運動学習について正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
運動学習における転移とは、ある運動課題の学習が別の運動課題の習得に影響を及ぼす現象を指します。課題間の構成要素や要求される運動スキルに類似性があるほど、以前の学習経験が新しい課題の学習にポジティブな影響(正の転移)を与えやすくなります。これは、共通の運動スキーマや認知的な方略が適用できるためです。
選択肢ごとの解説
- 1. 動機付けは運動学習に重要ですが、高すぎても不安や緊張につながり、最適なパフォーマンスを妨げることがあります。ヤーキーズ・ドッドソンの法則が示すように、パフォーマンスは覚醒レベル(動機付けも含む)が中程度であるときに最も高くなる傾向があります。正しくは:動機付けは運動学習に不可欠ですが、過度に高すぎると逆にパフォーマンスを低下させる可能性があります。選びやすい理由:一般的に「やる気があるほど結果が出る」と考えるため、直感的に正しいと感じやすいです。混同注意:動機付けが学習初期や練習継続に与えるポジティブな影響と、高すぎる動機付けが本番のパフォーマンスに与えるネガティブな影響(過度な緊張など)を混同しやすいです。
- 2. ヤーキーズ・ドッドソンの法則によれば、覚醒レベルとパフォーマンスの関係は逆U字型曲線を描きます。つまり、覚醒レベルが低すぎても高すぎてもパフォーマンスは低下し、最適な中程度の覚醒レベルで最も高いパフォーマンスが発揮されます。正しくは:覚醒レベルと運動パフォーマンスの関係は逆U字型であり、中程度の覚醒レベルが最も高いパフォーマンスをもたらします。選びやすい理由:スポーツの試合前など「気合を入れる」ことの重要性から、覚醒レベルが高いほど良いと誤解しやすいです。混同注意:「集中力が高まる」ことと「覚醒レベルが常に最高であることが良い」ということを混同しやすいです。集中力を高める適切な覚醒レベルと、過覚醒によるパフォーマンス低下を区別する必要があります。
- 3. 運動学習におけるパフォーマンス向上は、一般にS字曲線を描くと言われています。初期は急激に向上し、その後高原状態(プラトー)を経て、再び向上するという非直線的な経過をたどることが多いです。正しくは:運動学習におけるパフォーマンスの向上は非直線的であり、S字曲線を描いたり、一時的に停滞する高原状態を経たりすることが一般的です。選びやすい理由:学習は段階的に進むというイメージから、連続的に向上するという誤解が生じやすいです。混同注意:理想的な学習曲線と、実際の学習過程で起こる停滞(プラトー)や後退を混同しやすいです。
- 4. 正解。運動学習における転移(transfer)とは、ある学習が別の学習に影響を与える現象を指します。課題間の類似性が高いほど、学習内容や運動パターンが共有されやすく、転移の効果(特に正の転移)が大きくなることが知られています。正しくは:正答のため修正不要です。
- 5. パフォーマンスの向上が一時的に見られなくなる状態をプラトー(高原状態)と呼びます。これは学習の停止ではなく、一時的な停滞であり、その後再びパフォーマンスが向上する可能性があります。学習は内部的な変化であり、必ずしもパフォーマンスとしてすぐに現れるとは限りません。正しくは:運動パフォーマンスの改善が一時的に停滞しても、それは運動学習の終了を意味するものではなく、高原状態(プラトー)であることが多いです。選びやすい理由:結果が出なければ「学習が止まった」と考えがちですが、学習は内部で進行している場合があります。混同注意:パフォーマンスの停滞(プラトー)と、学習自体の終了や飽和状態を混同しやすいです。
国試ポイント
運動学習の基本的な原則や概念(動機付け、覚醒レベル、学習曲線、転移、プラトーなど)について、その定義とパフォーマンスへの影響を正確に理解しているかが問われます。特に、直感とは異なる科学的根拠に基づいた知識が重要です。
混同注意
運動学習は「努力すればするほど」「やる気があればあるほど」といった直線的・単純な関係ではないことを理解していないと、1, 2, 3, 5のような選択肢に惑わされやすいです。特にパフォーマンスと学習の違い(パフォーマンスは観察可能な行動、学習は内部的な変化)は重要です。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出たら、運動学習の各概念(例:練習方法、フィードバックの種類とタイミング、記憶の定着メカニズムなど)について、その効果や特徴を正確に説明できるかを確認すると良いでしょう。特に、長期的な学習効果と短期的なパフォーマンス向上を区別することが重要です。
関連知識
ヤーキーズ・ドッドソンの法則、運動学習のS字曲線(学習曲線)、転移の種類(正の転移、負の転移、ゼロ転移)、プラトー(高原状態)、動機付けの種類(内発的動機付け、外発的動機付け)、運動学習理論。