イネイブラー〈enabler〉である家族と患者との共依存が問題となる疾患はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
アルコール依存症では、患者の飲酒問題に対して、家族が後始末をする、飲酒の言い訳をする、問題行動を隠蔽するといった形で、無意識のうちに飲酒を継続させてしまう「イネイブラー」としての役割を担うことがあります。このような家族の行動は、患者のアルコール依存を強化し、患者と家族の双方に不健全な精神状態をもたらす「共依存」という問題に発展しやすいです。この共依存が、治療への抵抗や依存症の慢性化の大きな要因となるため、家族への介入も重要な治療の一部となります。
選択肢ごとの解説
- 1. うつ病患者と家族の間で共依存が生じる可能性はありますが、アルコール依存症におけるイネイブラーを伴う共依存ほど典型的な問題とはされません。うつ病の家族は患者を支えようとしますが、イネイブラーとしての行動が疾患を悪化させる構造は一般的ではありません。正しくは:うつ病の家族関係では、イネイブラーとしての共依存よりも、患者の無気力や意欲低下に対する過剰な世話や干渉、あるいは逆に放置といった問題が起こりやすいです。選びやすい理由:家族の精神的負担が大きいという点で、共依存という言葉から連想されるかもしれません。混同注意:精神疾患全般で家族のサポートが重要であることと、イネイブラーと共依存が特異的に問題となる疾患を混同するかもしれません。
- 2. 統合失調症では、家族が患者の症状(幻覚や妄想など)に振り回されたり、過干渉になったりすることはありますが、イネイブラーとして患者の薬物やアルコール使用を助長するような共依存の関係は通常問題視されません。正しくは:統合失調症の家族関係では、高い感情表出 (EE: Expressed Emotion) などが再発に関連することが指摘されており、共依存とは異なる概念が問題となります。選びやすい理由:患者の生活全般への介助が必要となることが多いため、家族の負担が大きいという点で共依存を連想する可能性はあります。混同注意:慢性的な精神疾患における家族の負担や関わり方の問題と、イネイブラーによる共依存を混同する可能性があります。
- 3. 正解。アルコール依存症は、患者がアルコールの摂取を続けることで問題が生じているにもかかわらず、家族がその問題行動を間接的に許容・助長してしまう「イネイブラー」としての役割を担い、患者と家族の間で「共依存」の関係に陥ることが非常に多い疾患です。家族は患者を守ろうとする善意から、飲酒の後始末をしたり、飲酒の言い訳を立てたりすることで、結果的に患者が治療に向き合う機会を奪い、依存症を維持させてしまうことがあります。
- 4. アルツハイマー型認知症では、患者の認知機能低下により家族が介護負担を負うことはありますが、イネイブラーと共依存の関係は問題となりません。家族は患者の日常生活を支える介護者であり、依存症のように患者の不適切な行動を助長する役割ではありません。正しくは:アルツハイマー型認知症の家族関係では、認知機能低下に伴う介護負担や行動心理症状(BPSD)への対応、または介護者の燃え尽きなどが問題となります。選びやすい理由:家族が患者の生活全般を支える役割を担う点で、共依存という言葉を連想するかもしれませんが、その性質は異なります。混同注意:介護負担の大きい疾患における家族の関わり方全般と、依存症におけるイネイブラーを伴う共依存を混同する可能性があります。
- 5. 自閉スペクトラム症は発達障害の一種であり、対人関係やコミュニケーション、限定された興味関心などに特徴が見られます。家族は患者の発達を支援する役割を担いますが、アルコール依存症のようなイネイブラーを伴う共依存の関係は問題となりません。正しくは:自閉スペクトラム症の家族関係では、患者の特性への理解と適切な支援、社会参加の促進などが重要となります。選びやすい理由:患者が社会生活において特別なサポートを必要とするため、家族がその生活に深く関与するという点で、共依存という言葉を連想する可能性はあります。混同注意:発達障害における家族の長期的なサポートと、依存症におけるイネイブラーによる共依存を混同する可能性があります。
国試ポイント
この問題は、精神疾患における特定の家族関係の概念、特に「イネイブラー」と「共依存」がどの疾患で典型的に問題となるかを理解しているかを問うものです。これらの概念が、依存症、特にアルコール依存症と強く結びついていることを知っているかがポイントです。他の精神疾患における家族の役割や問題とは区別して考える必要があります。
混同注意
「共依存」という言葉から、家族の負担が大きい精神疾患全般(例:重度の精神疾患、慢性疾患)を連想し、特定の依存症との関連性を見落とす可能性があります。また、イネイブラーという言葉が聞き慣れない場合、単純に「家族のサポート」といった広義の意味で捉えてしまうと誤答につながります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、イネイブラーや共依存が「依存症」に特有の家族関係の問題であるという視点から、薬物依存症やギャンブル依存症などの他の依存症の選択肢も考慮できるよう準備しておくべきです。また、各精神疾患における家族の役割や問題点(例:統合失調症におけるEE、認知症における介護負担、うつ病におけるスティグマ)を正確に区別して理解しているかを確認する必要があります。
関連知識
依存症の治療における家族療法の重要性、特に家族がイネイブラーから健全なサポートの役割へと移行するための教育プログラム(家族教室など)。精神科リハビリテーションにおける家族支援の概念。薬物依存症やギャンブル依存症など、他の依存症でも同様にイネイブラーと共依存の問題が生じること。