脊髄損傷の機能残存レベルと可能な動作の組合せで正しいのはどれか。ただし、機能残存レベルより下位は完全麻痺とする。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
C7レベルでは、上腕三頭筋が機能し、肘関節の伸展が可能となります。これにより、プッシュアップ動作や上肢を伸ばす動作が容易になるため、車椅子上での更衣動作を自立して行える可能性が大幅に高まります。他の選択肢は、示された機能残存レベルでは独立して行うことが困難な動作です。
選択肢ごとの解説
- 1. 万能カフを用いた食事は、肩や肘屈曲の筋(三角筋・上腕二頭筋)が働くC5レベル以下で可能になります。C4レベルでは上肢の運動がほとんどできず困難です。正しくは:C4レベルでは、電動車椅子のジョイスティック操作やコミュニケーションは可能ですが、腕を用いた食事は介助が必要です。選びやすい理由:呼吸筋の機能がある程度保たれるため、他の基本的な動作も可能なのではないかと誤解しやすいです。混同注意:C4とC5の機能の違い。C5で肘関節の屈曲が可能になることで、上肢の活動範囲が大きく広がります。
- 2. C5レベルでは三角筋や上腕二頭筋の機能が残存し、肘の屈曲や肩の挙上は可能ですが、体幹の安定性や手関節・手指の機能が乏しいため、ベッドから車椅子への前方移乗を自力で行うことは非常に困難です。介助または特殊な移乗装置が必要です。正しくは:C5レベルでは、食事動作の一部やプッシュアップでの褥瘡予防などは可能ですが、前方移乗は介助が必要です。選びやすい理由:肘の屈曲ができるため、上肢を使った動作全般が可能であると錯覚しやすいです。混同注意:C5とC6の機能の違い。C6で手関節の背屈が可能になることで、移乗動作の自立度が向上します。
- 3. C6レベルでは手指の屈筋が麻痺しているため、橈側-手掌握り(母指と手掌による随意的な把握)はできません。手関節背屈によるテノデーシス作用を利用した把持にとどまります。正しくは:C6レベルでは、手関節の背屈は可能ですが、手指の随意的な把握はできません。テノデーシス作用を利用した把持が可能となります。選びやすい理由:手関節の背屈が可能になることで、手を使った動作全般が可能になると誤解しやすいです。特に「テノデーシス作用」と混同しやすいです。混同注意:随意的な手指の把握(C7以降)と、テノデーシス作用(C6で利用可能)を混同しやすいです。
- 4. 正解。C7レベルでは、上腕三頭筋が機能し肘の伸展が可能になります。これにより、体を持ち上げたり、腕を操作したりする能力が向上し、上肢のリーチやプッシュアップが可能になるため、車椅子上での更衣動作を自力で行える可能性が高まります。正しくは:C7レベルでは、上腕三頭筋の機能により肘の伸展が可能となり、プッシュアップやリーチ動作が向上するため、自力での更衣が可能になります。選びやすい理由:他の選択肢が明らかに誤りであるため、残った選択肢として選びやすいです。また、C7での肘伸展が更衣動作に大きく寄与することを理解していれば正答できます。混同注意:C6とC7の機能の違い、特に肘伸展の有無が日常生活動作に与える影響。
- 5. C8レベルの完全麻痺では体幹・下肢が麻痺しており、長下肢装具を用いた実用的な歩行は困難です。長下肢装具と松葉杖による歩行が可能になるのは、胸髄下部〜腰髄レベルの損傷です。
国試ポイント
脊髄損傷の機能残存レベルと、それによって可能となる日常生活動作(ADL)の組み合わせを問う問題は頻出です。特に、主要な筋肉の残存レベルがADLにどのように影響するかを正確に理解しているかが試されます。C5(肘屈曲)、C6(手関節背屈・テノデーシス)、C7(肘伸展)、T1(手指内在筋)など、各レベルで重要なキーマッスルとその機能がADLにどう繋がるかがポイントとなります。
混同注意
各レベルにおけるキーマッスルとその機能、そしてそれが直接的に可能にするADLを混同しやすいです。特にC6のテノデーシス作用と随意的な手指屈曲(C7/C8)は間違いやすい点です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、各機能残存レベルにおける主要なキーマッスルと、その残存によって可能になる具体的なADLを正確に結びつけることができるかを評価します。特に、特定のADLに複数の筋肉や関節運動が関与する場合、その中で最も重要となるキーマッスルがどのレベルで機能するかを問われる可能性があります。
関連知識
C4: 横隔膜、C5: 上腕二頭筋・三角筋、C6: 橈側手根伸筋・円回内筋、C7: 上腕三頭筋・総指伸筋、C8: 深指屈筋・長母指屈筋、T1: 手内在筋。これらの残存機能が、食事、更衣、移乗、排泄などのADLにどう影響するかを理解することが重要です。