積極的な全身持久力トレーニングを開始してよい状態はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
経皮的酸素飽和度94%は軽度の低酸素状態ではありますが、他の選択肢に示されている心室頻拍、安静時脈拍140回/分、体温38.6℃、収縮期血圧60mmHgといった状態は、いずれも生命に関わる可能性のある重大な異常値であり、運動開始の絶対的な禁忌または強い相対的禁忌に該当します。これらと比較すると、SpO2 94%は慎重なモニタリングと評価を前提として、運動療法を検討できる状態と判断されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 心室頻拍は重篤な不整脈であり、心臓のポンプ機能が著しく低下している危険な状態です。このような状況で運動を始めると、心停止などの生命にかかわる重篤な事態を招くリスクが極めて高いため、積極的な運動は絶対禁忌です。正しくは:心室頻拍がない、または安定した心電図状態である。選びやすい理由:不整脈の中でも洞性頻脈などと比較して危険性が高いことは認識されやすいですが、他の不整脈との相対的なリスク評価で迷う可能性があります。混同注意:他の頻脈性不整脈、特に洞性頻脈や心房細動などとの重症度の違い。
- 2. 成人において安静時脈拍が140回/分は著しい頻脈であり、心臓に過度な負担がかかっている状態を示します。この状態で運動を開始すると、さらに心拍数が上昇し、心臓への負担が限界を超え、危険な状態に陥る可能性があります。原因の精査と安定化が必要です。正しくは:安静時脈拍が正常範囲内(例えば60〜100回/分)である。選びやすい理由:運動中は心拍数が上昇するため、脈拍が高いこと自体を運動と結びつけて考えてしまうかもしれませんが、これは「安静時」の異常な高値である点が重要です。混同注意:運動目標心拍数や、運動中の生理的な心拍数上昇。安静時心拍数と運動時心拍数の基準値を混同する。
- 3. 体温が38.6℃という発熱状態は、体力の消耗が激しく、全身倦怠感を伴うだけでなく、感染症などの基礎疾患が原因となっている可能性があります。この状態で運動を強行すると、病状の悪化や合併症を引き起こすリスクが高いため、運動は避けるべきです。正しくは:体温が平熱(通常37.5℃以下が目安ですが、患者の基準平熱による)である。選びやすい理由:微熱程度なら大丈夫、と自己判断してしまうケースや、運動による一時的な体温上昇と混同する可能性があります。混同注意:運動による一時的な体温上昇と、病的な発熱状態。また、発熱時の運動中止基準。
- 4. 収縮期血圧60mmHgは重度の低血圧であり、循環不全やショック状態を示唆します。全身への血流が十分に供給されていない非常に危険な状態であり、運動を行うと脳や心臓などの重要臓器への血流がさらに低下し、生命にかかわる重篤な事態に陥る可能性が高いです。運動は絶対禁忌です。正しくは:収縮期血圧が適切な範囲内(例えば90〜140mmHg程度)である。選びやすい理由:高血圧の危険性は広く知られていますが、低血圧が非常に危険な状態であることの認識が薄い場合に誤って選択してしまう可能性があります。混同注意:正常血圧や高血圧の基準。低血圧の重症度の認識が不十分な場合。
- 5. 正解。一般的に、経皮的酸素飽和度(SpO2)94%は軽度の酸素低下状態です。多くの運動療法ガイドラインでは、SpO2が90%を下回る場合や、運動中に大きく低下する場合を運動中止基準とすることが多いです。他の選択肢に挙げられているような心室頻拍、著しい頻脈、発熱、重度の低血圧といった生命に関わる重大な異常と比較すると、94%は絶対的な運動禁忌ではありません。個々の患者の病態や基礎疾患にもよりますが、慎重なモニタリング下であれば、積極的な全身持久力トレーニングを開始できる可能性が最も高い状態です。
国試ポイント
運動療法の適応と禁忌に関する基本的な知識が問われています。特に、各バイタルサインの異常値がどの程度の危険性を示すかを正確に理解し、生命に関わる絶対的禁忌状態と、注意が必要だが運動可能な状態を区別できる能力が求められます。
混同注意
運動療法における「絶対的禁忌」と「相対的禁忌」の区別、および各バイタルサインの正常値・異常値が示す臨床的意義の重症度評価。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず各選択肢のバイタルサインが「安静時の異常」であり、それが運動によってどのように悪化しうるかを検討します。そして、それぞれの状態が「運動絶対禁忌」「運動相対的禁忌」「運動可(要観察)」のいずれに該当するかを明確に判断できるかがポイントになります。
関連知識
運動療法ガイドライン(例:心臓リハビリテーションガイドライン、呼吸器リハビリテーションガイドライン)における運動開始基準と中止基準。各バイタルサイン(心拍数、血圧、体温、SpO2など)の生理的・病的変動と、それが運動に与える影響。