Aさん(55歳、男性)は筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉で、経口摂取と胃瘻による経管栄養を併用し、在宅療養することになった。Aさんと家族介護者への指導内容で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第113回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
嚥下機能が低下している患者の経口摂取時における誤嚥予防の基本は、頸部前屈位をとることです。この姿勢により、食塊がスムーズに食道へ流れ込みやすくなり、気管への誤嚥リスクを大幅に低減できます。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者は嚥下障害が進行するため、この指導は日々の生活で非常に重要となります。
選択肢ごとの解説
- 1. ALSによる嚥下機能の低下が進むと、水分は特に誤嚥しやすく、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。胃ろうを併用している状況では、安全な水分摂取方法(とろみをつけるなど)を検討するか、胃ろうからの注入を主体とするのが適切です。経口からの水分摂取に限定するのは危険です。正しくは:水分補給は、嚥下評価に基づき安全な方法を選択するか、胃ろうからの注入も活用するよう指導する。選びやすい理由:嚥下機能が完全に失われるまでは経口摂取を継続したいという患者や家族の気持ちから、水分も口から摂ることを望む場合があるため、選択肢として魅力的かもしれません。しかし、安全性確保が最優先です。混同注意:嚥下機能が比較的保たれている初期段階のALS患者や、とろみ剤などを用いて安全が確保されている場合の水分摂取指導と混同しやすいですが、胃ろうを併用していることから、ある程度の嚥下障害が進行していると考えられます。
- 2. 正解。嚥下障害がある場合、頸部を前屈させる姿勢は、食塊が咽頭を通過する際に気道への誤嚥を防ぐために非常に効果的です。この姿勢は、誤嚥予防のための基本的な指導であり、ALS患者の経口摂取時に特に重要です。
- 3. 胃ろうからは経管栄養剤の他に、医師の指示に基づき、砕いた薬剤を溶解したものや水分補給のための水を注入することが一般的です。経管栄養剤以外の注入を全て禁止するのは適切ではありません。正しくは:胃ろうからの注入は、経管栄養剤の他に、医師の指示に基づき薬剤や水分も適切に注入できるよう指導する。選びやすい理由:胃ろうからの不適切な注入(例:自己判断による未確認の食品など)によるトラブル(チューブ閉塞、感染など)を避けたいという思いから、制限を厳しくすることが安全だと考えるかもしれません。混同注意:患者や家族が自己判断で、医師の指示がない食品や液体を注入する行為の禁止と混同しやすいですが、医療者から指示された薬剤や水分は適切に注入されるべきです。
- 4. 在宅療養においては、患者のQOL(生活の質)を重視し、生活リズムをできるだけ尊重することが重要です。経管栄養の注入時間は、医師や管理栄養士との相談の上で、ある程度の柔軟性を持って患者や家族の生活パターンに合わせて調整することが推奨されます。厳密な時間管理は、かえって患者の生活の自由度を奪い、QOLを低下させる可能性があります。正しくは:経管栄養の注入時間は、生活リズムを考慮しつつ、Aさんや家族の生活パターンに合わせて柔軟に調整できることを指導する。選びやすい理由:医療機関での管理に慣れていると、注入時間を厳守することが治療効果を最大化し、規則正しい生活が良いと誤解しやすいです。しかし、在宅では患者中心のケアが求められます。混同注意:特定の薬剤の服用時間など、厳密な時間管理が不可欠な医療行為と、比較的柔軟な対応が可能な経管栄養の注入時間とを混同しやすいです。経管栄養の注入間隔は重要ですが、具体的な開始時間には調整の余地があります。
国試ポイント
本問は、嚥下障害を持つ患者への看護ケア、特に誤嚥を予防するための具体的な体位指導に関する知識を問うものです。また、在宅療養における患者や家族のQOL(生活の質)を考慮した、適切な胃ろう管理と水分・栄養摂取指導の重要性も含まれています。
混同注意
嚥下機能が低下している患者への指導では、安全な水分摂取方法(とろみ剤の使用や胃ろうからの注入)と、完全に経口摂取が不可能になる前の段階でのケアの区別が曖昧になりがちです。また、胃ろうからの注入内容の適切性(医師指示の薬剤・水分は可、自己判断による不適切なものは不可)や、在宅療養における医療行為の厳守と、患者・家族の生活リズムを尊重した柔軟なスケジューリングのバランスも混同しやすい点です。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出た場合は、嚥下障害時の食事の体位だけでなく、食事形態(とろみ食、刻み食、ゼリー食など)、一口量、食事のペース、食後の過ごし方(例:食後2時間程度は座位を保つ)など、誤嚥予防に関する具体的な看護介入全般に注目しましょう。また、胃ろう管理では、胃ろう周囲の皮膚トラブルの予防と観察、チューブ閉塞時の対応、注入速度の調整など、実践的な知識が問われる可能性があります。
関連知識
嚥下障害のアセスメントと具体的な誤嚥予防策(食事の姿勢、食事形態、一口量、食具の選択、食事の介助方法、食後の過ごし方など)。経管栄養(胃ろう)の管理方法(注入方法、清潔ケア、皮膚トラブルの予防と対応、チューブ閉塞時の対処)。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態生理、進行による症状変化、およびそれに対する多職種連携を含む看護介入の知識が関連します。在宅療養における患者・家族のセルフケア支援とQOLの維持も重要な視点です。