32歳の男性。右上肢の筋力低下を訴えて受診し、理学療法が開始された。筋力を評価するために、右上肢を前方挙上して壁を押させた時の様子を図に示す。その結果、右肩甲骨の内側縁全体が胸郭から離れる現象が認められた。筋力低下が最も疑われる筋はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
図に示すように、右上肢を前方挙上して壁を押させた際に右肩甲骨の内側縁全体が胸郭から離れる現象は翼状肩甲であり、これは肩甲骨を胸郭に固定する主要な筋である前鋸筋の筋力低下によって引き起こされる特徴的な所見である。
選択肢ごとの解説
- 1. 棘下筋は肩関節の外旋に作用する筋であり、その筋力低下は翼状肩甲の直接的な原因とはならない。正しくは:棘下筋の機能低下は肩関節の外旋可動域制限や筋力低下をきたす。選びやすい理由:肩関節周囲の筋という点で選択肢として挙がりやすい。混同注意:回旋腱板の他の筋の機能や作用。
- 2. 肩甲下筋は肩関節の内旋に作用する筋であり、その筋力低下は翼状肩甲の直接的な原因とはならない。正しくは:肩甲下筋の機能低下は肩関節の内旋可動域制限や筋力低下をきたす。選びやすい理由:肩関節周囲の筋という点で選択肢として挙がりやすい。混同注意:回旋腱板の他の筋の機能や作用。
- 3. 広背筋は肩関節の内転、内旋、伸展に作用する筋であり、その筋力低下は翼状肩甲の直接的な原因とはならない。正しくは:広背筋の機能低下は、特に腕を振る動作や懸垂などの際に筋力低下として現れる。選びやすい理由:背部の大きな筋であるため、肩甲骨の安定性に関与していると誤解される可能性がある。混同注意:肩甲骨の安定化に関わる他の背筋群。
- 4. 正解。前鋸筋は肩甲骨を胸郭に引き寄せ、安定化させる作用(肩甲骨の外転・上方回旋)を持つ。この筋が麻痺すると、肩甲骨が胸郭から浮き上がり、翼状肩甲を呈する。特に腕を前方へ挙上したり壁を押したりする際に顕著となるため、本症例の所見と合致する。選びやすい理由:画像所見が特徴的であるため、正しい知識があれば選択しやすい。混同注意:菱形筋麻痺による翼状肩甲。
- 5. 大円筋は肩関節の内転、内旋、伸展に作用する筋であり、その筋力低下は翼状肩甲の直接的な原因とはならない。正しくは:大円筋の機能低下は、特に肩関節の伸展や内転動作に影響を与える。選びやすい理由:肩関節周囲の筋であるため、選択肢として挙がりやすい。混同注意:広背筋と同様の作用を持つため混同しやすい。
国試ポイント
翼状肩甲の原因となる筋とその支配神経を理解しているか。
混同注意
翼状肩甲と菱形筋麻痺による肩甲骨内側縁の突出(これは内側縁の上部が突出する)との鑑別。前鋸筋麻痺では肩甲骨内側縁全体が突出する。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、翼状肩甲の所見(特に肩甲骨の内側縁全体が浮き上がる点)と前方挙上・壁押しという動作から、原因筋として前鋸筋を選択できるようにする。
関連知識
前鋸筋は長胸神経(C5-C7)に支配され、肩甲骨の外転・上方回旋に作用する。この神経が麻痺すると翼状肩甲が生じる。