回復期前期(亜急性期が終わり現実感が少し回復し始めた段階)の統合失調症患者に対する作業療法の目的で最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
統合失調症の回復期前期では、急性期の精神病症状が軽減し始め、現実感を少しずつ取り戻す段階です。この時期の作業療法の目的は、身体感覚の再構築を通じて自己と外界との境界を明確にし、現実とのつながりを回復させることにあります。例えば、単純な作業活動を通じて身体を動かすことで、自分の身体の存在や動きを感じ、環境との相互作用を認識することが重要です。これにより、次の段階である生活リズムの確立や社会適応への準備へと繋がっていきます。
選択肢ごとの解説
- 1. 急性期から亜急性期にかけての治療目標であり、回復期前期では休息だけではなく、次の段階へ移行するための活動が求められます。正しくは:急性期における不眠や興奮がある場合に、十分な休息を確保し精神的な安定を図る。選びやすい理由:精神疾患全般において休息は重要であるため、一見正しいように見えるかもしれませんが、回復期前期の段階では次のステップへ進むための準備がより重要になります。混同注意:急性期や亜急性期における休息の必要性と、回復期における活動性の向上・社会復帰準備の段階を混同しやすいです。
- 2. これは回復期後期から社会復帰期にかけての目標であり、回復期前期ではまだ現実感の回復が始まったばかりで、その前の段階の準備が必要です。正しくは:回復期後期から社会復帰期において、具体的な社会生活や就労・就学に向けた準備を進める。選びやすい理由:「現実感の回復」というキーワードから、最終的な社会復帰を連想しやすいため選択してしまいがちです。混同注意:回復期前期(初期の現実感回復)と回復期後期(社会適応準備)の段階を混同しやすいです。
- 3. これは回復期中期から後期にかけての目標であり、回復期前期ではその土台となる身体感覚の回復や自己認識の再構築が優先されます。正しくは:回復期中期から後期において、生活リズムを整え、日中の活動性を高めるための支援を行う。選びやすい理由:精神疾患患者にとって生活リズムの安定は非常に重要であるため、適切な目標に見えますが、回復期前期の初期段階としては少し早い目標設定です。混同注意:回復期全体で共通する生活リズムの重要性と、回復期前期におけるより基礎的な感覚・自己認識の回復という段階的な目標を混同しやすいです。
- 4. 正解。回復期前期では、急性期・亜急性期の混乱から解放され、自己の身体や周囲との境界があいまいになった状態から、自身の身体や環境への認識を取り戻すことが重要な目標となります。活動を通して身体感覚を取り戻すことは、現実感を再認識し、次のステップへ進むための基礎となります。正しくは:正しい選択肢のため修正不要です。選びやすい理由:正しい選択肢です。混同注意:正しい選択肢です。
- 5. 対人交流技能の改善・習得は、回復期中期から後期にかけての目標であり、回復期前期ではまず自己の身体感覚や現実感を安定させることが優先されます。正しくは:回復期中期から後期において、安定した精神状態で他者との交流を深め、円滑な対人関係を築くための技能を身につける。選びやすい理由:精神疾患では対人関係の問題が生じやすいため、この目標も重要に見えますが、回復期前期ではまだ基礎的な自己認識の回復が先です。混同注意:回復期全体で重要な対人交流の課題と、回復期前期のより基礎的な自己認識や身体感覚の回復の段階を混同しやすいです。
国試ポイント
統合失調症の各病期(急性期、亜急性期、回復期前期、回復期後期、社会復帰期)における作業療法の目標の違いが問われています。特に回復期前期の「現実感が少し回復し始めた段階」というキーワードから、その時期に最も適切な基礎的な目標を見極める力が試されます。
混同注意
各病期の目標は連続しており、完全に区別できるわけではありませんが、問題文のキーワード「回復期前期」「現実感が少し回復し始めた段階」から、その時期に最も根源的かつ初期的な介入目標が何であるかを判断する必要があります。休息援助は急性期、社会生活リズムは回復期中期以降、社会適応準備は回復期後期以降の目標と混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
この論点が出題された場合、まず問題文の病期(例:急性期、回復期前期、社会復帰期など)と、その病期に特有の患者の状態(例:興奮状態、現実感の喪失、意欲低下、社会復帰意欲など)を正確に把握します。次に、選択肢がその病期と患者の状態に合致する最も基礎的かつ優先順位の高い目標であるかを確認します。特に、より初期の段階か、より進んだ段階かの区別が重要です。
関連知識
統合失調症の病期分類と、それぞれの病期における治療や作業療法の目標(例:急性期:休息、安静、薬物療法への導入、病状の説明。回復期:病識の確立、生活技能の習得、社会復帰準備、再発予防)。また、自己身体感覚や自己認識が精神疾患、特に統合失調症においてどのように障害されるか、そしてそれが回復していく過程についても理解していると良いでしょう。