Aさん(65歳、女性)は、5年前に乳癌の左胸筋温存乳房切除術と左腋窩リンパ節郭清術を受けた。1年前に大腿骨転移のため日常生活動作〈ADL〉に一部介助が必要となり、訪問看護を利用し在宅で療養している。Aさんの左上腕内側の皮膚をつまむと健側より厚みがある。訪問看護師がAさんに指導する左上腕のケア方法で正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・3番
解説
リンパ浮腫のある皮膚は乾燥しやすく、わずかな傷から感染(蜂窩織炎)を起こしやすいため、皮膚の保護と清潔・保湿が重要です。選択肢2の「皮膚の露出は少なくする」は、日焼けや虫刺され、外傷からの保護を目的としており、感染予防に繋がります。選択肢3の「保湿クリームを塗布する」は、皮膚の乾燥を防ぎ、ひび割れを防ぐことで感染経路を遮断し、皮膚のバリア機能を維持する効果があります。
選択肢ごとの解説
- 1. リンパ浮腫がある場合、指圧や強いマッサージは症状を悪化させる可能性があるため不適切です。リンパドレナージは専門的な手技であり、素人が自己判断で行うべきではありません。正しくは:専門家によるリンパドレナージの指導を受ける、または圧迫療法を行う。選びやすい理由:マッサージがむくみに良いと一般的に考えられがちだが、リンパ浮腫のケアは専門的な知識が必要。混同注意:通常のむくみ解消とリンパ浮腫のケアを混同しやすい。
- 2. 正解。リンパ浮腫のある部位は、虫刺されや日焼け、外傷などから感染を起こしやすく、蜂窩織炎のリスクが高まります。そのため、皮膚を露出させずに保護することが重要です。正しくは:長袖などを着用し、皮膚を保護する。選びやすい理由:夏場などは露出を減らすことが困難に思えるが、感染予防が最優先される。混同注意:見た目の問題と捉えがちだが、感染リスクの回避が主目的。
- 3. 正解。リンパ浮腫のある皮膚は乾燥しやすく、ひび割れなどから細菌が侵入し、感染症を引き起こすリスクがあります。保湿によって皮膚のバリア機能を保つことが感染予防に繋がります。正しくは:皮膚の乾燥を防ぎ、清潔な状態を保つ。選びやすい理由:保湿は一般的なスキンケアだが、リンパ浮腫では感染予防の観点から特に重要。混同注意:単なる美容目的の保湿と混同しやすいが、これは医療的な予防策である。
- 4. リンパ浮腫のある皮膚は脆弱であり、ナイロン製タオルなどの刺激の強い素材で洗うと、皮膚に微細な傷がつき、そこから感染を引き起こす可能性があります。正しくは:柔らかい素材のタオルや手で優しく洗う。選びやすい理由:体をしっかり洗いたいという意識から選びがちだが、皮膚への刺激を避けるべき。混同注意:清潔にすることと、皮膚を傷つけないことの優先順位を誤りやすい。
- 5. アルカリ性の石けんは皮膚のバリア機能を損ない、乾燥を促進する可能性があります。リンパ浮腫のある部位の皮膚は乾燥しやすく、刺激に敏感なため、弱酸性の低刺激性の石けんを使用することが望ましいです。正しくは:弱酸性で低刺激性の石けんを使用する。選びやすい理由:洗浄力が強い方が清潔になると考えがちだが、皮膚への優しさが重要。混同注意:汚れを落とすことと、皮膚の保護を両立させることのバランスを誤りやすい。
国試ポイント
乳がん術後のリンパ浮腫患者に対する日常生活でのスキンケアと感染予防に関する知識が問われています。特に、皮膚の保護と保湿の重要性を理解しているかどうかがポイントです。
混同注意
リンパ浮腫のケアは、一般的なむくみや皮膚疾患のケアとは異なる専門的な知識が求められます。特に、マッサージや洗浄方法、使用する石けんの種類など、細かい点での誤解が生じやすいです。
次に同じ論点が出たら
リンパ浮腫の症状が進行した場合や、蜂窩織炎が疑われる場合の対応(受診勧奨、医師との連携)についても理解しておく必要があります。
関連知識
リンパ浮腫の発生メカニズム、蜂窩織炎の症状と予防、リンパドレナージの基本原則、圧迫療法(弾性ストッキングやスリーブ)の活用、日常生活での注意点(締め付けの強い衣類を避ける、長時間同じ体勢を避けるなど)。