65歳の男性。間質性肺炎。労作時呼吸困難、咳を主訴に来院した。3年前から歩行時の呼吸困難が増悪した。1か月前から咳、労作時の呼吸困難の悪化を認め入院となった。入院時、心電図は洞調律。血液検査ではCRP 3.1 mg/dL(基準値:0.3 mg/dL未満)、KL-6 790 U/mL(基準値500 U/mL未満)であった。 理学療法評価では、mMRC息切れスケールはグレード3。筋力はMMT上下肢4、6分間歩行テストは200 mであった。胸部CT(別冊No. 5)を別に示す。 全身持久力トレーニングを行う場合、トレーニングを中止すべき状態はどれか。2つ選べ。 トレーニング前の所見は、血圧120/65 mmHg、心拍数85/分、呼吸数19回/分、SpO2 96 %、修正Borg Scale 3であった。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・4番
解説
選択肢1では、血圧の過度な低下(収縮期血圧20mmHg以上低下または80mmHg以下)とめまいがあり、循環不全のリスクが高いためトレーニングを中止すべきです。選択肢4では、心拍数の過度な上昇(安静時心拍数+30拍/分以上)、SpO2の低下、動悸があり、心臓への負担が大きいため中止すべきです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。収縮期血圧が安静時より35mmHg低下し、かつ85mmHgと低値であり、めまいを伴っている。低血圧とそれに伴う症状はトレーニング中止の明確な基準となるため正しい。選びやすい理由:血圧の著しい低下と、めまいという自覚症状が明確な中止サインであるため、判断しやすい。混同注意:一時的な血圧の変動で、めまいを伴わない軽度の低下。
- 2. 血圧、心拍数、SpO2、修正Borg Scaleの値は、運動中止基準に達するほどではない。呼吸数の上昇と筋疲労はあるが、他のバイタルサインや自覚症状から直ちに中止すべき緊急性は低い。正しくは:血圧、心拍数、SpO2、修正Borg Scaleの値が、運動中止基準(例:著しい血圧低下、著しい心拍数上昇、SpO2 90%以下など)に該当しないため、トレーニングを継続可能と判断される。選びやすい理由:呼吸数や修正Borg Scaleの数値が上昇しており、筋疲労を伴っているため、過負荷と感じ中止すべきか迷う可能性がある。混同注意:重度の呼吸困難や胸痛、あるいはSpO2がより顕著に低下した場合。
- 3. 血圧、心拍数、呼吸数、SpO2、修正Borg Scaleのいずれも異常値を示しておらず、特筆すべき自覚症状もないため、トレーニングを中止する必要はない。正しくは:血圧、心拍数、呼吸数、SpO2、修正Borg Scaleのいずれも運動中止基準に達していないため、トレーニングを継続可能と判断される。選びやすい理由:特に中止すべき要素がないため、正解肢ではないと判断しやすい。混同注意:判断が難しいバイタルサインの変化がないため、誤答と判断されやすい。
- 4. 正解。心拍数が安静時より25拍/分増加し、SpO2も92%とやや低下傾向にある。特に動悸という自覚症状があり、心臓への負担が大きい状態を示唆するためトレーニングを中止すべきである。選びやすい理由:心拍数、SpO2の変化は中程度だが、動悸という自覚症状が強い中止サインであるため、判断しやすい。混同注意:一時的な心拍数増加で、自覚症状を伴わない場合。
- 5. 収縮期血圧は168mmHgと上昇しているが、許容範囲内である場合が多い。心拍数、呼吸数、SpO2、修正Borg Scaleも直ちに中止を要するほどの異常値ではなく、筋疲労は運動の目的達成過程で起こり得るため、これだけで中止するとは限らない。正しくは:収縮期血圧は運動により上昇するが、通常200mmHgを超える場合に中止を考慮する。その他の所見も運動中止基準に該当しないため、トレーニングを継続可能と判断される。選びやすい理由:収縮期血圧の上昇、SpO2が低下傾向であること、筋疲労という自覚症状があるため、中止すべきと迷う可能性がある。混同注意:収縮期血圧が200mmHgを超過する、または拡張期血圧が110mmHgを超過するような明らかな高血圧危機、あるいはSpO2が90%を下回る顕著な低下の場合。
国試ポイント
全身持久力トレーニングにおける運動中止基準を覚える。特に血圧、心拍数、SpO2の変化、自覚症状(めまい、動悸、胸痛など)に注目する。
混同注意
運動中止基準と、運動続行を考慮してもよい程度の症状(軽度の筋疲労など)を混同しやすい。明確な中止基準は症状の悪化や生命に関わるリスクがあるため、区別が重要である。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、血圧の急激な変動(特に低下)、心拍数の異常な上昇、SpO2の低下(特に90%以下)、強い自覚症状(めまい、動悸、胸痛、息切れなど)の有無を複合的に見て判断する。
関連知識
運動療法実施中のモニター項目、ボルグスケール、運動負荷試験のプロトコル、各疾患の運動禁忌・中止基準(心疾患、呼吸器疾患など)。