58歳の男性。脳卒中による左片麻痺。Brunnstrom法ステージ上肢Ⅳ、手指Ⅲ、下肢Ⅳ。麻痺側の位置覚検査を行う際の患者への指示で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
位置覚は、関節の位置や運動の終末肢位を認識する感覚です。脳卒中後の片麻痺患者において麻痺側の位置覚を評価する際には、検者が麻痺側の肢(この場合は左腕)を他動的に動かし、患者に非麻痺側の肢(右腕)でその動きや最終的な位置を模倣させる方法が一般的かつ効果的です。この方法により、患者は視覚情報に頼ることなく、自身の身体感覚のみで麻痺側の状態を再現するため、正確な評価が可能となります。
選択肢ごとの解説
- 1. この指示は、静止した姿勢を保つものであり、関節運動を通して位置覚を評価する際の適切な指示ではありません。運動が伴わないため、関節の動的な位置変化に対する感覚を捉えられません。正しくは:「私が動かした左腕の姿勢を、目で確認せずに感じ取ってください」など、位置変化の認識を促す指示にするべきです。選びやすい理由:腕の位置に関する指示なので、位置覚と関連するように見えるかもしれませんが、これは静的な姿勢保持の指示であり、位置変化の認識を問うものではありません。混同注意:姿勢保持の指示と位置覚の検査指示を混同する可能性があります。
- 2. 正解。位置覚検査において、検者が麻痺側(左腕)を他動的に動かし、患者が非麻痺側(右腕)でその動きを模倣させる方法は、視覚情報を用いずに運動の軌跡や終末肢位の感覚を評価する上で非常に適切です。これは特に、言語理解や表現が困難な患者、あるいは感覚が微妙な場合に有効な手法です。
- 3. この指示は、動いた回数を問うものであり、主に運動覚(動いていることの感知)を評価するもので、関節の最終的な位置や運動の方向を認識する位置覚の評価とは異なります。正しくは:「左足の母趾をどちらの方向に動かしたか、あるいは最終的にどの位置にあるか答えてください」など、位置や方向の認識を問う指示にするべきです。選びやすい理由:指を動かすこと自体は感覚検査でよく行うため、正しい指示だと錯覚しやすいです。しかし、問われているのは「回数」であり「位置」ではありません。混同注意:運動覚(kinesthesia)と位置覚(proprioception)の評価方法を混同する可能性があります。
- 4. 麻痺側(左脚)の位置覚検査を行う場合、検者は麻痺側の肢を動かすべきです。この指示では検者が非麻痺側(右膝)を動かしており、麻痺側の正確な位置覚を評価する主目的から外れます。患者が麻痺側で非麻痺側の動きを再現することは運動機能の評価に近くなります。正しくは:「私が左膝を曲げますので、右脚を同じように曲げてください」のように、検者が麻痺側を動かし、非麻痺側で模倣させる形にするべきです。選びやすい理由:「真似をしてください」という指示形式自体は感覚検査で用いられますが、検者が動かす側と患者が真似する側の組み合わせが、麻痺側の位置覚評価としては不適切である点を見落としやすいです。混同注意:検者が動かす側(被検側)と患者が模倣する側(健側)の役割を混同する可能性があります。
- 5. この指示は、関節運動の方向を問うもので、運動覚の一部を評価するものですが、関節の最終的な位置を把握する位置覚とは異なります。また「上」「下」という表現が指の運動方向として常に適切とは限りません。正しくは:「左手の母指を動かしますので、最終的にどの位置にあるか答えてください」など、終末肢位の認識を問う指示にするべきです。選びやすい理由:運動の方向を答えるのは感覚検査でよくあるため、これも正しい指示だと誤認しやすいです。混同注意:運動の方向覚と関節の位置覚の違いを混同する可能性があります。
国試ポイント
理学療法士国家試験において、感覚検査の手法、特に麻痺患者に対する位置覚検査の適切な指示方法と、健側を用いた評価の応用について理解しているかが問われます。運動覚、位置覚、識別覚など、各感覚の定義と評価方法の違いを正確に把握しておく必要があります。
混同注意
位置覚(proprioception)と運動覚(kinesthesia)の概念、そしてそれぞれの検査方法を混同しやすいです。また、麻痺側と非麻痺側の役割分担や、検者と患者それぞれの動きの指示についても混乱が生じやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず「どの感覚を評価しているか(位置覚、運動覚など)」と「どちらの側(麻痺側か非麻痺側か)」を明確にします。次に、指示が「評価したい感覚」と「評価したい側」に合致しているか、そして患者が「視覚に頼らず感覚のみで認識できる」ような指示になっているかを判断します。
関連知識
深部感覚(位置覚、運動覚、振動覚、深部痛覚、圧覚)と表在感覚(触覚、痛覚、温度覚)の分類、そして各感覚の検査手順を理解しておく必要があります。また、皮質性感覚(二点識別覚、立体覚、皮膚書字覚など)の評価についても関連知識として重要です。患者の認知機能やコミュニケーション能力に応じた指示方法の調整も、臨床において重要になります。