22歳の男性。職場でケアレスミスがあまりにも多いため、産業医の勧めで精神科を受診した。母親の話によると、幼少時から落ち着きがなく、小学校の担任から「人の話を聞いていない」、「順番を守れない」、「隣の子にちょっかいを出す」などと注意されたことがあり、大学でも提出物の締め切りを守れないなどといった問題から成績は悪かった。この患者に薬物療法を行う場合、最も適切と思われる向精神薬はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
この症例は、幼少期からの不注意(人の話を聞いていない、ケアレスミス、提出物の締め切りを守れない)と多動・衝動性(落ち着きがない、順番を守れない、ちょっかいを出す)が持続していることから、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の診断に合致します。ADHDの薬物療法における第一選択薬は精神刺激薬(例:メチルフェニデート塩酸塩、アトモキセチン、グアンファシンなど、本選択肢では精神刺激薬として包括されている)であり、これらは脳内のドーパミンやノルアドレナリンの機能を調整し、集中力や行動制御能力を高める効果があります。
選択肢ごとの解説
- 1. この患者の症状は主に注意欠陥や多動性に関連しており、双極性障害などの気分変動を特徴とする疾患に用いられる気分安定薬は第一選択薬ではありません。正しくは:主に双極性障害やてんかんの治療に用いられます。選びやすい理由:精神科領域の薬であるため、知識が曖昧だと選びやすいかもしれません。混同注意:統合失調症やうつ病など、他の精神疾患の治療薬と混同しやすいです。
- 2. 患者の主訴は不注意、多動性、衝動性であり、うつ病や不安障害に用いられる抗うつ薬は第一選択薬ではありません。ただし、ADHDにうつ病が併存する場合には考慮されることがあります。正しくは:主にうつ病や不安障害の治療に用いられます。選びやすい理由:ADHD患者は抑うつ症状を併発することがあるため、迷う可能性があります。混同注意:抗不安薬や気分安定薬など、精神科で広く使われる他の薬効群と混同しやすいです。
- 3. 患者の症状は幻覚や妄想といった精神病症状ではなく、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の特徴を示しており、統合失調症などに用いられる抗精神病薬は不適切です。正しくは:主に統合失調症や躁病、一部の重度な行動障害の治療に用いられます。選びやすい理由:「精神科」というキーワードから、精神疾患全般に効くという漠然としたイメージで選んでしまうかもしれません。混同注意:他の向精神薬全般、特に気分安定薬と混同しやすいです。
- 4. 患者の症状は不注意や多動性・衝動性であり、不安症状が主ではないため、不安障害や不眠症に用いられる抗不安薬は第一選択薬ではありません。対症療法的に用いられることはありますが、根本治療にはなりません。正しくは:主に不安障害やパニック障害、不眠症の治療に用いられます。選びやすい理由:多動や衝動性からくる落ち着きのなさや不安感を軽減する目的で、一時的に使われることがあるため、迷う可能性があります。混同注意:抗うつ薬や精神刺激薬と混同しやすいです。
- 5. 正解。記述された「ケアレスミスの多さ」「落ち着きがない」「人の話を聞いていない」「順番を守れない」「ちょっかいを出す」「提出物の締め切りを守れない」といった幼少期からの症状は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の典型的な特徴です。ADHDの薬物療法において、精神刺激薬(例:メチルフェニデート、アンフェタミン類)は第一選択薬として推奨されており、不注意や多動性、衝動性を改善する効果が期待されます。選びやすい理由:その作用機序から「刺激薬=興奮を助長する」と誤解し、多動な患者には不適切だと考えてしまう受験生もいるかもしれません。しかし、ADHDの脳内の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン)の機能不全を補うことで、結果的に集中力向上や多動・衝動性の抑制に繋がります。混同注意:抗うつ薬や抗不安薬など、精神科で広く使われる他の薬効群と混同しやすいです。
国試ポイント
ADHDの主要症状と、その薬物療法における第一選択薬(精神刺激薬)の知識が問われています。各精神疾患の代表的な症状と、それに対応する薬物の種類を正確に理解しているかが重要です。
混同注意
精神刺激薬は名前から「興奮させる薬」と誤解されがちですが、ADHDの治療においては、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで、不注意や多動・衝動性を抑制する効果を発揮します。この点が混同しやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
同様の症例問題が出た場合、まず提示された症状から疾患を特定し、その疾患に対する標準的な薬物療法を確認します。特に第一選択薬の知識は必須です。
関連知識
ADHDの診断基準(DSM-5など)、成人期ADHDの症状の特徴、ADHD治療薬の種類(非刺激性薬も含む)とその作用機序、またADHDと併存しやすい精神疾患(うつ病、不安障害など)とその対応についても理解しておくことが望ましいです。