23歳の男性。高校卒業後、公務員として働いていた21歳時に統合失調症を発症したため退職し、入院した。退院後は家業を手伝っていたが、命令的内容の幻聴によって3日間放浪したため、2度目の入院となった。1か月後に退院し、実家からデイケアに通い始めた。この時点で把握すべき情報として最も重要なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
統合失調症の症状は、患者の日常生活機能に直接的かつ甚大な影響を及ぼします。本症例では、命令的な幻聴により「3日間自宅を離れてさまよい歩いた」という具体的なエピソードがあり、これは精神症状が患者の生活行動に直接影響を与えていることを示しています。退院直後のデイケア通所開始という状況において、再燃リスクを低減し安定した生活を送るためには、現在の精神症状がどのような生活上の困難を引き起こしているかを詳細に把握し、それに対する個別的な支援計画を立てることが最も重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. 認知機能の把握は重要ですが、命令的な幻聴による徘徊という、より直接的かつ緊急性の高い精神症状の生活への影響の把握に劣ります。特に退院直後で症状による問題行動が顕在化している状況では、まず症状そのものとそれが引き起こす生活上の問題に焦点を当てるべきです。正しくは:認知機能の評価は、精神症状が安定し、より長期的なリハビリテーションや社会復帰を支援する段階で重要度が増します。選びやすい理由:統合失調症では認知機能障害が見られることが多く、社会機能への影響も大きいとされているため、重要視されがちです。混同注意:精神症状そのものと、それが間接的に引き起こす認知機能低下。
- 2. 対人関係は社会生活を送る上で重要ですが、命令的な幻聴による「3日間自宅を離れてさまよい歩いた」というエピソードから、まず精神症状が生活に与える直接的な影響を把握し、安定させることが優先されます。対人関係の改善は、症状の安定があってこそ進めやすくなります。正しくは:対人関係の評価は、症状が安定し、社会参加を目指す段階で重要度が増します。選びやすい理由:統合失調症患者は対人関係が苦手な場合が多く、孤立しやすいため、これを重要視する傾向があります。混同注意:精神症状そのものと、それが間接的に影響する社会機能(対人関係)。
- 3. 余暇の過ごし方は生活の質を高める上で重要ですが、精神症状が不安定で命令的な幻聴によって徘徊する状態では、まず症状の安定とそれが引き起こす生活上の問題の解決が優先されます。余暇活動は、症状が安定し、生活基盤が確立された後に検討されるべき課題です。正しくは:余暇の過ごし方の評価は、精神症状が安定し、生活の質の向上を目指す段階で重要度が増します。選びやすい理由:生活の質の向上やストレス軽減の観点から、余暇活動の充実は重要だと考えられがちです。混同注意:生活基盤の安定と、QOL向上を目指す介入の順序。
- 4. 就労に対する希望は社会復帰の重要な側面ですが、本症例では「命令的な幻聴のために3日間自宅を離れてさまよい歩いた」という、症状が生活に与える重大な影響が直近で発生しています。まずは精神症状の安定を図り、生活への影響を最小限に抑えることが就労支援の前提となります。正しくは:就労に対する希望の把握と支援は、精神症状が安定し、日常生活が自律的に送れるようになった段階で本格的に行われるべきです。選びやすい理由:社会復帰や自立生活支援の重要な目標として、就労が挙げられるため、重要視されやすいです。混同注意:症状の安定化という緊急性の高い介入と、社会復帰という長期的な目標。
- 5. 正解。本症例では、命令的な幻聴により「3日間自宅を離れてさまよい歩いた」という具体的な行動障害が示されており、精神症状が患者の生活に直接的かつ重大な影響を与えていることが明確です。退院後の支援において、この精神症状がどのような生活上の困難を引き起こしているかを詳細に把握し、再燃・再入院を防ぎ、安定した生活を送るための支援計画を立てることが最も重要です。症状の生活への影響を把握することは、個別化された支援計画の立案の第一歩となります。選びやすい理由:精神疾患患者支援の根幹であるため、この選択肢が最も根本的かつ包括的な情報把握の必要性を示しているため、選びやすいです。
国試ポイント
精神疾患患者の支援において、精神症状が実際の生活機能に与える影響を多角的に評価することの重要性。
混同注意
精神症状の評価と、認知機能や対人関係などの他の生活機能評価は、いずれも重要ですが、精神症状が生活に直接的な危機的影響を及ぼしている場合は、その把握が最優先となります。特に再燃・再入院直後という状況では、症状の安定が生活基盤の再構築の前提となります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症例が出た場合、精神症状が具体的な生活上の問題行動(例: 徘徊、自傷、他害、服薬拒否)に結びついている記述があるかを確認し、その影響の把握を最優先と判断する。
関連知識
統合失調症の陽性症状(幻覚、妄想)や陰性症状(意欲低下、感情鈍麻)が、就労、社会参加、日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)にどのように影響するかは、個別化された支援計画の策定に不可欠です。また、病識の有無や服薬アドヒアランスも精神症状の安定に大きく寄与します。