69歳の男性。慢性心不全。心肺運動負荷試験の結果を受け、主治医から3METsまでの運動制限の指示があった。選択する活動で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
慢性心不全患者の運動指導では、心臓への負担を考慮し、個々のMETs制限内で安全な活動を選択することが重要です。METs(安静時エネルギー消費量の3.5倍)は比較的低強度の活動を指し、家の中での軽い清掃活動はその範囲内であると判断されます。一方、家具の運搬、ペンキ塗り、階段昇降、速歩きは、一般的にMETsを超える中〜高強度の活動であり、心不全患者には負荷が大きすぎると考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。METs(安静時の約3.5倍のエネルギー消費量)は、慢性心不全患者にとって比較的安全に実施できる運動強度の一つの目安とされます。家の中での軽い掃除は、一般的にMETs程度の活動であり、心臓への負担が過度にならないため、適切な選択肢です。
- 2. 重い家具の運搬は、METsをはるかに超える運動強度(一般的に5METs以上)を伴い、心臓に非常に大きな負担をかけるため、慢性心不全患者には不適切です。正しくは:この活動は慢性心不全患者には運動強度が高すぎるため、避けるべきです。選びやすい理由:一見、日常活動のように思えるかもしれませんが、心不全患者にとっては危険な負荷となります。混同注意:軽い家事と重労働の区別が曖昧だと誤って選んでしまうかもしれません。
- 3. ペンキ塗りは、腕を上げたり身体を動かしたりする動作が多く、METsを超える中〜高強度の活動(一般的に3〜6METs)に相当するため、心不全患者には負荷が大きい可能性があります。正しくは:この活動はMETsを超える場合があり、心不全患者にとってはリスクが高いです。選びやすい理由:比較的ゆっくりとした作業に見えるかもしれませんが、持続的な腕の挙上や体幹の動きは心臓に負担をかけます。混同注意:『軽いDIY』と『本格的な塗装作業』の区別がついていないと、誤解する可能性があります。
- 4. 階段を上る動作、特に急な階段を上ることは、METsを超える高強度の活動(一般的に4〜8METs)であり、心臓に大きな負担をかけ、心不全の悪化を招くリスクがあります。正しくは:階段昇降は心不全患者にとって運動強度が高すぎるため、避けるべき活動です。選びやすい理由:日常生活でよく行われる動作ですが、心不全患者にとっては運動制限の対象となります。混同注意:平地の歩行と階段昇降の運動強度の違いを認識していないと誤解する可能性があります。
- 5. 分速107m(時速約6.4km)の歩行は、METsをはるかに超える非常に速いペースであり、高強度の運動(一般的に5〜7METs)に分類されます。慢性心不全患者には過度な負荷となります。正しくは:この速度での歩行は運動強度が高すぎるため、心不全患者には推奨されません。よりゆっくりとしたペースでの歩行が適切です。選びやすい理由:ウォーキングは心臓リハビリテーションの一環として推奨されますが、その『速度』が重要であり、速すぎるウォーキングは危険です。混同注意:ウォーキング全般が推奨される活動だと誤解し、速度の重要性を見落とす可能性があります。
国試ポイント
慢性心不全患者に対する運動処方、特にMETsと具体的な活動内容の関連性を理解しているかどうかが問われる問題です。各活動のMETs値の目安を把握し、患者の状態に応じた適切な運動指導ができる知識が求められます。
混同注意
日常生活活動(ADL)の中にも、運動強度が高いものと低いものが混在しているため、それぞれの活動の具体的なエネルギー消費量(METs)の目安を正確に理解していないと誤った選択をしてしまう可能性があります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず指示されたMETs値を確認し、各選択肢の活動がそのMETs値の範囲内であるか、または明らかに超えているかを判断します。特に『〜まで』という制限がある場合は、その上限を超えない活動を選びます。具体的な活動のMETs値の知識が必須となります。
関連知識
METsと具体的な活動の対応表(例:入浴、着替え、食事、散歩、ラジオ体操など)、心臓リハビリテーションにおける運動強度の設定方法(Borgスケール、心拍数など)、慢性心不全の病態と運動が心臓に与える影響。