Aさん(60歳、男性)は、慢性心不全の終末期で、積極的な治療を行わないことを希望している。現在、入院中で、リザーバーマスク10 L/分で酸素を吸入し、水分制限がある。時々息切れがみられるが、Aさんは面会に来た長女との会話を楽しみにしている。バイタルサインは呼吸数28/分、脈拍110/分、血圧76/50 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉88 %であった。このときの対応で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
Aさんは慢性心不全の終末期であり、緩和ケアの視点から患者のQOL維持が重要です。長女との面会はAさんの精神的な支えとなっているため、面会を制限せず、患者の望むようにすることが最も適切です。他の選択肢は、患者の苦痛を増大させたり、必要な医療処置を妨げたりする可能性があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。Aさんは終末期であり、長女との面会を楽しみにしていることから、精神的な安寧やQOLの維持が重要です。身体的苦痛緩和とともに、心理的・社会的・スピリチュアルなケアが重視されるため、面会を制限することは適切ではありません。心不全の状態は不安定ですが、会話ができる状態であれば、面会は患者の精神的な支えとなります。
- 2. すでに水分制限がある状況で、さらに厳しくすることは、Aさんの苦痛を増大させる可能性があります。終末期の心不全では、症状緩和が最優先されるため、過度な制限は避けるべきです。また、脱水による口腔内の不快感や便秘を引き起こすリスクもあります。正しくは:水分制限の継続は医師の指示に基づくが、患者の苦痛を緩和するため、口腔ケアや少量の水分摂取の工夫などを検討する。選びやすい理由:心不全が悪化しないよう、厳しく管理することが良いと誤解しやすい。特に浮腫や肺水腫を懸念する。混同注意:急性期の治療と終末期の緩和ケアの目的の違い。
- 3. 呼吸困難がある患者にとって、仰臥位はむしろ呼吸を苦しくさせることが多い体位です。心不全では、座位や半座位のほうが呼吸が楽になることが一般的です。患者の安楽を優先し、楽な体位を取らせるべきです。正しくは:Aさんが楽な体位(例えば、半座位やファウラー位)を取れるように介助し、体位変換を促す。選びやすい理由:安静を保つために仰臥位が良いと短絡的に考えることがある。混同注意:安静臥床の重要性と、安楽な体位の選択。
- 4. Aさんは現在、リザーバーマスク10L/分で酸素吸入しており、SpO2が88%と低い状態です。これは高流量の酸素投与が必要な状態を示しており、鼻腔カニューラ(通常2〜6L/分程度)では必要な酸素供給量を維持できません。酸素投与量を減らすことは、酸素飽和度をさらに低下させ、呼吸困難を悪化させる危険性があります。正しくは:面会中も必要な酸素投与量を維持するため、リザーバーマスクを継続する。会話がしにくい場合は、マスクを少しずらすなどの工夫を検討するが、酸素供給量は維持する。選びやすい理由:会話をしやすいようにという配慮から、簡便な鼻腔カニューラへの変更を考えやすい。混同注意:酸素投与量の必要性と、患者の快適性のバランス。
国試ポイント
終末期の患者ケアにおけるQOL維持、精神的支援の重要性、そして身体的苦痛緩和とのバランスが問われています。特に、心不全患者の酸素療法、水分管理、体位管理に関する基本的な知識と、終末期ケアの原則を理解しているかが試されます。
混同注意
急性期の治療介入と終末期緩和ケアの目的の違い。終末期では、身体的苦痛の緩和とともに、精神的・社会的・スピリチュアルなケアが重視されます。病態が悪化しているからといって、すべてを制限することが必ずしも正しいわけではない点を理解する必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の状況で、患者の身体的苦痛と精神的安寧のどちらを優先すべきか、または両者をどのようにバランスさせるべきかを見極める問題が出た場合、緩和ケアの原則に立ち返り、患者の意思とQOLを最優先に考える判断が求められます。
関連知識
緩和ケアの原則、終末期医療、心不全患者の看護(酸素療法、体位管理、水分管理)、QOLの概念、家族ケア。