統合失調症患者。会話の内容がずれ、自分の考えに偏った一方的な発言ばかりで、相手の立場になって考えることができない。障害が疑われるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
統合失調症において、会話の噛み合わなさ、自己中心的で一方的な発言、他者の視点理解の困難さは、他者の意図や感情を推測し、社会的状況を適切に解釈・反応する能力である社会的認知の障害が主に考えられます。これは心の理論(Theory of Mind)の障害とも関連します。
選択肢ごとの解説
- 1. 遂行機能は目標設定、計画立案、実行、問題解決などに関わる機能ですが、本症例の「会話が噛み合わない」「他者の視点に立てない」といった特徴は、直接的には遂行機能の中心的な障害ではありません。正しくは:この場合は、目標設定や計画の困難、あるいは一連の行動を順序立てて行うことが難しいといった症状が主に見られます。選びやすい理由:統合失調症では遂行機能も障害されやすいため、関連性が高いと感じて選択肢として選びやすいかもしれません。混同注意:社会的認知障害と遂行機能障害は、どちらも統合失調症でみられる認知機能障害であるため混同しやすいです。
- 2. 行動制御は衝動性や過活動の抑制、適切な行動選択などに関わる機能ですが、本症例の会話の特性は行動制御の直接的な障害というよりは、他者理解の困難に起因します。正しくは:行動制御の障害であれば、衝動的な行動、座っていられない、多動といった症状が前面に出ることが考えられます。選びやすい理由:自己中心的で一方的な発言を「行動制御ができていない」と解釈して選択してしまう可能性があります。混同注意:社会的認知障害と行動制御障害は、どちらも対人関係の問題を引き起こす可能性があるため混同しやすいです。
- 3. 正解。社会的認知とは、他者の感情、意図、信念を推測し、社会的状況を解釈して適切な行動を選択する能力です。会話が噛み合わず、自己中心的で一方的な発言が多く、他者の視点に立って物事を考えるのが難しいという状況は、まさに社会的認知機能の障害を示唆しています。選びやすい理由:問題文の症状と最も直接的に合致するため、正答として選びやすいです。混同注意:遂行機能や注意機能など、他の認知機能障害と混同されることがありますが、社会的相互作用の困難が中心の場合は社会的認知が最も適切です。
- 4. 注意の選択性は、多数の情報の中から特定の情報に焦点を当てて処理する能力です。本症例の会話の特性は、情報選択の困難というよりは、他者の心理状態や意図の理解の困難が中心です。正しくは:注意の選択性障害であれば、関係ない刺激にすぐに気が散る、特定の話題に集中できない、といった症状が主に見られます。選びやすい理由:会話が「噛み合わない」という表現から、相手の言葉に適切に注意を向けられていないと誤解して選択する可能性があります。混同注意:社会的認知障害と注意機能障害は、どちらも統合失調症でみられる認知機能障害であるため混同しやすいです。
- 5. プライミングとは、先行する刺激(プライマー)の提示によって、それに続く刺激の処理が促進される現象であり、記憶の無意識的な側面を指します。本症例の症状とは直接的な関連性が低いです。正しくは:プライミングの障害であれば、以前に見た、聞いた情報が、後の課題に影響を及ぼしにくいといった形で現れる可能性があります。選びやすい理由:認知機能の専門用語として知っていても、具体的な症例との関連性が不明確な場合に、選択肢として残ってしまう可能性があります。混同注意:記憶全般や、その他の認知機能障害と混同される可能性がありますが、プライミングは非常に特定の記憶現象を指します。
国試ポイント
統合失調症の症状と関連する認知機能障害(特に社会的認知)を理解し、区別できるようにすることが重要です。
混同注意
遂行機能障害(目標設定、計画、実行、評価の障害)や注意機能障害(選択性、持続性、転換性など)と混同しやすいですが、本症例では他者との相互作用における困難が中心であり、社会的認知の障害が最も直接的です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、「他者の視点理解の困難」「会話の相互作用の障害」「社会的状況の不適切解釈」といったキーワードがあれば、社会的認知障害を第一に判断します。
関連知識
統合失調症では、陽性症状(幻覚・妄想)、陰性症状(意欲低下、感情鈍麻)、認知機能障害(記憶、注意、遂行機能、社会的認知など)がみられます。特に社会的認知の障害は社会機能予後と強く関連するとされています。