呼吸不全を呈する筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉の肺機能検査で予想される結果はどれか。2つ選べ。ただし、他の呼吸器疾患の合併はないものとする。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3・5番
解説
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、呼吸筋の筋力低下により胸郭の動きが制限され、肺を十分に膨らませることができなくなるため、肺活量が減少します。また、呼吸筋の機能低下は肺胞換気不良を引き起こし、肺胞壁の虚脱や換気血流比不均等増大により肺拡散能(DLCO)が低下する可能性があります。
選択肢ごとの解説
- 1. ALSは呼吸筋力低下による拘束性換気障害を呈するため、気道狭窄を示す1秒率の低下は通常見られません。むしろ、肺のコンプライアンス低下により1秒率は相対的に正常〜上昇を示すことがあります。正しくは:1秒率正常または上昇選びやすい理由:一般的な呼吸器疾患のイメージから、呼吸不全では1秒率が低下するという先入観があるため。混同注意:閉塞性換気障害(例:COPD、気管支喘息)
- 2. ALSによる呼吸筋力低下は、肺を十分に膨らませる能力だけでなく、十分に吐き出す能力も低下させるため、気管支閉塞がない限り残気量が著しく減少することはありません。むしろ、進行するとわずかに増加することもあります。正しくは:残気量正常またはわずかに増加選びやすい理由:肺活量減少に伴い、残気量も全体的に減少すると錯覚しやすいため。混同注意:肺線維症などの一部の拘束性換気障害で肺が硬くなり、残気量が減少する場合があること。
- 3. 正解。ALSによる呼吸筋(横隔膜や肋間筋など)の筋力低下により、吸気能力が低下するため、肺を最大限に吸い込むことができなくなり、その結果として肺活量が減少します。選びやすい理由:呼吸筋力低下が直接的に肺の容積に影響を与えるため、直感的に理解しやすい。混同注意:全肺気量(TLC)も同様に減少する。
- 4. 機能的残気量は、通常の呼気後の肺内に残る空気量であり、横隔膜や呼吸筋の機能低下がある場合、むしろ増加するか正常範囲に留まることが多いです。著しい減少は考えにくいです。正しくは:機能的残気量正常またはわずかに増加選びやすい理由:肺活量減少と同様に、肺の容積全体が減少すると考えてしまうため。混同注意:肺のコンプライアンスが著しく低下する疾患(例:ARDS)
- 5. 正解。ALSによる呼吸筋力低下は、肺胞換気を低下させ、肺胞の虚脱や換気血流比不均等を招きやすくなります。これにより、肺胞と毛細血管間のガス交換効率が低下し、肺拡散能(DLCO)が低下することが予想されます。選びやすい理由:呼吸筋力低下が、肺自体への影響(ガス交換能)にも繋がるという病態生理学的理解が必要であるため。混同注意:純粋な拘束性換気障害ではDLCOが正常な場合もあるため、ALSの病態特異性を理解しておく必要がある。
国試ポイント
筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉による呼吸筋力低下が、肺活量の減少と肺拡散能〈DLCO〉の低下に繋がることを理解する。
混同注意
拘束性換気障害と閉塞性換気障害の判別。ALSは拘束性換気障害のパターンを示します。
次に同じ論点が出たら
神経筋疾患による呼吸不全の肺機能検査では、拘束性換気障害パターン(肺活量減少)と肺拡散能低下を念頭に置く。
関連知識
拘束性換気障害では、肺活量(VC)や全肺気量(TLC)が減少し、1秒率(FEV1/FVC)は正常またはむしろ上昇することが多い。閉塞性換気障害では、1秒率の低下、残気量の増加が見られる。ALSは進行性に呼吸筋力が低下する神経筋疾患であり、最終的に人工呼吸管理が必要となることが多い。