神経伝導検査でF波の潜時延長と出現率減少がみられる疾患はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
ギラン・バレー症候群は急性発症の多発神経炎であり、末梢神経の脱髄が主な病態です。F波は、運動神経の近位部や神経根病変を評価する上で有用な検査です。脱髄病変により神経伝導速度が低下すると、F波の伝導路が長いため、潜時が延長します。また、伝導ブロックが起きやすくなるため、F波の出現率が低下することも特徴的な所見です。これらのF波の異常は、ギラン・バレー症候群の診断や重症度評価に寄与します。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。ギラン・バレー症候群は、末梢神経の脱髄が主要な病態であり、F波は末梢神経を逆行性に伝導し、脊髄前角細胞を経て再度順行性に伝導する反射波です。脱髄があると神経伝導速度が低下するため、伝導距離の長いF波は潜時が延長します。また、伝導ブロックが生じやすくなるため、出現率も低下します。これらの所見は、神経根病変や近位部脱髄を示唆する重要な指標となります。
- 2. パーキンソン病は中枢神経系の疾患であり、F波は末梢神経の機能評価に用いられるため、通常、F波の潜時延長や出現率低下は見られません。F波に異常をきたすのは末梢神経障害です。正しくは:F波の潜時延長や出現率低下は認められない。選びやすい理由:神経系の疾患であるため、神経伝導検査で異常が出るのではと考えるかもしれない。混同注意:中枢神経疾患と末梢神経疾患の鑑別、またF波が評価する範囲(主に近位末梢神経)についての理解が曖昧だと混同しやすい。
- 3. 重症筋無力症は神経筋接合部の疾患であり、F波自体は末梢神経の伝導機能を評価します。神経筋接合部の機能異常は、F波の異常としては直接現れません。反復誘発試験などでは特徴的な所見が見られますが、F波の潜時や出現率には影響しません。正しくは:F波の潜時延長や出現率低下は認められない。選びやすい理由:神経筋疾患であるため、末梢神経の異常と関連付けて考えてしまうかもしれない。混同注意:神経筋接合部疾患と末梢神経疾患の違い、F波がどの部位を評価しているかの理解が不足していると誤解しやすい。
- 4. 進行性核上性麻痺は中枢神経系の変性疾患であり、F波は末梢神経系の機能評価です。F波に異常をきたすことはありません。正しくは:F波の潜時延長や出現率低下は認められない。選びやすい理由:神経系の疾患であるため、神経伝導検査で異常が出るのではと考えるかもしれない。混同注意:中枢神経疾患と末梢神経疾患の鑑別ができていないと混同しやすい。
- 5. 多系統萎縮症も中枢神経系の変性疾患であり、末梢神経の機能に直接影響を与えるものではありません。したがって、F波の潜時延長や出現率低下は通常見られません。正しくは:F波の潜時延長や出現率低下は認められない。選びやすい理由:神経系の疾患であるため、神経伝導検査で異常が出るのではと考えるかもしれない。混同注意:中枢神経疾患と末梢神経疾患の鑑別ができていないと混同しやすい。
国試ポイント
神経伝導検査のF波が、末梢神経の特に近位部や神経根の病変を反映する指標であることを理解しているか、そして代表的な脱髄性末梢神経疾患であるギラン・バレー症候群でどのような異常が見られるかを問う問題です。中枢神経疾患や神経筋接合部疾患との鑑別が重要となります。
混同注意
F波とH波、またはM波などの他の神経伝導検査の指標との違い。また、中枢神経疾患、末梢神経疾患、神経筋接合部疾患それぞれの病態と、神経伝導検査で評価できる範囲について混乱しやすい。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、F波が『末梢神経の近位部』の評価に用いられることを確認し、選択肢の疾患が末梢神経疾患であるか、特に脱髄が関与するかを検討します。また、H波との違い(H波は感覚線維も含む反射、F波は運動線維の逆行性伝導)も押さえておく必要があります。
関連知識
神経伝導検査(運動神経伝導速度、感覚神経伝導速度、F波、H波、反復誘発試験)、針筋電図。各疾患の病態生理(ギラン・バレー症候群の脱髄、パーキンソン病の黒質変性、重症筋無力症の自己抗体による神経筋接合部障害など)。