心原性脳塞栓症の原因として誤っているのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
三尖弁狭窄症は右心系の血流障害であり、血栓が形成されても主に肺動脈塞栓症の原因となります。脳へ血栓が送られるのは通常、左心系で形成された血栓か、卵円孔開存などを介して右心系から左心系へ移行した血栓です。したがって、三尖弁狭窄症は心原性脳塞栓症の直接的な原因としては適切ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 卵円孔開存は、通常閉鎖しているはずの卵円孔が残存している状態です。これにより、右心系に生じた血栓(特に下肢静脈などから)が、本来肺動脈へ向かうべきところを卵円孔を介して左心系へ直接流入し、全身循環、特に脳へと送られて脳塞栓症を引き起こす可能性があります(奇異性塞栓症)。よって、心原性脳塞栓症の原因となりえます。正しくは:卵円孔開存は奇異性塞栓症の原因となり、心原性脳塞栓症を引き起こす可能性があります。選びやすい理由:卵円孔開存は心臓の構造的な異常ですが、直接血栓を形成する病態ではないため、誤りだと考えるかもしれません。混同注意:奇異性塞栓症のメカニズムと、心臓自体が血栓を形成する病態とを混同することがあります。
- 2. 拡張型心筋症は、心室が拡大し収縮力が低下する病気です。心臓の収縮能が低下すると、心臓内(特に心室)での血液の停滞が生じやすくなり、それが血栓形成のリスクを高めます。形成された血栓が剥がれて脳に運ばれると、脳塞栓症を引き起こします。正しくは:拡張型心筋症は心臓の収縮不全により血液が停滞し、心腔内血栓の形成を促進するため、心原性脳塞栓症の原因となります。選びやすい理由:心筋症は心臓の筋肉の病気であり、不整脈や弁膜症のように直接血栓形成を連想しにくいかもしれませんが、心機能低下による血流うっ滞が重要です。混同注意:心筋症のタイプやその合併症を混同することがあります。
- 3. 正解。三尖弁狭窄症は、右心房と右心室の間にある三尖弁が狭くなる病態です。これにより、血液の流れが主に右心房から右心室へ阻害され、右心房内の圧が上昇します。しかし、この病態自体が脳へ血栓を送る「心原性脳塞栓症」の直接的な原因となることは稀です。脳塞栓症の原因となる血栓は通常、左心系(左心房、左心室、大動脈)で形成されるか、卵円孔開存などを介して右心系から左心系へ移行した血栓です。三尖弁狭窄症では、血栓が形成されても右心系に留まることが多く、肺動脈塞栓症の原因とはなりえますが、脳塞栓症の直接的な原因とはなりにくいです。正しくは:三尖弁狭窄症は主に右心系の血流障害であり、形成される血栓も主に肺動脈塞栓症の原因となります。脳塞栓症の直接的な原因としては稀です。選びやすい理由:他の弁膜症(僧帽弁狭窄症など)が脳塞栓症の原因となることから、三尖弁も同様に血栓の原因となると誤解する可能性があります。混同注意:左心系の弁膜症(僧帽弁狭窄症、大動脈弁狭窄症など)が脳塞栓症の原因となることと、右心系の弁膜症(三尖弁狭窄症、肺動脈弁狭窄症など)の病態を混同することがあります。また、弁膜症=血栓形成リスクが高いという一般論に流されやすいです。
- 4. 慢性心房細動は、心房が不規則に収縮する不整脈です。心房が十分に収縮しないため、心房内(特に左心耳)で血液がよどみ、血栓が形成されやすくなります。この血栓が剥がれて脳に流れると、脳塞栓症の非常に一般的な原因となります。正しくは:慢性心房細動は、心房内の血流停滞により血栓が形成されやすく、心原性脳塞栓症の主要な原因の一つです。選びやすい理由:不整脈の中でも、心房細動が脳塞栓症の最も重要なリスク因子の一つであることを知っていれば、この選択肢を誤りとは考えにくいでしょう。混同注意:心房細動以外の不整脈が脳塞栓症のリスクとなるか否か、あるいは心房細動のどの点が血栓形成に関与するのかを混同することがあります。
- 5. 感染性心内膜炎は、心臓の弁や心内膜に細菌などの感染が起こり、その部位に疣贅(ゆうぜい:菌塊や血栓の塊)が形成される病気です。この疣贅が剥がれ落ちて脳に運ばれると、脳塞栓症(化膿性塞栓症)を引き起こします。また、脳膿瘍の原因ともなりえます。正しくは:感染性心内膜炎では、弁に形成された疣贅が剥がれて脳塞栓症を引き起こすことがあります。選びやすい理由:感染症と血栓形成が直接結びつかないと考えるかもしれませんが、心臓の弁に付着する疣贅が血栓源となることを理解しておく必要があります。混同注意:感染性心内膜炎が全身に及ぼす影響、特に塞栓症のメカニズムについて、単なる炎症反応と混同することがあります。
国試ポイント
心原性脳塞栓症の原因となる心疾患について、左心系と右心系の病態の違いを理解しているかが問われています。特に、血栓が脳に到達するためには左心系を介する必要があるという基本原則が重要です。
混同注意
他の弁膜症(特に僧帽弁狭窄症)と混同しやすいです。僧帽弁狭窄症は左心房の拡大と血流停滞を引き起こし、脳塞栓症の主要な原因となりますが、三尖弁狭窄症は右心系の疾患であり、脳塞栓症の直接的な原因とはなりません。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出た場合は、心原性脳塞栓症の原因となる疾患をすべて列挙できるか、またそれぞれの疾患がどのようなメカニズムで血栓を形成し、脳に到達させるのかを説明できるかを確認すると良いでしょう。特に、左右シャントの有無と脳塞栓症の関係性も重要です。
関連知識
脳塞栓症の原因として、心原性(心臓に由来)、動脈原性(動脈硬化性病変に由来)、その他(奇異性塞栓症、腫瘍塞栓症など)がある。心原性脳塞栓症では、左心系の血栓形成が最も重要である。主な原因疾患には、心房細動、心筋梗塞後の左心室瘤、弁膜症(僧帽弁狭窄症、人工弁など)、感染性心内膜炎、拡張型心筋症、卵円孔開存(奇異性塞栓症)などがある。