58歳の男性。飲酒後に自宅ソファーで寝てしまい、起床時に右手が動かなくなったことを主訴に受診。橈骨神経麻痺(高位型)と診断された。長橈側手根伸筋より遠位の橈骨神経支配の筋はMMTで0~1レベルであった。1か月後も自然回復を認めなかったため、上肢装具を作製することになった。作製する装具で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
橈骨神経麻痺により手関節背屈および手指伸展が障害され、下垂手となります。この状態を改善し、機能的な手の使用を可能にするためには、手関節を背屈位に保持し、かつ手指の伸展を補助する装具が必要となります。選択肢4の装具は、手関節を背屈位に固定し、さらにスプリング等のメカニズムでMP関節(中手指節関節)の伸展を補助するダイナミックな機能を持っています。
選択肢ごとの解説
- 1. 選択肢1はアームスリングであり、上腕骨骨折後の固定や肩関節の安静保持に用いられることが多く、橈骨神経麻痺による下垂手の機能改善には適しません。正しくは:アームスリングは上腕骨骨折や肩関節の損傷後の固定、安静保持に用います。橈骨神経麻痺による下垂手には適しません。選びやすい理由:上肢の機能障害に対する装具として一般的なため、安易に選択してしまう可能性があります。混同注意:アームスリングの適応疾患(上腕骨骨折、肩関節脱臼など)
- 2. 選択肢2は上肢支持台であり、重力の影響を軽減しながら上肢の運動を補助するための機器です。麻痺した腕の運動療法や食事動作の補助には使用されますが、装具として常に装着して下垂手を矯正するものではありません。正しくは:上肢支持台は重力の影響を軽減し、麻痺した上肢の運動補助やADL訓練に使用される機器です。下垂手に対する常時装着する装具ではありません。選びやすい理由:麻痺した上肢の機能補助という点で類似しているため、選択肢として魅力を感じるかもしれません。混同注意:上肢装具と運動補助機器の区別
- 3. 選択肢3は手関節装具(コックアップスプリントなど)であり、手関節を背屈位に固定する静的装具です。橈骨神経麻痺では手関節の背屈筋だけでなく、手指の伸展筋も麻痺するため、この装具だけでは手指の伸展を補助できません。手指の伸展不全が残ると機能的な手の使用は困難です。正しくは:手関節を背屈位に固定する静的装具ですが、手指の伸展補助機能がないため、橈骨神経麻痺による下垂手には不十分です。選びやすい理由:手関節の背屈位を保持するという点で、橈骨神経麻痺の症状の一部に対応しているため、適切な装具だと誤解しやすいです。混同注意:手関節の固定のみを目的とする装具と、手指伸展も補助する装具の適応
- 4. 正解。選択肢4は橈骨神経麻痺装具(ダイナミックスプリント)であり、手関節を背屈位に固定しつつ、スプリング機構によって中手指節関節(MP関節)の伸展を補助します。これにより、患者は物を掴む際に指を伸展させることができ、機能的な手の使用が可能になります。問題文の症例は橈骨神経麻痺(高位型)と診断され、長橈側手根伸筋より末梢の橈骨神経に支配される筋肉がMMT0~1レベルであることから、手関節の背屈だけでなく、手指の伸展補助も必須であるため、この装具が最も適切です。選びやすい理由:(正答なので空欄)混同注意:(正答なので空欄)
- 5. 選択肢5は主に手指の屈曲を補助する装具、またはPIP関節やDIP関節の変形を矯正する装具として用いられることがあります。橈骨神経麻痺による下垂手では、手指の伸展補助が主要な目的となるため、この装具は不適切です。特に、手関節の背屈固定機能がない点も問題です。正しくは:この装具は手指の屈曲補助やPIP/DIP関節の変形矯正に用いられることが多く、橈骨神経麻痺による手指伸展不全には適していません。また、手関節の背屈固定機能もありません。選びやすい理由:手指の運動を補助する装具であるため、何らかの機能障害に対応している装具として選択肢に入れてしまいやすいです。混同注意:手指伸展補助装具と手指屈曲補助または関節変形矯正装具の区別
国試ポイント
橈骨神経麻痺による下垂手に対する装具の選択に関する知識。特に、静的装具と動的装具の役割と、各装具の適応を理解しているか。
混同注意
静的な手関節固定装具(選択肢3)と、手指伸展も補助する動的な装具(選択肢4)との違い。橈骨神経麻痺では手関節の固定だけでなく、手指の伸展補助も重要となる点がポイント。
次に同じ論点が出たら
同様の症例が出た場合、橈骨神経麻痺による運動障害の範囲(どの筋肉が麻痺しているか)と、その障害に対してどのような機能的改善を目的とするかを基に、装具の機能(静的固定か動的補助か)を判断します。特に、手指伸展の補助が必要かどうかが重要な判断基準となります。
関連知識
橈骨神経麻痺の主要症状は下垂手であり、これは手関節の背屈筋(長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋)と手指伸展筋(総指伸筋、示指伸筋、小指伸筋)の麻痺によるものです。装具療法だけでなく、理学療法、作業療法、神経縫合術などの治療法も関連知識として重要です。