母親がAさん(27歳、統合失調症)に対して「親に甘えてはいけない」と言いながら、過度にAさんの世話をすることで、Aさんが混乱していた。この親子関係を示すのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第111回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
二重拘束(ダブルバインド)とは、一方が他方に対し、言葉と非言語的な行動が矛盾するメッセージを同時に発し、受け手がどちらのメッセージに従っても不利益を被る状況を指します。本事例では、母親が「甘えてはいけない」という言語的メッセージと、「過度な世話」という非言語的(行動)メッセージを同時に発しており、Aさんはどちらのメッセージに沿って行動しても母親の期待に沿えない状態に置かれ、混乱しています。これは二重拘重の典型的な状態であり、統合失調症の発症要因の一つとしても提唱されました。
選択肢ごとの解説
- 1. 共依存は、特定の関係性において双方が互いに依存し、自己を犠牲にして相手の問題を解決しようとする関係を指します。この事例では、母親の一方的な言動と行動の矛盾がAさんを混乱させており、共依存の定義とは異なります。正しくは:この親子の関係性において、母親の言動と行動の矛盾によってAさんが混乱している点に焦点を当てています。共依存は相互の依存関係を指します。選びやすい理由:親が子どもの世話を過度に行うという点から、共依存と混同する可能性があります。しかし、共依存は相互的な心理的依存を指すため、本事例のような一貫性のないメッセージによる混乱とは異なります。混同注意:「過度に世話をする」という部分だけを見ると共依存を連想しがちですが、共依存は相互に相手に心理的に縛られ、自己犠牲的に相手の問題を解決しようとすることです。本問のポイントは矛盾したメッセージです。
- 2. 同一視は、他者の特徴や価値観を自分のものとして取り入れ、自己と他者を一体であるかのように認識する心理作用です。本事例の親子関係における矛盾したメッセージとは関連がありません。正しくは:この事例は、他者の特性を取り入れる同一視とは異なる、コミュニケーション上の問題を示しています。選びやすい理由:心理学的な用語であるため、他の選択肢と共に心理学的な問題と捉え、無関係な概念と誤って関連付ける可能性があります。混同注意:同一視は無意識的に他者(特に親や尊敬する人物)の特性を取り入れる心理作用です。本問は、母親がAさんに発しているメッセージの矛盾が問題であり、Aさんが母親を同一視しているか否かの問題ではありません。
- 3. ネグレクト(育児放棄)は、養育者が子どもに対して必要な世話や保護を怠る行為を指します。本事例では、母親はむしろAさんの世話を「過度に」行っているため、ネグレクトには該当しません。正しくは:ネグレクトは必要な世話を怠ることを指しますが、本事例では世話を「過度」に行っているため不適切です。選びやすい理由:「親に甘えてはいけない」という言葉だけを切り取ると、心理的な拒否の側面があるように見え、それがネグレクトの一種と誤解される可能性もあります。しかし、実際には過度な世話が行われています。混同注意:ネグレクトは身体的・精神的な世話を怠る行為です。本問では母親が「過度に世話をしている」ため、ネグレクトとは真逆の状態を示しています。
- 4. 正解。二重拘束(ダブルバインド)とは、相手に対して矛盾した二つのメッセージを同時に発信し、どちらを選択しても非難される状況を作り出すコミュニケーションパターンを指します。この事例では、「親に甘えてはいけない」という言葉のメッセージと、「過度に世話をする」という行動のメッセージが矛盾しており、Aさんを混乱させているため、二重拘束に該当します。正しくは:母親の「甘えてはいけない」という言葉と「過度な世話」という行動は、Aさんに対し矛盾したメッセージを送り、Aさんを混乱させています。これは二重拘束の典型的なパターンです。
国試ポイント
統合失調症に関する基本的な知識、特に家族関係やコミュニケーションパターンに関する理解が問われています。二重拘束は家族療法の分野で重要な概念であり、患者の心理的状況を理解する上で不可欠です。
混同注意
共依存と二重拘束は、どちらも不健康な家族関係を示す概念であり、混同しやすいです。共依存は相互の依存関係に焦点を当てるのに対し、二重拘束は矛盾したメッセージによるコミュニケーションの問題に焦点を当てます。
次に同じ論点が出たら
このような親子関係を理解した上で、看護師としてAさんや家族に対しどのような介入が適切かを判断する能力が求められます。
関連知識
家族システム論、コミュニケーション理論、統合失調症の心理社会的要因。