左大腿義足歩行の右立脚中期に図のような現象が観察された。原因はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
義足の全長が長すぎると、遊脚期の義足が地面に引っかかるのを防ぐために、立脚期の健側下肢で踵を挙げ、身体全体を持ち上げてクリアランスを確保する「Vaulting(健側足関節の底屈)」という代償動作が発現します。この現象は、健側が立脚中期にあるときに最も顕著に観察されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。義足が長すぎると、遊脚期の切断側(左)の義足が地面に接触しやすくなります。これを避けるために、立脚期の健側(右)では身体を持ち上げるように踵を浮かせ(Vaulting)、義足のクリアランスを確保しようとします。これは右立脚中期に顕著に現れる代償動作です。
- 2. 後方バンパーが弱すぎると、立脚初期(Heel contactからFoot flat)に膝が過度に屈曲しやすくなりますが、右立脚中期にVaultingを引き起こす直接の原因ではありません。正しくは:後方バンパーが弱すぎると、初期接地時の膝折れや屈曲が大きくなる現象が起こりやすいです。選びやすい理由:義足の適合不良の一種であるため、原因として選びやすい選択肢です。混同注意:膝の安定性に関わる他の義足歩行異常と混同しやすいです。
- 3. ソケットの初期内転角が大きすぎると、股関節の外転筋群への負荷が過剰になったり、内側からの圧迫が増したりしますが、右立脚中期にVaultingを直接引き起こす原因ではありません。通常、内転角は股関節外転筋のてこ腕を長くし、安定性を高めるために設定されます。正しくは:ソケットの初期内転角が大きすぎると、股関節の内転が制限されたり、義足の外側が地面に接地しにくくなったりすることがあります。選びやすい理由:ソケットの適合不良として誤って選びやすい選択肢です。混同注意:ソケットのアライメント問題全般と混同しやすいです。
- 4. 切断側の股関節外転筋力が不足していると、立脚期に骨盤が健側へ傾斜する(Trendelenburg徴候)ことや、トレンデレンブルグ歩行の原因となりますが、右立脚中期に健側でVaultingを直接引き起こす原因ではありません。正しくは:切断側の股関節外転筋力が不足していると、健側への体幹側方動揺や骨盤の動揺(Trendelenburg徴候)が生じます。選びやすい理由:筋力低下が歩行異常の一般的な原因であるため、選びやすい選択肢です。混同注意:股関節周囲筋の機能不全による他の歩行異常(Trendelenburg歩行など)と混同しやすいです。
- 5. 切断側の股関節伸展可動域が制限されていると、遊脚期の義足の前方への振り出しが不十分になったり、立脚期に体幹を前傾させて代償したりしますが、右立脚中期に健側でVaultingを直接引き起こす原因ではありません。正しくは:切断側の股関節伸展可動域が制限されていると、歩行周期における義足の振り出しが妨げられ、体幹前傾を伴うような歩行になることがあります。選びやすい理由:可動域制限が歩行異常の一般的な原因であるため、選びやすい選択肢です。混同注意:股関節の可動域制限による他の歩行異常(体幹前傾など)と混同しやすいです。
国試ポイント
大腿義足歩行における様々な歩行異常とその原因(義足の問題、断端の問題、筋力・可動域の問題など)を正確に理解しているかを問う問題です。特に「Vaulting」は義足が長すぎる典型的な徴候として頻出します。
混同注意
股関節の外転筋力不足によるTrendelenburg徴候や、股関節屈曲拘縮による遊脚期の義足振り出し困難など、他の義足歩行異常の原因と混同しやすいです。各現象とその原因を正確に結びつける知識が必要です。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、他の代表的な義足歩行異常(例:義足の膝折れ、外転歩行、回旋歩行など)がどのような原因(義足のアライメント不良、断端の適合不良、筋力低下、拘縮など)で生じるか、その組み合わせを問われる可能性があります。また、片麻痺や脊髄損傷などの疾患別歩行異常との鑑別も重要になります。
関連知識
大腿義足の歩行周期と各相での適切な動作、主な義足歩行異常(Vaulting、Circumduction、Pelvic hiking、Knee buckling、Hyperextensionなど)とそれらの原因、義足の各パーツ(ソケット、膝継手、足継手、バンパーなど)の機能と、不適合による影響、断端の状態(筋力、可動域、疼痛など)が歩行に与える影響。