末梢神経損傷で予後が最も良いのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
末梢神経損傷の分類において、ニューラプラキシアは軸索の連続性が保たれた一時的な伝導障害であり、比較的短期間で完全に回復することが期待されます。アクソノトメーシスは軸索が断裂しているためウォラー変性が生じ、回復には軸索再生を要し時間がかかります。ニューロトメーシスは神経全体が断裂しており、自然回復はほぼ不可能で予後が最も不良です。神経根引き抜き損傷は脊髄神経根が脊髄から引き抜かれた重篤な損傷で、予後不良です。Waller変性は神経損傷後に起こる病理学的変化であり、損傷の種類ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. ニューロトメーシスは神経線維だけでなく、その支持組織(神経周膜、神経上膜)も完全に断裂した状態を指します。自然回復は極めて困難で、外科的修復が必要となる最も重度な損傷です。正しくは:外科的修復が必要であり、予後は最も不良です。選びやすい理由:「神経損傷」という言葉から、完全断裂が重度であることは想像できますが、他の選択肢との相対的な回復の見込みを正確に理解していないと迷う可能性があります。混同注意:他の軽度の損傷(ニューラプラキシア、アクソノトメーシス)と混同することはありませんが、損傷の分類とその予後の関係性を正確に把握していないと正答を選べません。
- 2. アクソノトメーシスは、神経線維(軸索)は断裂しているものの、その支持組織(神経周膜、神経上膜)は保たれている状態です。軸索が再生すれば回復は期待できますが、数ヶ月から年単位の時間を要し、完全に元の機能に戻ることは難しい場合が多いです。正しくは:回復には時間がかかり、完全な機能回復は困難な場合も多いです。選びやすい理由:ニューロトメーシスよりは軽度であるため、回復の可能性があると誤解しがちです。混同注意:ニューラプラキシアとの区別が重要です。アクソノトメーシスでは軸索が断裂しているためWaller変性が起こりますが、ニューラプラキシアでは起こりません。
- 3. 正解。ニューラプラキシアは、神経線維の連続性は保たれているものの、一時的に伝導が障害されている状態(伝導ブロック)です。主に脱髄が原因で、軸索の損傷はなく、Waller変性も起こりません。原因が除去されれば比較的短期間で完全に回復することが期待されます。選びやすい理由:「伝導ブロック」という言葉が、回復しやすい状況を示唆しているため、選びやすいです。混同注意:軸索断裂を伴うアクソノトメーシスとの違いを明確に理解することが重要です。
- 4. 神経根引き抜き損傷は、脊髄から神経根が引き抜かれた、極めて重篤な損傷です。中枢神経に近い部分での損傷であり、通常、自然回復は望めず、予後は非常に不良です。永続的な麻痺や感覚障害を残すことが多いです。正しくは:非常に重篤な損傷であり、自然回復はほとんど期待できません。選びやすい理由:「神経損傷」の種類の一つとして提示されているため、他の損傷と同列に考えやすいですが、その重篤度と予後の違いを理解する必要があります。混同注意:他の末梢神経の損傷分類(Seddon分類やSunderland分類)とは異なる、損傷の部位とメカニズムを示すものであり、予後が極めて悪い点で他とは一線を画します。
- 5. Waller変性は、神経線維が損傷された際に、損傷部位より遠位の軸索やミエリン鞘が変性・分解される過程そのものを指します。これは神経損傷の「種類」ではなく、軸索が断裂した際に起こる「現象」や「病理変化」であり、予後の良し悪しを直接表すものではありません。正しくは:これは神経損傷後に起こる病理学的変化であり、予後を直接示す損傷の種類ではありません。選びやすい理由:神経損傷に関連する専門用語なので、知識が不十分だと選択肢として検討してしまう可能性があります。混同注意:Waller変性が起こる損傷(アクソノトメーシス、ニューロトメーシス)と、Waller変性が起こらない損傷(ニューラプラキシア)の区別が重要です。Waller変性自体が予後を直接示す損傷の種類ではないという理解が求められます。
国試ポイント
この問題は、末梢神経損傷の分類(Seddon分類やSunderland分類)と、それぞれの損傷が持つ予後(回復の見込み)についての理解を問うものです。特に、各損傷の病態生理学的特徴と、それが回復過程にどう影響するかを正確に把握しているかがポイントとなります。重症度と予後が最も良い・悪いといった極端なケースを区別できるようにしておく必要があります。
混同注意
特にニューラプラキシアとアクソノトメーシスの区別、およびアクソノトメーシスとニューロトメーシスの区別が重要です。それぞれ軸索の連続性、支持組織の連続性が保たれているか否かで予後が大きく変わるため、正確な定義を理解しておく必要があります。また、Waller変性が損傷の種類ではなく、病理学的変化であることを理解していないと混乱しやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、Seddon分類またはSunderland分類の詳細な内容(各段階における組織損傷の具体的な状態や、回復期間、完全回復の可能性など)を問う問題が出題される可能性があります。また、特定の神経損傷部位(例:橈骨神経麻痺など)に絡めて、その病態や予後を推測させる応用問題も考えられます。
関連知識
末梢神経損傷のSeddon分類(ニューラプラキシア、アクソノトメーシス、ニューロトメーシス)とSunderland分類(Ⅰ度〜Ⅴ度)。Waller変性の機序。神経再生のメカニズム。神経根損傷と末梢神経損傷の違い。