脳卒中後のPusher現象について誤っているのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
Pusher現象では、患者は身体が麻痺側へ傾いているにもかかわらず、それが正しい垂直であると誤認識します。さらに、非麻痺側の手足で地面を強く押し、自身を麻痺側へとさらに傾けようとします。したがって、身体軸は非麻痺側ではなく麻痺側へ傾斜します。選択肢3は「非麻痺側に傾斜する」と述べているため、これが誤りです。
選択肢ごとの解説
- 1. Pusher現象は、一般的に右半球損傷(特に視床、島皮質、頭頂葉後部)の患者によく見られる特徴です。これは空間認知や身体図式に関わる脳領域の機能不全と関連しています。選びやすい理由:脳卒中後のPusher現象の典型的な特徴であり、正しい記述のため、誤りを探す問題では選択肢から外れるべきです。混同注意:Pusher現象の病態生理学的側面や関連する脳部位に関する知識が不確かな場合、これが誤っているように感じられるかもしれません。
- 2. Pusher現象の核心的な症状の一つは、患者が自身の身体の正中や垂直方向を誤って認識することです。彼らは実際には傾いている状態を『まっすぐ』だと感じ、垂直を保とうとすると非麻痺側へ強く押し出す行動を取ります。選びやすい理由:垂直判断の障害はPusher現象の主要な特徴の一つであり、正しい記述です。そのため、誤りを探す問題では選択肢から外れるべきです。混同注意:他のバランス障害との混同や、単なる筋力低下と誤解する可能性があります。
- 3. 正解。Pusher現象の患者は、自身が非麻痺側へ傾いていることを認識できず、さらにその方向へ積極的に押し出すため、身体軸は麻痺している側(患側)へ傾斜します。この選択肢は『非麻痺側へ傾斜する』と述べており、これが誤りです。正しくは:身体軸が麻痺側へ傾斜します。選びやすい理由:『非麻痺側への押し出し』という行動自体は正しいが、結果として身体軸が傾く方向を誤解しやすい。患者は非麻痺側の手足で積極的に床や壁を押し、その結果として麻痺側へ大きく傾斜します。混同注意:『非麻痺側で押す』という行動と、『身体が傾く方向』を混同しやすいです。押している方向と、体が傾く方向は逆になります。
- 4. Pusher現象は、重力に対する姿勢制御の障害であるため、座位、立位、移乗時など、様々な姿勢や動作で観察されます。座位に限定されるものではありません。選びやすい理由:Pusher現象の症状は、患者の日常生活動作全体に影響を及ぼすため、座位だけでなく立位でも見られるという記述は正しいです。誤りを探す問題では選択肢から外れるべきです。混同注意:特定の姿勢でのみ発生する他のバランス障害と混同する可能性があります。
- 5. Pusher現象の患者は、体幹を正中位に保とうとすると、非麻痺側(健全側)の上下肢(特に股関節)で非麻痺側へ強く地面を押し付け、その結果として非麻痺側の股関節が外転・外旋し、麻痺側への傾斜をさらに強めようとします。これは典型的な反応です。選びやすい理由:Pusher現象の患者が体幹を正中位に戻す際の代表的な代償行動であり、正しい記述です。誤りを探す問題では選択肢から外れるべきです。混同注意:この具体的な動作パターンを知らない場合、なぜ股関節が外旋するのか理解しづらく、誤りと感じるかもしれません。
国試ポイント
脳卒中後のPusher現象の病態、特徴的な姿勢、および運動パターンを正確に理解しているかを問う問題です。特に、患者が非麻痺側で押す行動と、その結果として体が傾く方向の因果関係を混同しないことが重要です。
混同注意
Pusher現象の患者が『非麻痺側で押す』という行動自体は正しいですが、その結果として身体が『麻痺側へ傾く』という現象を混同しやすいです。また、単なるバランス障害や、他の半側空間無視などの症状との区別も重要です。
次に同じ論点が出たら
Pusher現象の病態生理、評価方法、および具体的なリハビリテーション介入について、より深く問われる可能性があります。特に、患者の誤った垂直認識を修正するための具体的なセラピーアプローチ(例:視覚フィードバック、非麻痺側の支持基底面拡大の抑制)に関する知識が重要になります。
関連知識
Pusher現象は、半側空間無視や身体失認としばしば合併し、ADLやリハビリテーションの進行を著しく妨げます。視床、島皮質、頭頂葉後部の損傷との関連が指摘されています。評価にはSCP (Scale for Contraversive Pushing) などが用いられます。