せん妄の対応で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
せん妄は、身体的な疾患や薬剤の副作用など、特定の原因によって引き起こされる急性発症の意識障害および認知機能障害です。そのため、せん妄の根本的な治療には、その原因となっている身体疾患を特定し、同時に治療を進めることが不可欠です。例えば、感染症による発熱があれば抗生物質投与、脱水があれば補液、薬剤によるものであれば薬剤調整などを行います。
選択肢ごとの解説
- 1. せん妄患者の感覚を完全に遮断すると、かえって見当識障害や不安が増強し、せん妄を悪化させる可能性があります。正しくは:適切な感覚刺激(例えば、時計、カレンダー、家族の写真、穏やかな声かけなど)を提供し、見当識を保つよう努めます。過剰な刺激は避けるべきですが、完全に遮断するのは不適切です。選びやすい理由:興奮や混乱を鎮めるために、外部からの刺激を減らすという発想から、刺激遮断が効果的だと誤解する可能性があります。混同注意:精神症状や認知症患者における過剰な刺激の低減(刺激コントロール)と混同しやすいですが、せん妄の場合はむしろ適度な感覚刺激による見当識の維持が重要です。
- 2. せん妄に伴う興奮、幻覚、妄想などの精神症状が強い場合、対症療法として抗精神病薬が有効な場合があります。特に、非薬物療法で対応が困難な場合に考慮されます。正しくは:せん妄に伴う精神症状(興奮、幻覚、妄想など)が強い場合、症状緩和のために抗精神病薬が処方されることがあります。ただし、あくまで対症療法であり、副作用には注意が必要です。選びやすい理由:せん妄の根本原因は身体疾患にあるため、精神科の薬は直接的な治療にならないという誤解から、無効だと考えてしまうかもしれません。混同注意:せん妄の**原因疾患**に対する根本治療と、せん妄の**症状**に対する対症療法とを混同しやすいです。
- 3. 身体拘束は、患者の尊厳を侵害し、せん妄状態を悪化させる可能性があります。転倒や自己抜去などの危険がある場合に、他のあらゆる手段を試した上で、やむを得ない場合に最小限かつ一時的に適用されるべき最終手段です。正しくは:身体拘束は極力避け、非薬物療法や環境調整、薬物療法などによって興奮を鎮めることを優先します。最終手段として身体拘束を行う場合でも、その必要性を慎重に評価し、最小限の期間と方法で実施し、定期的な解除と観察が必要です。選びやすい理由:興奮している患者の安全確保や治療の中断を防ぐために、身体拘束が有効だと考えがちです。混同注意:生命の危険や重篤な損傷のリスクがある場合の緊急避難的な身体拘束と、一般的なせん妄の対応手段とを混同しやすいです。
- 4. 強い口調は、せん妄患者の不安や混乱をさらに増大させ、興奮を悪化させる可能性があります。威圧的な態度は信頼関係を損ない、協力を得にくくします。正しくは:興奮している場合は、まず患者の安全を確保し、落ち着いた穏やかな声で、ゆっくりと分かりやすい言葉で話しかけます。安心できる環境を提供し、刺激を最小限に抑えるよう努めます。選びやすい理由:混乱している患者にはっきりとした指示を出す必要がある、あるいは強い口調で抑制できるという誤解から選んでしまうかもしれません。混同注意:認知症患者への対応における「現実への働きかけ(リアリティオリエンテーション)」と、興奮状態にあるせん妄患者への声かけの仕方を混同しやすいです。興奮時には、強い口調は逆効果です。
- 5. 正解。せん妄は、感染症、脱水、電解質異常、薬剤の副作用、脳血管障害など、様々な身体疾患が原因となって発症します。原因となる身体疾患を特定し、その治療を並行して行うことが、せん妄の根本的な解決と改善につながる最も重要な対応です。
国試ポイント
せん妄の病態生理と、その治療における基本的な原則(特に原因疾患への対応の重要性)を理解しているかを問う問題です。せん妄と認知症との鑑別、および症状への対症療法と原因療法との区別が重要になります。
混同注意
せん妄と認知症の鑑別(急性発症、変動性、可逆性)、あるいはせん妄の症状に対する対症療法(薬物療法、環境調整)と原因療法を混同しやすい。身体拘束や強い口調での対応が、患者の安全確保や指示理解につながると誤解されやすい点も狙われています。
次に同じ論点が出たら
次にせん妄の問題が出題された場合、その原因が何か、急性発症か慢性進行か、症状の変動性はあるか、そして可逆性があるかといった点に注目して、認知症との鑑別や適切な対応(特に非薬物療法や原因疾患へのアプローチ)を選択できるかどうかが問われるでしょう。
関連知識
せん妄の診断基準(DSM-5など)と主な症状(意識レベルの変化、注意障害、認知機能障害、精神運動性興奮/抑制、睡眠覚醒リズムの障害など)\nせん妄の危険因子(高齢、認知症、重症身体疾患、多剤併用、手術など)\n非薬物療法の重要性(環境調整、見当識の維持、睡眠覚醒リズムの調整、水分・栄養管理など)\n薬物療法の位置づけ(対症療法としての抗精神病薬、ベンゾジアゼピン系の慎重な使用)\nOTとしての関わり(環境調整、活動調整、見当識の確認、安全確保)