45歳の男性。統合失調症。25年間の入院の後、退院してグループホームに入居することになった。作業療法士は患者の強みとしての性格、才能、希望、環境について、日常生活、経済的事項、仕事などの項目に分けて本人と一緒に確認の上文章化し、患者の言葉を用いて退院後の目標を立てた。本アセスメントの根拠となるモデルはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
ストレングスモデルは、クライエントの病理や問題点ではなく、その人が持つ潜在的な力や資源、ポジティブな側面(強み)に焦点を当て、それを最大限に引き出して生活課題の解決や目標達成を目指す支援モデルです。事例では、患者の性格、才能、希望、環境といった「強み」を作業療法士が本人と一緒に確認し、それを基盤に退院後の目標を立てており、これはストレングスモデルの核心的なアプローチと一致します。
選択肢ごとの解説
- 1. ICF(国際生活機能分類)モデルは、健康状態、心身機能・身体構造、活動、参加、環境因子、個人因子といった多角的な視点から人の生活機能と障害を記述するフレームワークですが、「強み」に焦点を当てて本人と協働で目標設定を行うというアプローチは、その中心的な概念ではありません。正しくは:ICFは生活機能の全体像を記述するためのものであり、本人の「強み」を基盤に支援計画を立てることを直接的に意図していません。選びやすい理由:包括的な視点であるため、一見合っているように見えるかもしれません。混同注意:患者中心の視点と混同しやすいですが、ICFは強みだけでなく、機能障害や活動制限も客観的に記述する分類です。
- 2. 作業適応モデルは、人が環境に適応していく過程で、作業への適応能力(適応性)と環境の要求との相互作用に焦点を当てます。このモデルもクライエント中心ですが、提示された事例のように「強み」を明確に抽出し、それを基盤に目標を立てるという側面が最優先されるわけではありません。正しくは:作業適応モデルは、作業への適応過程における「適応性」に重点を置きます。本人の「強み」を最大限に引き出すというよりは、適応行動を促すための介入を重視します。選びやすい理由:クライエントが環境に適応するという文脈で、関連性があるように見えるかもしれません。混同注意:適応という言葉から、クライエントの成功を支援するものと捉えがちですが、強み自体を核とするものではありません。
- 3. 人間作業モデル(MOHO)は、人間を作業をする存在として捉え、意志、習慣化、遂行能力という3つの要素とその相互作用が作業行動にどう影響するかを重視します。これもクライエント中心のモデルですが、直接的に「強み」を抽出・活用することに特化したモデルではありません。正しくは:人間作業モデルは、クライエントの作業に対する意志、習慣、遂行能力の側面から評価を行い、作業遂行を促進します。本人のポジティブな特性に焦点を当てること自体が主眼ではありません。選びやすい理由:作業療法における代表的なモデルであり、クライエントの主体性を尊重する点で関連があるように思えます。混同注意:作業遂行の改善を目指すモデルであるため、広義では強みも活用されますが、ストレングスモデルのように強みそのものを中心に据えるものではありません。
- 4. 正解。ストレングスモデルは、クライエントの困難や病理に焦点を当てるのではなく、その人が持つ能力、才能、興味、希望、資源(環境含む)といった「強み」を積極的に見出し、それを活用して目標達成や生活の質向上を目指すアプローチです。この事例では、患者の性格、才能、希望、環境といった強みを具体的に洗い出し、それを基盤に目標を立てているため、ストレングスモデルの考え方と完全に一致します。
- 5. CMOP(カナダ作業遂行モデル)は、人の作業遂行に影響を与える3つの要素(人、作業、環境)と、それらを統合するスピリチュアリティ(精神性)を重視します。クライエント中心のアプローチですが、事例のように「強み」を主眼に置いてそれを抽出し、目標設定の核とすることはCMOPの直接的な特徴ではありません。正しくは:CMOPは、クライエントの作業遂行を妨げる要因や、クライエントが価値を置く作業活動、その背景にある精神性に焦点を当て、バランスの取れた作業遂行を支援します。選びやすい理由:クライエント中心の実践を重視する点で、このモデルも当てはまりそうだと感じるかもしれません。混同注意:クライエント中心性や作業遂行の概念は共通しますが、強みに特化したアセスメントの視点は異なります。
国試ポイント
作業療法モデルに関する知識、特に各モデルの核心的な考え方やアプローチの明確な区別が問われます。具体的な介入事例から、その背景にある理論モデルを正確に特定できるかが重要です。特に、クライエント中心のアプローチの中でも「強み」に焦点を当てるという特徴的な記述を見逃さないことがポイントです。
混同注意
CMOP、人間作業モデル、ICFといったクライエント中心の包括的な視点を持つモデルと混同しやすいですが、ストレングスモデルは特に「強み」の発見と活用に特化している点が異なります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、まず設問文中で「クライエントのポジティブな側面」「潜在能力」「資源」「希望」といった「強み」を指すキーワードが用いられているかを最初に確認します。その上で、目標設定がその「強み」を活かす方向でなされているかを見極めることで、ストレングスモデルを適切に選択できるでしょう。
関連知識
ストレングスモデルは、特に精神科リハビリテーションの分野で広く活用されています。クライエントが抱える課題だけでなく、成功体験や潜在能力に着目し、エンパワメントを促すことで、自己肯定感を高め、主体的な生活再建を支援します。他のモデルとの比較において、どの側面に最も焦点を当てているかを理解することが重要です。