30歳の男性。スキーで転倒して受傷した。エックス線写真(別冊No. 1)を別に示す。肩脱臼整復後に肩関節内転・内旋位で固定されたが、上腕の外側上部に感覚鈍麻を訴えた。合併症の神経麻痺はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
肩関節脱臼の合併症として最も頻繁に見られる神経損傷は腋窩神経麻痺です。腋窩神経は、上腕骨頭の直下を走行しており、脱臼時に骨頭によって圧迫や牽引を受けやすいためです。特に前方脱臼で高頻度です。症状としては、三角筋の麻痺による肩関節外転の障害や、上腕外側上部(三角筋部)の皮膚感覚鈍麻が特徴的です。本症例では、上腕外側上部の感覚鈍麻が明記されており、これは腋窩神経の感覚支配領域と一致します。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。肩関節脱臼では、腋窩神経が最も損傷を受けやすい神経です。特に前方脱臼では、上腕骨頭が腋窩神経を圧迫・牽引することで損傷が生じます。腋窩神経は、三角筋と小円筋を支配し、上腕外側上部の皮膚感覚(三角筋部)も担当しているため、この領域の感覚鈍麻は腋窩神経麻痺を示唆します。
- 2. 肩甲上神経は棘上筋と棘下筋を支配し、肩関節の後上方から後方を走行します。損傷すると肩の挙上や外旋に影響が出ますが、上腕外側上部の感覚障害は通常みられません。正しくは:上腕外側上部の感覚鈍麻は腋窩神経の支配領域であるため、肩甲上神経麻痺ではこの症状は起こりにくい。選びやすい理由:肩関節周辺の神経であるため、関連があるように感じやすい。混同注意:他の肩関節周辺の神経(腋窩神経など)の支配領域や症状と混同しやすい。
- 3. 肩甲下神経は肩甲下筋と大円筋の一部を支配します。肩甲骨の前方、小円筋と大円筋の間を走行し、肩関節の内旋に関与しますが、皮膚感覚の支配はありません。正しくは:肩甲下神経は運動神経であり、上腕外側上部の感覚を支配しない。選びやすい理由:肩関節周辺の筋肉を支配するため、関連があるように感じやすい。混同注意:腋窩神経や他の腕神経叢の枝の感覚支配領域と混同しやすい。
- 4. 尺骨神経は上腕の内側を通り、前腕の尺側と手の尺側に分布します。損傷すると手の尺側の感覚障害や、指の運動障害(特に小指・環指)が生じますが、上腕外側上部の感覚とは関連がありません。正しくは:尺骨神経の感覚支配は前腕尺側と手の尺側であり、上腕外側上部ではない。選びやすい理由:上肢の主要な神経の一つであるため、脱臼の合併症として想起されやすい。混同注意:正中神経や橈骨神経など、他の上肢の神経の支配領域や症状と混同しやすい。
- 5. 正中神経は上腕の中央を通り、前腕の撓側と手の撓側に分布します。損傷すると手の撓側の感覚障害や、母指の運動障害が生じますが、上腕外側上部の感覚とは関連がありません。正しくは:正中神経の感覚支配は前腕撓側と手の撓側であり、上腕外側上部ではない。選びやすい理由:上肢の主要な神経の一つであり、脱臼の合併症として想起されやすい。混同注意:尺骨神経や橈骨神経など、他の上肢の神経の支配領域や症状と混同しやすい。
国試ポイント
肩関節脱臼の合併症として最も頻繁に発生する神経麻痺とその症状(特に感覚障害の部位)を正確に理解しているかを問う問題です。主要な神経の解剖学的走行と支配領域(運動・感覚)を把握していることが重要です。
混同注意
肩関節周辺には多くの神経が走行しており、それぞれの神経の支配筋や感覚領域を正確に区別できないと誤答につながります。特に、上腕骨折や脱臼で損傷しやすい他の神経(橈骨神経など)との鑑別が重要です。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、肩関節脱臼の種類(前方・後方)と、それによって損傷されやすい神経や血管、筋肉を問われる可能性があります。また、他の上肢の骨折(上腕骨近位端骨折、上腕骨幹部骨折など)における合併神経麻痺(橈骨神経麻痺など)についても知識が問われる可能性があります。
関連知識
腋窩神経は腕神経叢の後神経束から分岐し、三角筋と小円筋を支配し、上腕外側上部の皮膚感覚を司る。肩関節前方脱臼の発生頻度が高いこと、および脱臼時の上腕骨頭の位置と腋窩神経の走行の関係を理解することが重要です。