遂行機能障害の診断に用いる検査はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
WCST(Wisconsin Card Sorting Test)は、課題ルールの変更に対応する思考の柔軟性や固執傾向を評価する検査であり、遂行機能障害の診断に非常に有効です。具体的には、計画立案、問題解決、行動の調整といった遂行機能の中心的な要素を測定します。他の選択肢は、知能、視覚構成能力、記憶、注意・作動記憶などを評価するものであり、遂行機能に特化した検査ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。WCSTは、ルールの切り替えや柔軟な思考を評価する検査であり、遂行機能の主要な要素である計画、問題解決、行動の調整などを測定します。特に思考の柔軟性(セットシフト能力)や固執傾向を検出するのに有用です。
- 2. WAIS-IIIは成人用の包括的な知能検査であり、言語性IQ、動作性IQ、全般性IQを測定しますが、遂行機能に特化した検査ではありません。個別の下位検査が遂行機能の一端を評価することもありますが、WCSTほど直接的ではありません。正しくは:WAIS-IIIは一般的な知能(言語理解、知覚統合、作動記憶、処理速度)を評価する検査です。選びやすい理由:高次脳機能障害のスクリーニングや全体像の把握によく用いられるため、つい選択肢として検討してしまうかもしれません。混同注意:広範な高次脳機能の一部として遂行機能も含まれるという認識と、遂行機能に特化した検査の区別が曖昧になっている場合があります。
- 3. 図形模写検査は、視覚認知、視覚構成、視覚運動協調性などを評価する検査です。遂行機能とは直接関連しますが、その中心的な評価項目ではありません。例えば、構成失行や半側空間無視などの診断に用いられます。正しくは:図形模写検査は、主に視覚構成能力や視空間認知を評価する検査です。選びやすい理由:高次脳機能障害のスクリーニングとして広く用いられるため、遂行機能障害にも関連があるように感じてしまうかもしれません。混同注意:構成失行や視空間認知の問題と、遂行機能の問題を混同することがあります。
- 4. Reyの複雑図形検査は、視覚性記憶、視空間構成能力、および構成行為を評価する検査です。特に視覚性短期記憶や遅延再生記憶の評価に有用ですが、遂行機能の全体像や特定の側面(計画性、柔軟性など)を直接的に評価するものではありません。正しくは:Reyの複雑図形検査は、視覚性記憶と視空間構成能力を評価する検査です。選びやすい理由:高次脳機能全般の評価でよく使われるため、遂行機能も含まれると誤解しやすいです。混同注意:視覚性記憶障害や構成失行の評価と、遂行機能障害の評価を混同することがあります。
- 5. PASATは、主に聴覚性注意、情報処理速度、作動記憶(ワーキングメモリ)を評価する検査です。遂行機能の一部分である注意や作動記憶と関連しますが、遂行機能全体の計画性、問題解決、柔軟性などを直接評価する検査ではありません。正しくは:PASATは、聴覚性注意、情報処理速度、および作動記憶を評価する検査です。選びやすい理由:作動記憶は遂行機能の一部を担うため、関連があると感じて選びそうになります。混同注意:作動記憶や注意機能の評価と、より広範な遂行機能の評価を混同することがあります。
国試ポイント
理学療法士国家試験では、高次脳機能障害の評価に関して、各検査が主に何を評価するのかという核心的な知識が問われます。特に、遂行機能、記憶、注意、失語、失行、失認などの障害に対して、どの検査が最も適切であるかを正確に理解していることが重要です。
混同注意
WAIS-IIIのような一般的な知能検査や、Reyの複雑図形検査のような記憶・構成能力を評価する検査は、高次脳機能障害全般の評価で用いられるため、遂行機能障害の評価にも適していると誤解されやすいです。しかし、WCSTは「ルールの切り替え」という遂行機能の中核要素を直接的に評価する点で異なります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、高次脳機能障害の各症状(失語、失行、失認、記憶障害、注意障害、遂行機能障害など)と、それらを評価する代表的な検査の組み合わせを問う問題が予想されます。各検査が「主に」どの機能を評価するのかを明確に区別できるように学習しておく必要があります。特に、高次脳機能のスクリーニング検査と、特定の機能に特化した詳細な検査の違いも理解しておくと良いでしょう。
関連知識
遂行機能とは、目標達成のために行動を計画し、組織化し、実行し、効果を評価し、必要に応じて修正する一連の認知プロセスを指します。前頭葉、特に前頭前野の機能と密接に関連しています。主な要素として、計画性、問題解決能力、注意の制御、行動の抑制、思考の柔軟性、モニタリングなどがあります。その他の遂行機能検査には、FAB(Frontal Assessment Battery)、BADS(Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome)などがあります。