膀胱炎患者の中間尿を、5%ヒツジ血液寒天培地(左)とBTB乳糖寒天培地(右)の分画培地で35℃、24時間好気培養した写真(別冊No. 11)を別に示す。推定される菌種はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第64回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
下に示す画像は、膀胱炎患者の中間尿を培養した結果です。左側の5%ヒツジ血液寒天培地では、菌が培地表面を波紋状に広がっていく「遊走(swarming)」と呼ばれる現象が顕著にみられます。これはProteus属菌に特徴的な所見です。右側のBTB乳糖寒天培地では、コロニーは無色または淡青色を呈しており、これは乳糖非分解性であることを示します。選択肢の中で、血液寒天培地で遊走性を示し、BTB乳糖寒天培地で乳糖非分解性である菌種はProteus mirabilisです。したがって、推定される菌種はProteus mirabilisとなります。
選択肢ごとの解説
- 1. Enterobacter cloacaeはBTB乳糖寒天培地で乳糖分解性を示し、コロニーは黄色になります。また、血液寒天培地ではβ溶血を示すこともありますが、画像のような特徴的な遊走は示しません。正しくは:BTB乳糖寒天培地で黄色コロニーを形成し、遊走性がない。血液寒天培地では非溶血性またはβ溶血性を示す。選びやすい理由:グラム陰性桿菌であるため、尿路感染症の原因菌として考えられるため。混同注意:他の腸内細菌科細菌の培地上の特徴と混同しやすい。
- 2. Escherichia coliはBTB乳糖寒天培地で乳糖分解性を示し、コロニーは黄色になりますが、血液寒天培地で画像のような特徴的な遊走(swarming)は示しません。E. coliは通常、血液寒天培地では非溶血性または一部の菌株でβ溶血性を示します。正しくは:BTB乳糖寒天培地で黄色コロニーを形成し、遊走性がない。血液寒天培地では非溶血性またはβ溶血性を示す。選びやすい理由:膀胱炎の最も一般的な原因菌であるため、選択肢として魅力的。混同注意:膀胱炎の原因菌としての頻度と、培地上での特徴を混同しやすい。
- 3. Klebsiella pneumoniaeはBTB乳糖寒天培地で乳糖分解性を示し、黄色コロニーを形成しますが、画像のような血液寒天培地での特徴的な遊走(swarming)は示しません。また、血液寒天培地では通常非溶血性です。正しくは:BTB乳糖寒天培地で黄色コロニーを形成し、遊走性がない。血液寒天培地では非溶血性を示す。選びやすい理由:グラム陰性桿菌で、尿路感染症の原因菌として知られているため。混同注意:他の腸内細菌科細菌の培地上の特徴と混同しやすい。
- 4. 正解。画像所見として、血液寒天培地(左)で培地表面を広範囲に広がる遊走(swarming現象)が確認できます。また、BTB乳糖寒天培地(右)では乳糖非分解性のため、コロニーの色は変化せず、無色〜淡青色を呈しています。これらの特徴はProteus属菌、特にProteus mirabilisに典型的です。
- 5. Pseudomonas aeruginosaはBTB乳糖寒天培地で乳糖非分解性を示しますが、血液寒天培地で画像のような特徴的な遊走(swarming)は示しません。通常、血液寒天培地ではβ溶血性を示し、特徴的な色素(ピオシアニンなど)を産生することがあります。正しくは:BTB乳糖寒天培地で無色コロニーを形成し、遊走性がない。血液寒天培地ではβ溶血性を示し、特有の色素や匂いを産生することがある。選びやすい理由:尿路感染症の原因菌となりうるグラム陰性桿菌であるため。緑膿菌感染症の重症度から、選択肢として考慮する可能性も。混同注意:乳糖非分解性である点でProteus属菌と共通するが、遊走性や色素産生の違いで識別できる。
国試ポイント
本問題は、尿路感染症の主要な原因菌であるProteus mirabilisの培養における典型的な特徴(血液寒天培地での遊走現象とBTB乳糖寒天培地での乳糖非分解性)を問うものです。臨床検査技師として、主要な病原菌の培養性状を画像から正確に判読できる能力が求められます。
混同注意
他の腸内細菌科細菌(Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacaeなど)は乳糖分解性であり、BTB乳糖寒天培地で黄色コロニーを形成するため、鑑別が可能です。Pseudomonas aeruginosaも乳糖非分解性ですが、通常は遊走性を示さず、緑色の色素産生が見られることがあります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、まず血液寒天培地での遊走の有無を確認し、Proteus属菌を疑います。次に、BTB乳糖寒天培地での乳糖分解性を確認し、乳糖非分解性であればProteus属菌の可能性が高いと判断します。さらに鑑別が必要な場合は、ウレアーゼ活性などの生化学的性状や、必要に応じて同定キットや質量分析装置による同定を行います。
関連知識
Proteus mirabilisは尿素分解酵素(ウレアーゼ)を産生し、尿をアルカリ化することで結石形成を促進し、尿路結石の原因となることがあります。また、尿素分解能は尿素培地での確認や生化学的性状試験で重要です。遊走現象は、菌体表面のべん毛の動きによって培地上を広がる運動です。