Aさん(43歳、男性)は統合失調症で通院していたが、服薬中断によって幻覚妄想状態が続いていた。ある日、Aさんの父親に対する被害妄想が強くなり、父親へ殴りかかろうとしたところを母親に制止された。その後、Aさんは母親に促されて精神科病院を受診し「薬は飲みたくないけど、父親が嫌がらせをするので、すぐに入院して家から離れたい」と訴えた。母親も入院治療を強く希望している。Aさんの入院形態はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第113回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
Aさんは統合失調症による幻覚妄想状態ではあるものの、自身の意思で「すぐにでも入院して家から離れたい」と明確に述べており、入院への同意能力があると判断できます。そのため、本人の意思に基づく任意入院が最も適切な入院形態です。精神保健福祉法では、患者の自発的な意思が尊重されるため、同意能力がある限り任意入院が優先されます。他害行為の兆候はあったものの、本人が入院を希望している点が重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. 応急入院は、本人の同意が得られず、医療保護入院の手続きも間に合わない緊急時かつ72時間に限られる入院形態です。Aさんは自身の意思で入院を希望しており、同意能力があると判断されるため、この形態には該当しません。正しくは:応急入院は、医療保護入院の要件を満たすが、その手続きを行う時間的余裕がない緊急の場合に、72時間を限度として行われる入院です。本事例では本人が入院を希望しており、任意入院が可能です。選びやすい理由:父親への暴力行為があったため、緊急性が高いと誤解し、応急入院が適切だと考えるかもしれません。混同注意:措置入院のような緊急性を要する入院と混同しやすいが、本人の同意の有無が異なります。
- 2. 措置入院は、精神疾患により自傷他害の恐れが著しい場合に、本人の同意なしに都道府県知事の命令で行われる強制入院です。Aさんの場合は他害行為の兆候はあったものの未遂であり、何より本人が自ら入院を希望しているため、この要件には該当しません。正しくは:措置入院は、自傷他害の恐れが「著しい」と2名以上の精神保健指定医が判断し、知事の命令によって行われる入院です。本事例では本人が入院を希望しており、他害の恐れも著しいとまでは判断されにくい状況です。選びやすい理由:父親への暴力行為未遂があったため、他害の恐れがあるとして措置入院を連想しやすいです。混同注意:医療保護入院や応急入院と異なり、強制力を持つ入院形態として区別が必要です。
- 3. 正解。Aさんは精神症状を抱えつつも、自らの意思で「すぐにでも入院して家から離れたい」と明確に希望しており、入院に対する同意能力があると判断できます。このため、本人の同意に基づく任意入院が最も適切な形態です。
- 4. 医療保護入院は、精神疾患のために本人の同意が得られない場合に、保護者の同意と精神保健指定医の判断によって行われる入院です。Aさんは「すぐにでも入院して家から離れたい」と明示的に入院を希望しており、本人の同意が得られる状況であるため、この形態には該当しません。正しくは:医療保護入院は、本人が精神疾患のため入院が必要であるにもかかわらず、その入院に同意ができない場合に、家族等の同意を得て行われる入院です。本事例では本人が入院を希望しています。選びやすい理由:母親が入院を強く希望していることと、Aさんに幻覚妄想があることから、本人の判断能力が不十分だと誤解し、医療保護入院が適切だと考えるかもしれません。混同注意:本人の同意の有無と判断能力が区別しにくい点です。本人が「薬は飲みたくない」と言っていても、「入院したい」という意思は明確に示しています。
国試ポイント
精神保健福祉法における各種入院形態の定義と、患者の意思表示能力の判断、そして患者の人権尊重の原則を問う問題です。特に、患者が精神症状を抱えていても、明確な意思表示(この場合は入院したいという希望)がある場合にどの入院形態を選択すべきか、その優先順位を理解しているかが鍵となります。
混同注意
患者に精神症状があり、他害行為の兆候や家族の強い希望がある場合に、本人の意思を無視して医療保護入院や措置入院、応急入院を選択しがちです。しかし、患者本人が入院を希望しているかどうかが、これらの入院形態を区別する最も重要なポイントです。
次に同じ論点が出たら
精神科の入院形態を問う問題では、まず「患者本人に入院の同意能力があるか、そして入院を希望しているか」という点を最優先で確認してください。次に、自傷他害の危険性の有無と程度、家族の意向、そして緊急性を判断します。本人の同意能力と希望があれば任意入院が第一選択です。
関連知識
精神保健福祉法における主な入院形態: * 任意入院: 本人の同意に基づく入院。原則として自由に退院できる。 * 医療保護入院: 精神保健指定医1名と家族等保護者の同意に基づく入院。本人の同意は不要だが、医師の診察で入院の必要が認められた場合。 * 措置入院: 2名以上の精神保健指定医の診察により、自傷他害の恐れが「著しい」と判断され、都道府県知事の命令により行われる強制入院。 * 応急入院: 急速を要し、任意入院や医療保護入院の手続きを行う時間がない場合に、精神保健指定医1名の判断で72時間を限度に行われる入院。本人の同意は不要。