37歳の女性。統合失調症。20年間の入退院を繰り返した後、グループホームに入居し、精神科デイケアを利用して生活する方針となった。担当作業療法士は、本人の関心、才能、性格および環境について日常生活を含めた7つの領域に分けて本人と確認し、本人の言葉で退院後の目標を記載した。本アセスメントの根拠となるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
ストレングスモデルは、精神疾患を持つ人々の回復を支援するために、彼らが持つ強み、リソース、能力に焦点を当てるアプローチです。問題点や欠陥ではなく、クライエント自身の関心、才能、性格、そして利用可能な環境資源を明らかにし、それらを活用して目標を設定します。設問の記述にある「本人の関心、才能、性格および環境について日常生活を含めた7つの領域に分けて本人と確認し、本人の言葉で退院後の目標を記載した」という内容は、まさにストレングスモデルにおけるアセスメントと目標設定のプロセスを具体的に示しています。本人の内発的な強みと外的な資源を見出し、それを基に本人が主体的に目標を立てるという点が重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. CMOPは作業遂行に着目し、スピリチュアリティや環境を含めたクライエント中心のアプローチを特徴としますが、設問に記述された「本人の関心、才能、性格」といった強みに焦点を当てた7領域での確認と目標設定は、直接的なCMOPの独自のアセスメント手法としては合致しません。正しくは:CMOPは、クライエントの作業遂行の問題を「遂行」「環境」「スピリチュアリティ」の相互作用から捉え、クライエントが意味のある作業を選択し、遂行できるよう支援するモデルです。選びやすい理由:クライエント中心のアプローチという点で共通認識があるため。混同注意:クライエント中心主義やホリスティックな視点という点で、他のモデルと混同しやすいです。
- 2. IPSモデルは、精神疾患を持つ人々の競争的就労を支援するためのエビデンスに基づいたアプローチであり、就労に特化しています。設問で示されている「日常生活を含めた7つの領域」や「退院後の目標設定」は、就労支援以外の広範な生活支援を含むため、IPSモデルの主眼とは異なります。正しくは:IPSモデルは、精神疾患を持つ人が希望する競争的雇用に直接就職できるよう、継続的で個別化されたサポートを提供する就労支援モデルです。選びやすい理由:精神科リハビリテーションの一環として知られているため。混同注意:精神科領域のリハビリテーションモデル全般と混同しやすいですが、IPSは就労に特化しています。
- 3. 人間作業モデルは、作業行動の動機づけ、習慣化、遂行能力に着目し、作業療法における包括的なフレームワークを提供します。しかし、設問の「本人の関心、才能、性格」といった「強み」に焦点を当て、7つの領域で確認し、本人の言葉で目標を設定するというアセスメントの具体的な記述は、ストレングスモデルの特徴とより強く一致します。正しくは:人間作業モデルは、人間の作業行動を「意志」「習慣化」「遂行能力」の相互作用として捉え、作業を通して人々の健康と幸福を支援するモデルです。選びやすい理由:作業療法士にとって最も基本的なフレームワークの一つであり、広範な適用範囲を持つため、選びやすい傾向があります。混同注意:あらゆる作業療法介入の基盤となるため、他の特定の目的を持つモデルと混同されやすいです。
- 4. 正解。ストレングスモデルは、精神疾患を持つ人々の問題点や障害に焦点を当てるのではなく、彼らが持っている強み(関心、才能、性格、資源、能力など)や潜在能力を明らかにし、それを活用して目標を達成し、生活を再構築することを支援するアプローチです。設問にある「本人の関心、才能、性格および環境について日常生活を含めた7つの領域に分けて本人と確認し、本人の言葉で退院後の目標を記載した」という記述は、まさにストレングスモデルにおけるアセスメントと目標設定のプロセスを具体的に表しています。特に「本人の言葉で目標を記載」という点は、クライエント中心性やエンパワメントの視点とも一致します。
- 5. エンパワメントアプローチは、クライエントが自身の生活や運命をコントロールする力を高め、自己決定を促進することを目指す包括的な哲学や方針です。ストレングスモデルはエンパワメントを達成するための具体的な手法の一つとして機能しますが、設問が描写している「本人の関心、才能、性格、環境について7つの領域に分けて確認し、本人の言葉で目標を記載する」というアセスメントの具体的手法そのものは、ストレングスモデルの核心により近いです。エンパワメントは目的や方針であり、ストレングスモデルはそれを実践するための具体的なモデルと考えられます。正しくは:エンパワメントアプローチは、対象者が自身の能力や資源を認識し、自己決定権を行使して生活を主体的にコントロールできるよう支援することを目的とした哲学や介入方針です。選びやすい理由:ストレングスモデルと非常に密接な関係があり、強みを生かすことがエンパワメントにつながるため、正解と混同しやすいです。混同注意:ストレングスモデルの基盤となる哲学の一つであり、目的と手段の関係性で混同しやすいです。
国試ポイント
精神科領域における作業療法のアセスメントモデルに関する知識が問われています。特に、クライエントの「強み」に着目し、本人の言葉で目標を設定するアプローチの概念を理解しているかどうかが鍵となります。各モデルの名称と、その核となる考え方や具体的なアプローチ手法を区別できることが重要です。
混同注意
ストレングスモデルとエンパワメントアプローチは密接に関連していますが、ストレングスモデルは具体的なアセスメントと介入の手法論を提供する一方で、エンパワメントアプローチはより広範な支援の哲学や目的を指します。また、CMOPや人間作業モデルもクライエント中心のアプローチを含みますが、設問の記述が強調する「強み」の発見と活用、具体的な7領域での確認という点において、ストレングスモデルが最も合致します。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が問われた場合、アセスメントや介入の具体的な内容が、クライエントの「強み」や「資源」に焦点を当てているか、また「本人の主体性」や「自己決定」を重視しているかに注目します。問題点や機能障害の評価に重きを置くモデルとは区別が必要です。また、特定の疾患や生活課題(例:就労)に特化したモデルであるかどうかも判断材料になります。
関連知識
ストレングスモデルでは、クライエントの強み(関心、才能、性格、能力)だけでなく、環境資源(家族、友人、コミュニティ、機関)も重要なリソースとして捉え、これらを「生活の7つの領域(Living Domains)」に沿ってアセスメントすることが提唱されています(住居、仕事、教育、余暇、人間関係、健康、金銭管理など)。また、リカバリーの概念とも深く結びついています。