前骨間神経麻痺と後骨間神経麻痺に共通するのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
前骨間神経は正中神経の純粋な運動枝であり、長母指屈筋、深指屈筋(示指・中指)、方形回内筋を支配します。感覚枝は持たないため、前骨間神経麻痺では感覚障害は生じません。一方、後骨間神経は橈骨神経深枝の終末枝であり、総指伸筋、示指伸筋、小指伸筋、尺側手根伸筋、長母指外転筋、短母指伸筋、長母指伸筋を支配する純粋な運動神経です。こちらも感覚枝を持たないため、後骨間神経麻痺でも感覚障害は生じません。したがって、両麻痺に共通する特徴は「感覚は正常である(知覚は影響を受けない)」ことです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。前骨間神経は純粋な運動神経であり、感覚枝を持たないため、この神経が麻痺しても感覚障害は生じません。後骨間神経も同様に純粋な運動神経であり、知覚障害は発生しません。したがって、両者に共通して感覚が正常であるという特徴が挙げられます。
- 2. 前骨間神経と後骨間神経はどちらも橈骨神経の主要な枝から分岐します。前骨間神経は正中神経の枝であり、後骨間神経は橈骨神経の深枝です。尺骨神経の分枝ではありません。正しくは:前骨間神経は正中神経の、後骨間神経は橈骨神経の分枝である。選びやすい理由:上肢の神経解剖は複雑で、どの神経がどの神経の枝であるかを混同しやすい。混同注意:正中神経、尺骨神経、橈骨神経のそれぞれの走行と分枝。
- 3. Tinel徴候は神経の圧迫部位や損傷部位で陽性となりますが、肘部管でのTinel徴候陽性は尺骨神経が肘部管で圧迫されている場合に特異的です。前骨間神経麻痺は正中神経の障害、後骨間神経麻痺は橈骨神経の障害であり、肘部管の尺骨神経とは直接関係がありません。正しくは:肘部管のTinel徴候が陽性であるのは尺骨神経麻痺の特徴である。選びやすい理由:Tinel徴候自体が神経障害の一般的な指標であるため、どの神経障害にも当てはまるように感じてしまう。混同注意:各神経の解剖学的走行と圧迫部位、それに対応するTinel徴候の出現部位。
- 4. 中指、環指、小指の伸展は主に尺側手根伸筋や総指伸筋によって行われ、これらは橈骨神経(後骨間神経)の支配を受けます。後骨間神経麻痺ではこの動作が困難になりますが、前骨間神経麻痺ではこれらの伸展動作に直接的な影響はありません。前骨間神経は深指屈筋の一部(示指と中指)や長母指屈筋を支配します。正しくは:中指、環指、小指の伸展動作が困難であるのは後骨間神経麻痺の特徴である。選びやすい理由:両神経が手部の運動機能に関わるため、どの指のどの動作に影響があるかを混同しやすい。混同注意:前骨間神経と後骨間神経それぞれの支配筋とそれに対応する運動障害。
- 5. 母指と示指のつまみ動作(ピンチ動作)は主に長母指屈筋と深指屈筋(示指)の機能によって行われ、これらは前骨間神経の支配を受けます。したがって、前骨間神経麻痺ではこの動作が困難になりますが、後骨間神経麻痺ではつまみ動作に直接的な影響はありません。後骨間神経は指の伸展筋を支配します。正しくは:母指と示指のつまみ動作が困難であるのは前骨間神経麻痺の特徴である。選びやすい理由:上肢の主要な神経であるため、どちらの麻痺でもつまみ動作に影響が出そうだと考えてしまう。混同注意:前骨間神経と後骨間神経のそれぞれの支配筋とそれに対応する運動障害。
国試ポイント
純粋な運動神経である前骨間神経と後骨間神経の特性、特に感覚障害の有無を問う問題。各神経の支配筋とそれによる機能障害、他の神経麻痺(尺骨神経麻痺など)との鑑別が重要となる。
混同注意
上肢の主要3神経(正中神経、尺骨神経、橈骨神経)の各分枝が支配する筋とそれに伴う運動障害、そして感覚支配領域。特に前骨間神経と後骨間神経が純粋運動神経である点を見落としやすい。Tinel徴候の陽性部位と関連する神経の誤認。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず各神経が『純粋な運動神経か、混合神経か』を判断する。純粋な運動神経であれば感覚障害はないと即座に判断できる。次に、各神経の支配筋とそれにより障害される運動機能を正確に把握しているかを確認する。
関連知識
・前骨間神経麻痺:正中神経の枝、純粋運動神経。長母指屈筋、深指屈筋(示指・中指)、方形回内筋を支配。母指と示指のOKサイン不能(ピンチ力の低下)。感覚障害なし。 ・後骨間神経麻痺:橈骨神経深枝の終末、純粋運動神経。指伸筋群、母指外転・伸筋群を支配。下垂指(指の伸展不能)を呈する。感覚障害なし。 ・尺骨神経麻痺:尺骨神経は混合神経。知覚(手掌尺側、小指、環指尺側半分)、運動(小指球筋、虫様筋、骨間筋、母指内転筋)。肘部管症候群やGuyon管症候群で出現。Tinel徴候は肘部管や手関節部で陽性。