58歳の男性。脊髄小脳変性症。脊髄小脳変性症の重症度分類(厚生省、1992)の下肢機能障害Ⅲ度、上肢機能障害Ⅱ度である。脱衣所と洗い場の段差はなく、浴槽は据え置き式で、高さは50 cmであった。住環境整備について誤っているのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
脊髄小脳変性症患者は体幹失調や平衡機能障害があり、狭い空間での方向転換が困難です。開き戸を内開きにすると、浴室内の空間がさらに狭くなり、転倒のリスクが高まるため、適切な住環境整備とは言えません。外開きまたは引き戸が望ましいです。
選択肢ごとの解説
- 1. ベッドAの移動は、生活動線の確保や、患者のADL(特に移乗)のしやすさを考慮すると適切な場合があります。患者が脊髄小脳変性症であるため、転倒リスクを減らし、安定した移乗動作を可能にするための動線確保は重要です。選びやすい理由:ベッドの位置変更は、患者の日常生活動作に大きな影響を与えるため、重要な改善策と判断されやすいです。混同注意:ベッドと部屋全体の動線計画
- 2. 正解。脊髄小脳変性症患者は平衡機能障害があり、特に狭い浴室での方向転換や出入り時に転倒しやすいです。内開きにすると、浴室内の空間が狭くなり、患者が転倒した際にドアが塞がれるリスクも高まります。そのため、開き戸を内開きから内開きに変更することは適切ではありません。外開き、または引き戸が望ましいです。正しくは:開き戸を外開き、または引き戸に変更する。選びやすい理由:内開きにすることで、廊下側のスペースを確保できると誤解することがありますが、浴室内の安全性や介助のしやすさが損なわれるため、不適切です。混同注意:ドアの開閉方向と省スペース化の単純な考え方
- 3. 据え置き式の浴槽の高さが50cmと比較的高い場合、脊髄小脳変性症で下肢機能障害がⅢ度の患者にとって、浴槽への出入りは困難です。浴槽内に浴槽台を設置することで、浴槽の底からの高さを稼ぎ、浴槽縁への乗り越えや浴槽内での立ち座りが安定しやすくなり、転倒リスクを軽減できます。選びやすい理由:浴槽台は、浴槽の出入りを安全にするための一般的な福祉用具であり、直感的に正しいと判断されやすいです。混同注意:浴槽の高さに対する適切な対策
- 4. 脊髄小脳変性症患者は体幹失調や平衡機能障害があるため、洗い場での移動や姿勢保持の際に転倒しやすいです。洗い場の壁に横手すりを設置することで、移動時の支持や立ち座り、身体洗いの際の安定性を確保でき、転倒予防に繋がります。選びやすい理由:手すりの設置は、高齢者や身体機能が低下した患者の転倒予防の基本であるため、正しいと判断されやすいです。混同注意:手すりの種類と適切な設置場所
- 5. 浴槽のEの位置(浴槽の縁に架ける形)にバスボードを設置することで、患者は浴槽の縁に座って安全に浴槽への出入りができるようになります。下肢機能障害がⅢ度の患者にとって、浴槽の高さ50cmを乗り越える際の負担を軽減し、転倒リスクを低減する上で非常に有効な手段です。選びやすい理由:バスボードは、浴槽への出入りを安全に行うための一般的な福祉用具であり、適切な対策として認識されやすいです。混同注意:浴槽の出入りに関する福祉用具
国試ポイント
脊髄小脳変性症患者の身体機能特性(下肢Ⅲ度、上肢Ⅱ度)を考慮した上での、浴室内の動作空間の確保と転倒予防策の検討が国試のポイントです。
混同注意
内開きのドアは、狭い場所での使用において、一見省スペースに見えますが、患者が倒れた際にドアが塞がれるリスクがあるため、避けるべきです。引き戸や外開きのドアは、内部空間を広く保ち、緊急時のアクセスを容易にする点で優れています。
次に同じ論点が出たら
同様の症例が出た場合、患者の身体機能障害の程度と浴室内の具体的なレイアウト(特にドアの開閉方向と浴室内空間の広さ)に着目し、介助や緊急時の対応のしやすさを考慮して判断します。
関連知識
脊髄小脳変性症患者の重症度分類において、下肢機能障害Ⅲ度は『起立は可能であるが、補助具なしには歩行が困難で、介助または監視を要する状態』を指し、上肢機能障害Ⅱ度は『指と手首の運動、または上肢全体に軽度の運動失調があるが、介助なしで食事・更衣が可能』な状態を示します。これらの特性に基づき、浴室のような狭い空間では、転倒予防と動作のしやすさを最優先に考える必要があります。