17歳の女性。発熱と頸部リンパ節腫脹を主訴に来院した。血液検査では末梢血のリンパ球が著しく増加していた。末梢血のMay-Giemsa染色標本(別冊No. 9)を別に示す。考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第64回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
この症例は17歳女性で発熱と頸部リンパ節腫脹があり、末梢血リンパ球の著しい増加を認めています。添付の画像は、伝染性単核球症に特徴的な異型リンパ球(反応性リンパ球、ダウニー細胞とも呼ばれる)を示しています。これらの所見は伝染性単核球症の典型的な臨床像および血液学的特徴と完全に一致します。他の選択肢は、年齢、臨床症状、または血液所見(特に異型リンパ球の形態)において合致しません。
選択肢ごとの解説
- 1. ホジキンリンパ腫はリンパ節腫脹を伴いますが、末梢血の著しいリンパ球増加は典型的ではありません。特に異型リンパ球の出現は特徴的ではありません。正しくは:ホジキンリンパ腫の診断には、リンパ節生検でReed-Sternberg細胞の同定が必要です。選びやすい理由:リンパ節腫脹があるため、リンパ系疾患であるリンパ腫を想起しやすいですが、末梢血所見と年齢を考慮すると異なります。混同注意:他のリンパ系悪性腫瘍と混同することがあります。
- 2. 有毛細胞白血病は特異的な形態のリンパ球(有毛細胞)が末梢血に出現しますが、中年以降の男性に多く、若年女性の発熱・頸部リンパ節腫脹の症状とは合致しません。また、末梢血リンパ球の著しい増加があっても、本症例の画像で見られる異型リンパ球の形態とは異なります。正しくは:有毛細胞白血病では末梢血や骨髄に「有毛細胞」と呼ばれる特徴的な細胞が認められます。選びやすい理由:リンパ球の形態異常を伴う疾患のため、選択肢として考慮するかもしれませんが、年齢層と細胞形態が異なります。混同注意:他の慢性リンパ性白血病と混同することがあります。
- 3. 血球貪食症候群は発熱やリンパ節腫脹を伴いますが、末梢血でリンパ球が著しく増加することは稀で、むしろ汎血球減少が見られることが多いです。また、画像で見られる異型リンパ球は血球貪食症候群の診断指標ではありません。正しくは:血球貪食症候群の診断には、高フェリチン血症、血球減少、肝脾腫、リンパ節腫脹、骨髄での血球貪食像などが指標となります。選びやすい理由:発熱とリンパ節腫脹という共通の症状があるため、選択肢として考えやすいかもしれません。混同注意:敗血症や他の重症感染症と混同することがあります。
- 4. 正解。伝染性単核球症は、EBウイルス感染によって引き起こされる疾患で、若年者に多く、発熱、頸部リンパ節腫脹、咽頭炎が主な症状です。血液検査では、末梢血リンパ球の著しい増加と、特徴的な異型リンパ球(Downey細胞など)の出現が認められます。画像に示す形態は、伝染性単核球症に特徴的な異型リンパ球と一致します。選びやすい理由:症状と血液所見が典型的であるため、正答として選択しやすいです。混同注意:急性ウイルス感染症や他のリンパ球増多症と区別する必要があります。
- 5. 多発性骨髄腫は形質細胞の悪性増殖疾患であり、主に高齢者に発症します。末梢血のリンパ球が著しく増加することはなく、また本症例の画像で示されるような異型リンパ球も特徴ではありません。通常、貧血、高カルシウム血症、腎機能障害、骨病変などを伴います。正しくは:多発性骨髄腫では、骨髄穿刺で形質細胞の増加が認められ、末梢血にはM蛋白が出現します。選びやすい理由:稀に形質細胞性白血病など、末梢血に形質細胞が出現することもあるため、リンパ系疾患の選択肢として迷うかもしれませんが、一般的な症状や年齢層が異なります。混同注意:その他の形質細胞疾患(MGUSなど)と混同することがあります。
国試ポイント
臨床検査技師国家試験では、主要な感染症や血液疾患について、患者の年齢、主訴、および末梢血塗抹標本の所見を統合して診断に至る能力が問われます。特に、伝染性単核球症における異型リンパ球の特徴的な形態と、それが現れる病態を理解していることが重要です。
混同注意
他のウイルス感染症(サイトメガロウイルス感染症など)、急性リンパ性白血病、急性ウイルス性肝炎、トキソプラズマ症などでもリンパ球増多や異型リンパ球が見られることがありますが、年齢、症状の組み合わせ、異型リンパ球の形態的特徴から伝染性単核球症を鑑別できる必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず患者の年齢と主訴(発熱、リンパ節腫脹など)を確認し、次に末梢血塗抹標本におけるリンパ球の増加と形態的特徴(異型リンパ球の有無、その特徴)に注目します。これらの情報を統合し、最も合致する疾患を選択します。
関連知識
伝染性単核球症の主要な原因はEBウイルス感染です。EBウイルスは主に唾液を介して感染し、思春期以降に初感染すると発症しやすいです。特徴的な症状として、発熱、咽頭炎、リンパ節腫脹の三徴が見られます。合併症として、脾腫や肝機能障害があり、脾破裂のリスクがあるため激しい運動は避けるべきです。診断には、異型リンパ球の検出、血中抗EBV抗体価測定(異好性抗体検査、VCA-IgMなど)が用いられます。