72歳の女性。慢性心不全。左室駆出率〈LVEF〉は35 %、NYHA分類はⅢ度。今回、心不全の急性増悪で入院した。経過良好で退院に向けて作業療法が開始された。認知機能の低下を認める。入院前は平屋に独居で生活しており、自宅退院に向けて不安が残る。介護保険の要介護認定は未申請である。退院に向けた作業療法で誤っているのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
慢性心不全患者の運動療法では、安全性と効果の両面から適切な運動強度を設定することが極めて重要です。Borgスケール(RPE)を用いた運動強度設定では、一般的に「やや楽である」から「ややきつい」の範囲(RPE11~13)が推奨されています。選択肢4のBorg指数15~18は「きつい」と感じる強度であり、NYHA分類Ⅲ度の患者には過度な心臓への負担となり、心不全の悪化を招く危険性があるため、誤った指導です。
選択肢ごとの解説
- 1. 独居で慢性心不全(NYHAⅢ度、LVEF35%)と認知機能低下を認めることから、日常生活動作に支援が必要となる可能性が非常に高いです。介護保険サービスの利用は、安全な在宅生活を継続するために不可欠であり、退院支援として適切な介入です。
- 2. 心不全患者の入浴では、全身浴による水圧や湯温による心臓への負担(心拍数増加、血圧変動など)を軽減することが重要です。半身浴やシャワー浴は、全身浴に比べて心臓への負担が少ないため、適切な指導と言えます。
- 3. NYHA分類Ⅲ度の心不全患者は、日常生活活動でも心臓に大きな負担がかかる可能性があります。安全に訓練を実施し、心臓への過負荷による異常(不整脈、虚血変化など)を早期に発見・対応するためには、心電図モニターによる監視が不可欠であり、適切な介入です。
- 4. 正解。慢性心不全患者の運動指導における目標運動強度は、Borgスケール(RPE)で一般的に「やや楽である」から「ややきつい」の範囲(11~13)が推奨されます。15~18は「きつい」範囲に相当し、NYHA分類Ⅲ度の患者には過度な心臓への負担となり、心不全の悪化を招く危険性があるため、不適切な指導です。正しくは:Borgスケール11~13の範囲での活動を指導する。選びやすい理由:Borgスケールが運動強度を示すことは知っていても、心不全患者に適切な具体的な数値範囲を正確に覚えていない場合、選びやすい可能性があります。混同注意:健常者や比較的軽度の疾患患者、あるいはアスリートへの運動指導におけるBorgスケールの目標値と混同する可能性があります。
- 5. 心不全患者の運動強度設定において、心拍数を用いる場合は、最大心拍数または運動耐容能検査で得られた最高心拍数の40~60%(~70%)が推奨されることが一般的です。50~70%は妥当な目標範囲内であり、適切な指導と言えます。
国試ポイント
心臓リハビリテーションにおける運動強度の設定方法(Borgスケール、心拍数など)と、その具体的な目標値、特に心不全の重症度(NYHA分類やLVEF)に応じた調整が問われます。また、心不全患者の日常生活指導における注意点(入浴、監視体制、社会資源の活用)も総合的に理解しているかが問われます。
混同注意
Borgスケールの数値とそれに対応する自覚的運動強度の認識が曖昧な場合や、心不全患者と健常者あるいは軽度疾患患者の運動強度設定基準を混同する可能性があります。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、心不全患者の運動療法の具体的なプロトコル(運動の種類、頻度、時間)や、活動中の異常徴候(胸痛、呼吸困難、めまいなど)とそれに対する対処法、また、LVEFの数値に応じた運動強度の調整について問われる可能性があります。
関連知識
NYHA分類の各段階の症状、Borgスケールの意味と具体的な数値(6-20)、心不全患者の運動療法の原則(低強度・長時間の有酸素運動、監視下での実施、漸進的な負荷増大)、心不全患者の日常生活指導における注意点(入浴方法、水分・塩分管理、体重管理、服薬管理、症状悪化時の対処法、社会資源の活用)。