Aさん(55歳、男性)は、妻と2人暮らし。建築士として主にデスクワークの仕事を行っていた。脊髄損傷のため下半身の不完全麻痺となり、リハビリテーション専門の病院へ転院した。電動車椅子を用いて室内の動作は自立できるようになった。退院調整部門の看護師との面接でAさんから「元の職場に戻りたい」と話があった。Aさんの自己決定を支援する看護師の助言で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第109回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
看護師は、患者の自己決定を尊重し、その実現に向けて主体的な課題解決を促す役割があります。Aさんが「元の職場に戻りたい」という意思を示しているため、まずはその希望を実現するための具体的な課題をAさん自身が認識し、整理するプロセスを支援することが重要です。これにより、Aさん自身が課題解決に向けて行動を起こすための第一歩となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 在宅勤務への切り替えは選択肢の一つですが、それを看護師が一方的に提案するのは適切ではありません。Aさんの意思や職場の状況を確認せずに断定的な助言をすることは、自己決定の支援とは言えません。正しくは:「元の職場での業務を在宅勤務へ切り替えることも選択肢の一つとして検討できますね」選びやすい理由:在宅勤務は障害のある方にとって有効な働き方であるため、良い選択肢のように思える。混同注意:患者の希望を叶えるための積極的な提案と誤解する可能性がある。
- 2. デスクワークであることだけで職場復帰の可否を断定することはできません。職場環境(バリアフリーの状況など)、Aさんの現在の身体機能、通勤方法、職場の理解など、様々な要因が関係します。看護師が安易に可能と断言することは、Aさんに誤った期待を抱かせたり、現実的な課題を見落とすことにつながります。正しくは:「デスクワークであることは復帰の可能性を広げる要因ですね。具体的にどのような課題があるか考えてみましょう」選びやすい理由:デスクワークは身体的な負担が少ないため、復帰しやすいと判断しがち。混同注意:患者の希望を肯定的に捉えることが、そのまま具体的な助言になると考える可能性がある。
- 3. 正解。Aさんの自己決定を支援するためには、まずAさん自身が職場復帰に関してどのような課題や不安を感じているかを明確にすることが重要です。Aさんの主体的な課題認識と解決への取り組みを促す、最も適切な助言です。正しくは:(変更の必要なし)選びやすい理由:特になし。患者主体の支援の基本となる選択肢。混同注意:他の選択肢のような具体的な解決策の提示と比べて、一見遠回りに見える可能性がある。
- 4. Aさんは「元の職場に戻りたい」と明確に希望を述べています。その希望を尊重せず、一方的に「元の職場にこだわらず」と助言することは、Aさんの自己決定を支援する立場として適切ではありません。まずは元の職場復帰の可能性を検討し、その上で困難な場合に他の選択肢を提示するのが望ましいです。正しくは:「もし元の職場への復帰が難しいと判断された場合、障害に適した別の職場を探すことも視野に入れることができますね」選びやすい理由:患者の現実的な選択肢を広げる提案のように見えるが、患者の意思を尊重していない点が不適切。混同注意:患者の将来を考える選択肢と、患者の現在の意思を尊重する選択肢を混同する可能性がある。
国試ポイント
患者の自己決定支援の基本原則と、課題を患者自身が認識・整理することの重要性。
混同注意
患者の希望を肯定するだけの言葉や、看護師が一方的に解決策を提示するような選択肢は、自己決定支援として不適切である点。
次に同じ論点が出たら
Aさんが整理した課題に対して、看護師は情報提供(職場の制度、利用できる支援サービスなど)や社会資源の紹介、関係機関との連携(ソーシャルワーカー、ハローワークなど)といった具体的な支援につなげていく。
関連知識
自己決定、患者の権利、ICF(国際生活機能分類)における参加、リハビリテーション看護における目標設定。