状、特に重要な予防策についての知識を問う問題です。DVT予防における早期離床の重要性を正確に理解しているか、そして安静臥床がリスク因子となることを認識しているかが確認されます。
混同注意
手術後の「安静」が、全ての合併症予防に良いと誤解している受験生は、血栓予防にも安静が良いと考えてしまう可能性があります。しかし、DVT/PEの予防においては、早期離床や運動が極めて重要であり、安静が推奨される他の病態と混同しやすい点に注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
次回この論点が問われたら、周術期のDVT/PE予防における理学療法士の具体的な介入内容、早期離床の適応基準と禁忌、そして個々の患者のリスク因子に応じたテーラーメイドな予防戦略について、より深く理解しているかを確認しましょう。特に、エビデンスに基づいた最新の予防ガイドラインを把握しておくことが重要です。
関連知識
深部静脈血栓症(DVT)のリスク因子(Virchowの三徴:血流うっ滞、血管内皮損傷、血液凝固能亢進)、症状(片側の下肢の腫脹、疼痛、熱感)、診断方法(D-ダイマー、超音波検査)、治療(抗凝固療法)。肺塞栓症の重症度分類、治療(血栓溶解療法、外科的血栓除去術)。理学療法士がDVT/PE予防のために行う具体的な介入(早期離床プロトコル、下肢運動指導、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫装置の適用と管理)も重要です。