Aさん(76歳、女性)は、長女(46歳、会社員)との2人暮らし。Aさんは5年前に2型糖尿病と診断された。1年前から血糖測定とインスリン自己注射を朝1回行っている。炊事は主にAさんが担当している。Aさんは、長女の帰宅に合わせて夕食を摂るため、夕食時間にばらつきがある。定期の外来受診時にAさんは「時々汗が出て手が震えることがあります」と外来看護師に相談した。Aさんのバイタルサインは、体温36.4°C、脈拍74/分、血圧128/80 mmHg。身長154 cm、体重68 kgである。 6か月後の外来受診時に、同席していた長女が「甘い物ばかり食べる母を叱ってしまいます」と外来看護師に話した。Aさんは黙って話を聞いていた。前回の受診から低血糖症状はなく、体重は3kg増加した。Aさんは日中テレビを観て過ごしていることが多い。外来看護師が別室で長女に提案する内容で最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
Aさんは黙って話を聞いており、日中テレビを観て過ごすことが多いといった情報から、甘いものを食べる行動の背景にAさんの心理状態や生活習慣が関連している可能性が考えられます。長女がAさんを叱ってしまうことに対し、まず長女にAさん自身の気持ちを理解しようとする姿勢を促すことで、Aさんの内面的な問題へのアプローチを可能にし、同時に家族間のコミュニケーション改善にも繋がります。患者の主体性を尊重し、行動の背景にある動機や感情を探ることは、行動変容を促す上で最も重要な第一歩です。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者さん自身が食生活の改善に意欲的でない可能性があり、また患者さんの意思確認ができていないため、家族がいきなり調理法を学ぶことを提案するのは適切ではありません。患者の意思を尊重し、段階的に支援を考えるべきです。正しくは:まずはAさんの食生活や甘いものに対する気持ちを聞き、その上で必要であれば食事療法の情報提供を検討します。選びやすい理由:糖尿病患者には糖尿病食が重要であるため、家族がその知識を持つことは役立つと錯覚しやすい。混同注意:患者の直接的な問題解決(食事療法)と、その背景にある心理的な問題へのアプローチを混同しやすい。
- 2. 長女がAさんを叱ってしまう背景には、Aさんの健康を心配する気持ちがあるため、単に叱るのをやめるよう指示するだけでは根本的な解決になりません。また、長女の心理的な負担を無視しているともいえます。正しくは:長女の感情を受け止めつつ、Aさんの状況を理解しようとすることの重要性を伝えます。選びやすい理由:家族間のコミュニケーション改善は重要であるため、一見すると正しいアドバイスに見える。混同注意:表面的な行動(叱る)と、その行動の根底にある感情や原因を混同しやすい。家族支援の原則を理解していないと選択しやすい。
- 3. これは物理的な環境調整ですが、Aさんの甘いものを食べたいという欲求や行動の背景にある心理的な側面(例えば、日中の活動の少なさやストレスなど)に対処できていません。一時的な対策にはなっても、持続的な解決策ではありません。正しくは:Aさんがなぜ甘いものを多く食べてしまうのか、その原因をAさん自身の言葉から探るアプローチが優先されます。選びやすい理由:物理的な環境を変えることで問題行動を減らせると考えがちであるため。混同注意:行動制限と、行動変容を促すための心理的・環境的支援を混同しやすい。小児への対応と高齢者の自律性を尊重した対応を混同しやすい。
- 4. 正解。Aさんが黙って話を聞いていたこと、体重増加、日中テレビを観て過ごすことが多いといった情報から、Aさん自身が現在の状況についてどのように感じているか、なぜ甘いものを食べてしまうのかを理解することが重要です。患者の気持ちを傾聴することで、問題の根源にアプローチし、Aさん自身の主体的な行動変容を促す第一歩となります。長女にその視点を与えることは、家族関係の改善にも繋がります。正しくは:この選択肢が最も適切です。選びやすい理由:患者の主体性を尊重し、問題の根本原因を探るという看護の基本的な姿勢を示している。混同注意:他の選択肢は対症療法や一方的な指示に近いが、この選択肢は患者中心のケアに基づいている。
国試ポイント
糖尿病患者の家族支援において、患者の行動変容を促すための看護師の適切な関わり方、特に患者の主体性を尊重し、行動の背景にある心理的要因に焦点を当てることの重要性が問われています。家族が一方的に介入するのではなく、患者本人の気持ちや状況を理解しようと促す視点が求められます。
混同注意
表面的な問題解決(食事指導、物理的制限)と、患者の根本的な行動変容を促すための心理的アプローチ。家族への指示と家族への支援の違い。
次に同じ論点が出たら
同様のケースで患者が発言しない場合、まずは患者の感情や行動の背景にあるニーズを探ることを優先します。具体的な食事指導や環境調整は、患者の意欲や状況を把握した上で行うべきです。
関連知識
糖尿病患者のセルフケア支援、行動変容ステージモデル、家族システム論、患者中心のケア、傾聴、エンパワメント。