肩甲骨外転・上方回旋を伴い肩関節屈曲位保持に作用するのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
前鋸筋は、肩甲骨を外転(前方へ引き出す)させるとともに、上方回旋させる主要な筋肉です。肩関節を屈曲させる際、特に90度以上の屈曲を維持するためには、肩甲骨が適切に上方回旋・外転することが必要不可欠です。これにより、上腕骨頭と肩峰の間のインピンジメントを防ぎ、上腕骨の十分な可動域を確保し、腕を上げた状態を安定して保持することができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 棘下筋は主に肩関節の外旋、水平外転、および伸展に作用します。肩甲骨の外転や上方回旋には直接関与しません。正しくは:肩関節を外旋させ、水平外転や伸展にも寄与します。選びやすい理由:回旋筋腱板の一部であり、肩関節の安定化に重要なため、広範な肩の動きに関わると誤解されがちです。混同注意:肩関節の他のローテーターカフ筋(小円筋、棘上筋、肩甲下筋)の機能と混同されやすいです。
- 2. 広背筋は肩関節の強力な内転、伸展、内旋筋です。肩関節の屈曲位保持には拮抗的に作用し、肩甲骨の外転・上方回旋には関与しません。正しくは:肩関節を内転、伸展、内旋させます。選びやすい理由:体幹と上肢をつなぐ大きな筋肉であるため、肩の動き全般に関わると考えやすいですが、その作用は問われている動きとは異なります。混同注意:肩関節の広範な動きに関わるため、他の大きな肩関節筋(例:三角筋)の作用と混同することがあります。
- 3. 小円筋は棘下筋と同様に、主に肩関節の外旋に作用します。肩甲骨の外転や上方回旋には直接関与しません。正しくは:肩関節を外旋させ、肩関節の安定化に寄与します。選びやすい理由:棘下筋と同じく回旋筋腱板の一部であり、その機能が似ているため、同様の理由で選択肢として魅力的に映ることがあります。混同注意:棘下筋の機能と非常に似ているため、両者の区別がつきにくいことがあります。
- 4. 正解。前鋸筋は、肩甲骨を胸郭に沿って前方に引き出す(外転)とともに、下角を外側かつ上方に移動させる(上方回旋)主要な筋肉です。これらの肩甲骨の動きは、肩関節を90度以上屈曲させたり、その位置を安定して保持するために不可欠です。
- 5. 菱形筋(大菱形筋・小菱形筋)は、肩甲骨を脊柱に引き寄せる(内転)、挙上、および下方回旋させる働きを持ちます。これは問われている肩甲骨の外転・上方回旋とは逆の作用です。正しくは:肩甲骨を内転(脊柱へ引き寄せる)、挙上、下方回旋させます。選びやすい理由:肩甲骨の運動に関わる筋肉であるため、選択肢として見過ごされやすいですが、その作用方向は異なります。混同注意:肩甲骨の外転・内転の拮抗作用、上方回旋・下方回旋の拮抗作用を持つ他の筋肉(特に前鋸筋)と混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、肩甲骨の運動(キネマティクス)とそれに伴う肩関節の動き、そしてそれらを制御する主要な筋肉の作用を理解しているかを問うものです。特に、複合的な動作における複数の筋肉の協調作用(この場合は肩甲骨の外転・上方回旋と肩関節屈曲位保持)を理解しているかが重要となります。
混同注意
肩甲骨の拮抗する動きに関わる筋肉(例:前鋸筋と菱形筋の拮抗作用、僧帽筋上部線維・中部線維・下部線維それぞれの作用)や、肩関節の純粋な屈曲筋(例:三角筋前部線維、上腕二頭筋長頭)と混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、単一の関節運動だけでなく、複合的な動作における複数の関節(肩甲骨と上腕骨など)の連携と、それを制御する筋肉群の機能を把握することが重要になります。特に、肩甲骨の不安定性が上肢機能に与える影響や、特定の疾患(例:インピンジメント症候群)と関連付けて問われる可能性が高いです。
関連知識
肩甲上腕リズムの理解が重要です。肩関節の屈曲や外転には、上腕骨の動きと肩甲骨の動きが2:1の比率で協調して行われることが知られています。このリズムが破綻すると、肩の可動域制限や疼痛、インピンジメント症候群などに繋がります。前鋸筋の機能不全は、いわゆる翼状肩甲(winging scapula)を引き起こし、肩関節の機能障害の原因となります。また、前鋸筋は僧帽筋上部線維および下部線維と共に、肩甲骨上方回旋のフォースカップルを形成します。