アルコール依存症に合併しやすい病状とそれに対する治療との組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
アルコール依存症の治療においては、患者自身が断酒を維持するための支援が不可欠です。断酒会のような自助グループは、同じ問題を抱える仲間との交流を通じて精神的なサポートや実践的なアドバイスを提供し、再飲酒の防止に非常に大きな役割を果たします。
選択肢ごとの解説
- 1. アルコール幻覚症は精神病状態であり、治療には主に抗精神病薬が用いられます。抗不安薬は不安症状の緩和には使われますが、幻覚の根本治療にはなりません。正しくは:アルコール幻覚症には抗精神病薬の投与。選びやすい理由:アルコール離脱に関連する症状なので、抗不安薬が有効な場面もあると誤解しやすい。しかし幻覚は精神病症状であり、別の薬が必要。混同注意:アルアルコール離脱せん妄と混同しやすい。離脱せん妄では抗不安薬が使われるが、アルコール幻覚症は精神病症状が主体である。
- 2. ウェルニッケ脳症はチアミン(ビタミンB1)欠乏によって引き起こされるため、治療にはチアミンの大量投与が必要です。ビタミンDは骨代謝や免疫機能に関与し、ウェルニッケ脳症とは直接関係ありません。正しくは:ウェルニッケ脳症にはチアミン(ビタミンB1)の投与。選びやすい理由:ビタミン欠乏症の一種であるため、何らかのビタミンを投与するという方向性は正しいと誤解しやすい。しかし、具体的なビタミンの種類が間違っている。混同注意:ビタミン欠乏性疾患全般と混同しやすい。ウェルニッケ脳症の原因が特定のビタミン(チアミン)であることを理解する必要がある。
- 3. 正解。断酒会(AAなど)は、アルコール依存症患者が断酒を維持するための自助グループであり、共通の経験を持つ仲間と支え合うことで再飲酒防止に非常に有効な治療法とされています。選びやすい理由:これは明らかに正しい選択肢であるため、他に魅力的な誤答がなければ選びやすい。
- 4. 振戦せん妄はアルコール離脱症状の重篤な形態であり、脳の過興奮状態が原因です。治療には主にベンゾジアゼピン系の抗不安薬が用いられ、脳の興奮を鎮めます。抗酒薬は飲酒欲求を抑制したり、飲酒すると不快症状を引き起こすことで断酒をサポートする薬であり、急性期の振戦せん妄の治療には使用されません。正しくは:振戦せん妄にはベンゾジアゼピン系薬剤(抗不安薬)の投与。選びやすい理由:アルコールに関連する症状であるため、抗酒薬も関係あるのではないかと誤解しやすい。しかし、抗酒薬は急性期症状の治療薬ではない。混同注意:アルコール依存症の慢性期治療(断酒維持)と急性期治療(離脱症状管理)を混同しやすい。抗酒薬は慢性期治療薬である。
- 5. アルコール依存症による人格変化は、長期的な脳への影響や社会的適応の問題から生じるものであり、薬物療法や精神療法、リハビリテーションが中心となります。修正型電気けいれん療法(mECT)は、重度のうつ病や統合失調症など特定の精神疾患に対する治療法であり、アルコール依存症に伴う人格変化には通常適用されません。正しくは:人格変化には精神療法やリハビリテーション。選びやすい理由:精神疾患に対する治療法であるため、精神疾患の一種であるアルコール依存症にも有効なのではないかと誤解しやすい。しかし、適用範囲は限定的である。混同注意:精神疾患全般の治療法と特定の症状に対する治療法を混同しやすい。
国試ポイント
アルコール依存症に合併する様々な病態と、それに対する適切な治療法の組み合わせを問う問題です。特に、急性期の離脱症状と慢性期の合併症、そしてそれぞれの治療薬や非薬物療法に関する知識が問われています。特定のビタミン欠乏症や、薬物の種類(抗不安薬、抗精神病薬、抗酒薬)、そして自助グループの役割について正確な理解が求められます。
混同注意
アルコール依存症の離脱症状に対する治療薬と、断酒維持のための治療薬・支援方法を混同しやすい。また、様々なビタミン欠乏症とその具体的な対応を正確に覚えていないと誤答に繋がりやすい。
次に同じ論点が出たら
この問題で問われた論点が再び出題される場合、各選択肢で挙げられた病態の具体的な症状、治療薬の作用機序、あるいは治療法の選択基準(急性期か慢性期かなど)がより深く問われる可能性があります。例えば、各抗酒薬の具体的な名称とその作用、断酒会の種類と特徴、ウェルニッケ脳症以外のビタミン欠乏症とその症状、アルコール性精神疾患の種類と鑑別点など。
関連知識
アルコール依存症の治療は、急性期治療(離脱症状の管理)、回復期治療(断酒維持、精神・身体合併症の治療)、リハビリテーションに分けられます。急性期ではベンゾジアゼピン系薬剤やチアミン投与、慢性期では抗酒薬(ジスルフィラム、シアナミドなど)や飲酒量低減薬(アカンプロサート、ナルトレキソンなど)が用いられます。精神社会学的治療としては、認知行動療法、動機づけ面接、家族療法、そして断酒会などの自助グループへの参加が非常に重要です。