45歳の男性。統合失調症。20年間の入院の後、退院してグループホームに入居することになった。作業療法士は患者の強みとしての性格、才能、希望、環境について、日常生活、経済的事項、仕事などの項目に分けて本人と一緒に確認・文章化し、患者の言葉を用いて退院後の目標を立てた。本アセスメントの根拠となるモデルはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
本事例では、作業療法士が患者の「強み」(性格、才能、希望、環境)に焦点を当て、それを基に日常生活、経済的事項、仕事などの具体的な目標を本人と共に設定しています。これはまさに、クライアントの問題点や欠点ではなく、その人固有の強みや資源に着目し、それを最大限に活用して回復や目標達成を支援するというストレングスモデルの核心的な考え方と一致します。
選択肢ごとの解説
- 1. ICFモデルは健康状態、心身機能・身体構造、活動、参加、環境因子、個人因子といった多角的な視点から人の健康状態を記述するフレームワークですが、本事例のように個人の「強み」に焦点を当てて目標設定を行うアプローチとは直接的に合致しません。正しくは:ICFは健康と障害の包括的な理解を目的とするモデルであり、強みに特化したアセスメントとは異なります。選びやすい理由:多角的な視点で患者を理解するという点で共通点があるため、選択肢として魅力的かもしれません。混同注意:患者の全体像を捉えるモデルとして、ICFとストレングスモデルが混同されることがあります。ICFは記述フレームワーク、ストレングスモデルは介入アプローチの基盤です。
- 2. 人間作業モデル(MOHO)は、人間を「意欲」「習慣化」「遂行能力」の相互作用によって作業行動を形成する存在と捉え、作業行動の理解と変化を促すための理論的枠組みですが、本事例のように特に個人の「強み」を引き出し、それを基盤に目標を立てるというアプローチとはやや異なります。正しくは:人間作業モデルは人間の作業参加を理解するための概念的な枠組みであり、個人の強みを特定し活用することに特化したモデルではありません。選びやすい理由:作業療法士が関わるモデルであるため、選択肢として魅力的に映るかもしれません。混同注意:作業療法における主要な理論モデルであるため、他のアセスメントモデルと混同しやすいです。
- 3. 正解。ストレングスモデルは、援助を受ける人の抱える問題や欠点ではなく、その人の「強み」(性格、才能、希望、環境資源など)に焦点を当て、それらを最大限に活用して目標達成やQOL向上を目指すアプローチです。本事例では、患者の強みを多方面から確認し、それに基づいて目標を設定しているため、このモデルが根拠となります。正しくは:提示された事例は、まさにストレングスモデルの考え方を具体的に示しています。選びやすい理由:患者のポジティブな側面に注目するという点で、直感的に理解しやすいです。混同注意:他の一般的な作業療法のモデルと異なり、特定の介入アプローチを強調するモデルであるため、その特性を理解している必要があります。
- 4. 脆弱性-ストレスモデルは、精神疾患の発症や再発を説明するモデルで、個人の脆弱性と環境からのストレス要因が相互作用することで病態が現れると考えます。これは病態理解のモデルであり、個人の強みを活用して目標を設定するアセスメントの根拠としては適切ではありません。正しくは:脆弱性-ストレスモデルは精神疾患の病態や再発リスクを説明するモデルであり、アセスメントの焦点が異なります。選びやすい理由:統合失調症の事例であるため、精神疾患に関するモデルを選ぶ心理が働くかもしれません。混同注意:精神疾患に関するモデルであるため、精神科領域で使われる他のモデルと混同しやすいです。病態理解と介入アプローチの基盤の違いを区別する必要があります。
- 5. CMOP-Eは、人、作業、環境の相互作用を重視し、クライアント中心の作業療法を提唱するモデルです。人の中心に「スピリチュアリティ」を置き、作業遂行と作業参加を重視しますが、本事例のように明確に「強み」という言葉を用いてそれに焦点を当てたアセスメントを直接的に根拠づけるものではありません。正しくは:CMOP-Eはクライアント中心の実践を重視しますが、特に個人の強みを引き出すことに特化したモデルではありません。選びやすい理由:クライアント中心の視点があるため、強みのアセスメントと関連付けて考えてしまう可能性があります。混同注意:クライアント中心のアプローチという点で、ストレングスモデルと混同しやすいですが、CMOP-Eは作業遂行と参加に焦点を当て、ストレングスモデルは強みの発見と活用に焦点を当てます。
国試ポイント
精神科作業療法におけるアセスメントモデルや介入アプローチの基本的な理解が問われています。特に、単に疾患の理解だけでなく、クライアントのポジティブな側面や資源に焦点を当てるアプローチの概念を正確に把握しているかどうかが重要です。
混同注意
精神疾患に関するモデル(脆弱性-ストレスモデル)や、作業療法における包括的なモデル(ICF、人間作業モデル、CMOP-E)と混同しやすいですが、本質的に「強み」に特化したアセスメントである点を捉えることがポイントです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず設問文中で「強み」「資源」「希望」「能力」といったポジティブな側面に焦点を当てている記述があるかを注意深く確認する。それがアセスメントや目標設定の基盤となっている場合は、ストレングスモデルが正答となる可能性が高い。また、各モデルの定義と、そのモデルがどのような状況や目的で適用されるのかを正確に理解しておくことが重要です。
関連知識
ストレングスモデルは、ソーシャルワークや精神科リハビリテーションの分野で広く用いられています。クライアント中心の支援、リカバリー志向のアプローチと関連が深いです。回復のプロセスにおいて、個人の内的な強みや環境からの支援が重要な役割を果たすと考えられています。