呼吸障害に対する理学療法として、口すぼめ呼吸が有効なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
口すぼめ呼吸は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者に見られる気道虚脱を抑制し、呼気時間を延長することで肺の過膨張を軽減し、効率的なガス交換を促進する効果があります。これにより、呼吸困難感の緩和が期待できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者は、気道虚脱により呼気時に空気が肺に閉じ込められやすい(air trapping)。口すぼめ呼吸は、呼気時に気道内圧を陽圧に保つことで気道虚脱を防ぎ、呼出時間を延長させ、効率的な換気を促進し、呼吸困難感を軽減するため有効である。
- 2. 肺線維症は拘束性換気障害であり、肺の伸展性が低下することで吸気量が制限されることが特徴である。口すぼめ呼吸は呼気延長を目的とするため、拘束性換気障害である肺線維症の呼吸困難の直接的な改善には繋がりにくい。正しくは:肺線維症では、肺の伸展性低下が主な原因であるため、呼吸補助筋の活動を減らすためのリラクゼーションや、呼吸パターンを改善する訓練がより適切かもしれない。選びやすい理由:呼吸困難という共通症状があるため、広く呼吸リハビリテーションとして有効であると誤解しやすい。混同注意:閉塞性換気障害と拘束性換気障害の病態生理の違い。
- 3. 間質性肺炎も肺線維症と同様に拘束性換気障害の一種であり、肺の伸展性低下が主病態である。口すぼめ呼吸は呼気をスムーズにするものであり、吸気障害が主な間質性肺炎の呼吸困難には直接的な効果は期待しにくい。正しくは:間質性肺炎では、肺のコンプライアンス低下が呼吸困難の原因であるため、酸素療法や薬物療法が中心となる。選びやすい理由:呼吸器疾患全般の症状緩和策と誤解しやすい。混同注意:閉塞性換気障害と拘束性換気障害のメカニズム。
- 4. 筋萎縮性側索硬化症は神経筋疾患であり、呼吸筋の筋力低下により換気能力が低下する。口すぼめ呼吸は呼吸筋力低下自体を改善するものではなく、進行性の疾患であるため、口すぼめ呼吸よりも呼吸補助具や非侵襲的陽圧換気(NPPV)などの補助がより重要となる。正しくは:ALSでは、呼吸筋力低下による低換気が問題となるため、咳嗽補助やNPPVの導入が主な介入となる。選びやすい理由:呼吸機能が障害される疾患であるため、何らかの呼吸法が有効と思われがち。混同注意:換気障害の種類(閉塞性、拘束性)と、呼吸筋力低下による換気障害の区別。
- 5. Duchenne型筋ジストロフィーも神経筋疾患であり、進行性の呼吸筋力低下により換気障害が起こる。口すぼめ呼吸は一時的な呼吸困難の軽減には役立つ可能性はあるものの、根本的な解決にはならず、長期的な呼吸管理(換気補助など)が必須となる。正しくは:Duchenne型筋ジストロフィーでは、呼吸筋力低下とそれに伴う低換気や喀痰喀出困難が問題となるため、呼吸補助や咳嗽補助が中心となる。選びやすい理由:小児期に発症し呼吸筋の脆弱性があるため、呼吸法を試みたくなる。混同注意:神経筋疾患における呼吸障害の病態と、それに対する適切な介入。
国試ポイント
口すぼめ呼吸の適応疾患、特に閉塞性換気障害における効果とメカニズムを理解しているかが問われている。拘束性換気障害や神経筋疾患における呼吸障害との違いを明確に認識している必要がある。
混同注意
拘束性換気障害(肺線維症、間質性肺炎)に対する呼吸法と、閉塞性換気障害(COPD)に対する呼吸法。また、呼吸筋力低下による換気障害(ALS、Duchenne型筋ジストロフィー)への対応。
次に同じ論点が出たら
この問題で理解が不十分だった場合、まずは閉塞性換気障害と拘束性換気障害の病態生理、そしてそれぞれに有効な呼吸法のメカニズムを再確認する。次に、神経筋疾患における呼吸障害の病態と、それに対する理学療法の選択肢についても学習を深める必要がある。
関連知識
閉塞性換気障害と拘束性換気障害の定義と鑑別、それぞれの疾患に対する理学療法の原則、呼吸筋機能不全に対する介入方法、呼吸リハビリテーションの各種手技の適応と効果。