人工呼吸器のモニターに示される気道内圧と肺気量位を図に示す。理学療法前後で図のような変化が見られた場合、呼吸器系に生じた変化として考えられるのはどれか。ただし、対象者の自発呼吸はなく、人工呼吸器による陽圧変化のみにより肺気量位が変化しているものとする。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
下図では、理学療法介入後(破線)において、理学療法介入前(実線)と比較して、同じ気道内圧の変化に対してより大きな肺気量が得られている、もしくは同じ肺気量を送るためにより低い気道内圧で済むようになっていることが示されています。これは圧-量曲線の傾きが急になったことを意味し、肺コンプライアンス(肺の膨らみやすさ)の増加を示唆しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 肺活量は最大吸気位から最大呼気位までの肺気量であり、このグラフは一回換気量(気道内圧の変化で動く肺気量)と圧の関係を示しています。肺活量の変化を直接的に示すものではありません。正しくは:グラフは主にコンプライアンスや抵抗の変化を示唆しており、肺活量とは異なる指標です。選びやすい理由:呼吸機能の改善を示す選択肢として一見正しいように見えますが、この図から直接的に判断できるものではありません。混同注意:肺活量と一回換気量や機能的残気量などの他の肺気量分画との混同。
- 2. 残気量は最大呼気後に肺内に残る空気の量であり、このグラフではその変化を直接評価することはできません。グラフは吸気時の圧と量の関係を示しています。正しくは:残気量の変化は、この圧-量曲線からは読み取れません。選びやすい理由:残気量の減少は呼吸機能の改善と関連することが多いため、正しい変化のように感じるかもしれませんが、このグラフの直接的な所見ではありません。混同注意:残気量と機能的残気量、またはその他の肺気量分画の混同。
- 3. 気道抵抗が増加すると、同じ肺気量を得るためにより高い気道内圧が必要になります。つまり、グラフの傾きが緩やかになるか、ループの幅が広がる(ヒステリシスが増大する)傾向が見られます。この図では、むしろ同じ圧でより多くの量が入る、または同じ量を入れるのに必要な圧が低下しているため、気道抵抗は減少している可能性が示唆されます。正しくは:気道抵抗が増加すれば、曲線は右下方向(同じ量でより高圧)にシフトするか、ループの幅が広がる形になります。選びやすい理由:呼吸器疾患で気道抵抗が増加することはよくあるため、選択肢として考慮しやすいですが、図の変化とは逆方向です。混同注意:肺コンプライアンスの低下と気道抵抗の増加による圧-量曲線の変化パターンとの混同。
- 4. 胸郭柔軟性が低下すると、肺を膨らませるためにより大きな力(高い気道内圧)が必要になります。これは肺コンプライアンスの低下と同様に、圧-量曲線の傾きが緩やかになる(同じ圧で入る量が減る、または同じ量を入れるのに必要な圧が高くなる)として現れます。この図の変化とは逆です。正しくは:胸郭柔軟性が低下すれば、曲線は右下方向(同じ量でより高圧)にシフトする形になります。選びやすい理由:胸郭の異常も呼吸機能に影響を与えるため、可能性の一つとして考えやすいですが、図の変化とは逆方向です。混同注意:肺コンプライアンスの低下と胸郭柔軟性の低下が圧-量曲線に及ぼす影響の混同。どちらも曲線が右下方向へシフトする。
- 5. 正解。肺コンプライアンスとは、単位圧変化あたりの肺気量変化のことで、圧-量曲線の傾きで評価されます。グラフの変化を見ると、同じ気道内圧の変化でより多くの肺気量が得られるようになっている、あるいは同じ肺気量を得るために必要な気道内圧が低下していることが分かります。これは曲線の傾きが急になっていることを意味し、肺コンプライアンスの増加を示しています。正しくは:正解のため修正不要。
国試ポイント
人工呼吸器管理下の患者における圧-量曲線の変化から、呼吸器系に生じた変化(特に肺コンプライアンスや気道抵抗)を正確に読み取る能力が問われます。特に、コンプライアンスの増減が曲線にどう影響するかを理解しているかが重要です。
混同注意
肺コンプライアンスの増減と気道抵抗の増減が、圧-量曲線にそれぞれどのような影響を与えるかの混同。また、胸郭コンプライアンスと肺コンプライアンスの区別。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、まず『縦軸と横軸は何を示しているか』『曲線がどちらにシフトしているか、または傾きがどう変化しているか』を正確に把握し、それがコンプライアンス(傾き)と抵抗(ループの幅)のどちらに影響するかを判断します。さらに、その変化が『改善』を意味するのか『悪化』を意味するのかを理解しているかを確認します。
関連知識
肺コンプライアンスは、肺組織の弾性や表面張力、胸郭の柔軟性によって変化します。気道抵抗は気道の狭窄や分泌物の貯留によって変化します。陽圧換気下では、これら物理的特性の変化が圧-量曲線に直接的に反映されます。理学療法介入によって、肺や胸郭の柔軟性が改善したり、気道クリアランスが向上したりすることで、これらの特性が変化する可能性があります。