「作業の手順が分からない」、「説明がよく分からない」と訴える統合失調症の患者の認知機能を精査する目的で検査を実施した。図版の一部を図に示す。このような図版が含まれるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
提示された図版はハノイの塔の課題を示しており、これは遂行機能、特に計画・問題解決能力を評価する検査で用いられます。統合失調症患者の認知機能障害を多角的に評価するBACS-Jには、このハノイの塔を含む遂行機能の評価項目が含まれています。
選択肢ごとの解説
- 1. WAB(Western Aphasia Battery)は失語症の評価に用いられる検査であり、ハノイの塔のような遂行機能の課題は含まれていません。正しくは:失語症の評価に特化した検査であり、自発語、聴覚理解、復唱、呼称などを評価します。選びやすい理由:様々な認知機能評価検査がある中で、名称だけでは内容を判断しにくいため。混同注意:失語症以外の認知機能全般を評価する検査(MMSEなど)や、他の神経心理学的検査。
- 2. BADS(Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome)は遂行機能障害の評価に用いられる検査ですが、ハノイの塔の課題は含まれていません。BADSはより日常生活での遂行機能に関連する項目で構成されています。正しくは:遂行機能障害を評価する検査ですが、問題解決テスト、手がかりの使用、行動の調整などを評価し、ハノイの塔は含まれません。選びやすい理由:遂行機能の評価と聞くと選択肢に入りやすいが、具体的な内容が異なるため。混同注意:他の遂行機能評価バッテリー、特にTMTやWCSTなど、特定の遂行機能課題を含む検査。
- 3. MMSE(Mini-Mental State Examination)は、全般的な認知機能を簡便に評価するためのスクリーニング検査であり、見当識、記銘力、注意・計算、想起、言語、図形構成といった項目が含まれますが、ハノイの塔のような複雑な遂行機能の課題は含まれていません。正しくは:全般的な認知機能を簡便に評価するスクリーニング検査であり、ハノイの塔のような複雑な問題解決課題は含まれません。選びやすい理由:認知機能検査として最も一般的に知られているため。混同注意:より詳細な認知機能ドメインを評価する検査(WAIS-IIIなど)や、他のスクリーニング検査(HDS-Rなど)。
- 4. 正解。BACS-J(Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia-Japanese version)は、統合失調症患者の認知機能を総合的に評価するために開発された検査バッテリーです。このバッテリーには、注意力、記憶力、遂行機能、言語流暢性、情報処理速度など、複数の認知機能ドメインを評価する項目が含まれており、遂行機能を評価する項目としてハノイの塔の課題(Tower of London task)が含まれています。問題文の「作業の手順が分からない」「説明がよく分からない」という訴えは、統合失調症に典型的な遂行機能障害や情報処理能力の低下を示唆しており、BACS-Jが適切な検査であると言えます。選びやすい理由:問題文の「統合失調症」というキーワードから、その疾患に特化した検査であるBACS-Jが正答であると推測しやすい。混同注意:他の統合失調症の認知機能評価スケール(例:MATRICS Consensus Cognitive Battery; MCCB)や、汎用的な認知機能検査(例:WAIS-III)。
- 5. WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence Scale-Third Edition)は、成人の全般的な知能を評価するための包括的な検査です。言語性IQと動作性IQに分けられ、様々な下位検査が含まれますが、ハノイの塔のような特定の遂行機能の課題は直接的には含まれていません。図版はWAIS-Ⅲの特定のサブテストとは一致しません。正しくは:成人の全般的な知能を評価する検査であり、ハノイの塔の課題は含まれません。図版に見られる課題は、WAIS-Ⅲの各下位検査(例:積木模様、絵画完成など)のいずれとも異なります。選びやすい理由:包括的な認知機能検査として広く知られているため、なんでも含まれると考えやすい。混同注意:他の知能検査(WISCなど)や、認知機能の特定ドメインを評価する神経心理学的検査。
国試ポイント
統合失調症の認知機能評価に用いられる代表的な検査の種類と、それぞれの検査で評価される認知機能の側面を理解する。
混同注意
各認知機能検査の名称と評価項目が混同しやすい。特に、全般的な認知機能スクリーニングと、より特異的な認知機能ドメインを評価する検査を区別することが重要。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、図版の内容からどのような認知機能が評価されているかを判断し、その認知機能を評価する代表的な検査を選択する。特に遂行機能(計画・問題解決)を示す図版に注目する。
関連知識
統合失調症では、前頭前野機能障害を背景とした遂行機能、注意、作業記憶などの認知機能障害がしばしばみられる。これらの認知機能障害は、日常生活能力や社会機能の低下と強く関連するため、リハビリテーションや薬物療法の効果判定において認知機能評価は重要である。