ケトアシドーシスによってKussmaul呼吸が起こる理由で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
ケトアシドーシスは代謝性アシドーシスの一種であり、体内のケトン体増加により血中のH+濃度が上昇し、pHが低下します。この状態に対し、呼吸器系は代償反応として、深くて速いクスマウル呼吸を行います。これにより肺胞換気が亢進し、血中のCO2が効率的に体外へ排出されます。CO2は体内で炭酸(H2CO3)となり、H+を供給するため、CO2の排出はH+濃度の低下を促し、pHを上昇させることでアシドーシスを改善しようとします。したがって、クスマウル呼吸の主な目的はCO2の排出促進によるpHの是正です。
選択肢ごとの解説
- 1. クスマウル呼吸は確かに換気量を増やしますが、その主たる目的はアシドーシスに対する代償であり、単に酸素を多く取り込むことではありません。酸素供給が主な問題であれば、他の呼吸パターンや治療が優先されます。正しくは:アシドーシスによって低下したpHを是正するため、二酸化炭素の排出量を増やすため。選びやすい理由:呼吸の基本的な機能が酸素摂取であるため、呼吸回数や深さが増加すれば酸素摂取も増えると連想しやすい。混同注意:呼吸の基本的な役割と、アシドーシスに対する代償としての特殊な呼吸パターンの目的を混同しやすい。
- 2. ケトアシドーシスは水素イオン(H+)が増加し、体液が酸性になる状態です。クスマウル呼吸は、この増加したH+を間接的に減らすための代償反応であり、「水素イオン濃度が低下したため」ではありません。正しくは:体内の水素イオン濃度が上昇したことに対し、これを是正するため。選びやすい理由:「減少」という言葉が、アシドーシスを改善するという意味合いに捉えられなくもないが、根本原因とは逆の記述。混同注意:アシドーシス(H+増加)とアルカローシス(H+減少)の状態を混同している。
- 3. 正解。ケトアシドーシスは代謝性アシドーシスであり、血中の水素イオン濃度が増加してpHが低下します。クスマウル呼吸は、深くて速い呼吸により肺胞換気を亢進させ、血中のCO2をより多く排出します。CO2は体内で炭酸(H2CO3)となり、H+を生成するため、CO2を排出することでpHを上昇させ、アシドーシスを代償しようとします。
- 4. ケトアシドーシスは代謝性アシドーシスであり、過剰な酸が重炭酸イオン(HCO3-)を消費するため、血中のHCO3-濃度は「低下」します。クスマウル呼吸は、この低下したHCO3-によって起こるアシドーシスを代償するためのものです。正しくは:血中の重炭酸イオン(HCO3-)濃度が低下したため。選びやすい理由:重炭酸イオンが緩衝作用を持つため、その変化が呼吸に影響すると考える点は正しいが、上昇ではなく低下である点が誤り。混同注意:代謝性アシドーシスにおけるHCO3-の変動方向を誤解している。
- 5. ケトアシドーシスは体内のpHが「低下」するアシドーシスであり、クスマウル呼吸はその低下したpHを基準値に戻す(上昇させる)ための代償反応です。pHが上昇した状態(アルカローシス)を是正する目的ではありません。正しくは:pHが基準値よりも低くなったのを是正するため。選びやすい理由:pHを基準値に戻すという目的自体は正しいが、その「上昇」という方向性が誤り。混同注意:アシドーシス(pH低下)とアルカローシス(pH上昇)を混同している。
国試ポイント
ケトアシドーシスを含む代謝性アシドーシスにおける呼吸性代償のメカニズムと、それに伴う特徴的な呼吸パターン(クスマウル呼吸)の生理学的意義を理解しているか問う問題です。酸塩基平衡と呼吸・腎臓による調節機能の基礎知識が重要となります。
混同注意
アシドーシスとアルカローシスの状態、それぞれにおけるpH、H+、CO2、HCO3-の変動方向、また呼吸性代償と腎性代償の役割を混同しやすいです。特に、クスマウル呼吸が何のために起こるのか、その直接的な生理学的目的を理解しているかが鍵となります。
次に同じ論点が出たら
次にこの論点が出題された場合、他のアシドーシス/アルカローシス状態での呼吸や腎臓の代償反応、または特定の呼吸パターンの原因(例: チェーンストークス呼吸、ビオー呼吸)について問われる可能性があります。各病態における酸塩基平衡の変化と代償メカニズムを正確に理解しているかを確認しましょう。
関連知識
酸塩基平衡の基礎、代謝性アシドーシス・アルカローシス、呼吸性アシドーシス・アルカローシスそれぞれの原因と病態、呼吸性代償と腎性代償の詳細、各種呼吸パターンとその臨床的意義。