28歳の男性。統合失調症で6か月前に精神科病院に措置入院歴がある。その後退院し、自治体による退院後支援計画に基づいて外来でフォローされていたが、2か月前から抗精神病薬の服薬が不規則になり、幻聴の増悪がみられた。自傷行為はなく、家族をはじめ周囲の人間に対して手をあげるようなことはないが「薬は飲むな」という幻聴に左右されてこの1週間は全く服薬しておらず、一昨日から一睡もできていない。両親が「担当医に相談しよう」と勧めてなんとか外来受診をさせたが、精神保健指定医から入院を勧められてもかたくなに拒否を続けている。この患者の現在の状態において適切な入院形態はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
この患者は、精神保健指定医による入院勧告がありながらも、本人が入院を拒否しています。しかし、両親が外来受診に協力していることから、保護者(両親)の同意が得られる状況にあると判断できます。また、自傷他害行為は認められないため、措置入院や緊急措置入院の要件は満たしません。幻覚妄想状態により服薬が困難で、不眠も続いていることから、精神医療の介入が必要な状態です。これらの状況を総合すると、精神保健指定医1名以上の診察と保護者の同意による「医療保護入院」が最も適切な入院形態となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 任意入院は患者自身の同意に基づく入院形態であり、本ケースでは患者が入院を強く拒否しているため選択できません。正しくは:任意入院は、患者が入院の必要性を理解し、自らの意思で同意した場合に適用されます。選びやすい理由:精神科医療の基本は患者の自律性を尊重することなので、まず任意入院を検討すべきだと感じるかもしれませんが、現実には患者が入院を拒否しているため不適切です。混同注意:患者の入院拒否の有無
- 2. 応急入院は、急速な精神症状の悪化があり、家族などの同意が得られない緊急時に、72時間以内に限り医師1名の診察と管理者の判断で入院させるものです。本ケースでは、幻聴による服薬拒否と不眠があるものの、ただちに生命の危険が迫るような精神症状の著しい障害は示唆されておらず、また家族(両親)の協力を得られているため、応急入院の要件(家族等の同意が得られない)に合致しません。正しくは:応急入院は、急を要するが家族等の同意が得られない場合に72時間を限度として行われる入院です。選びやすい理由:一睡もできていないなど緊急性を感じる要素があるため、応急入院も選択肢に見えるかもしれませんが、家族の協力が得られている点が異なります。混同注意:緊急性
- 3. 正解。医療保護入院は、精神保健指定医1名以上の診察の結果、入院の必要があると判断され、かつ患者自身は入院に同意しないものの、保護者(原則として家族)の同意がある場合に適用される入院形態です。本ケースでは、精神保健指定医が入院を勧めており(入院の必要性あり)、患者は入院を拒否していますが、両親が受診に付き添い相談していることから、保護者の同意が得られる状況にあるため、この形態が最も適切です。選びやすい理由:患者が入院を拒否しているため、何かしらの強制力が必要だと判断できます。家族の同意というポイントが重要です。混同注意:他の強制入院(措置入院、緊急措置入院)との区別
- 4. 緊急措置入院は、措置入院の緊急版であり、自傷他害のおそれが著しく高い場合に72時間を限度として行われます。本ケースでは、幻聴による服薬拒否と不眠はありますが、自傷行為や他害行為の具体的な記述がなく、『家族をはじめ周囲の人間に対して手をあげるようなことはない』と明記されており、自傷他害のおそれが著しいとは言えないため、緊急措置入院の要件を満たしません。正しくは:緊急措置入院は、自傷他害のおそれが著しいと判断される場合に、72時間を限度として行われる入院です。選びやすい理由:過去に措置入院歴があることや、精神症状が悪化していることから、緊急措置入院が必要だと感じるかもしれませんが、現在の自傷他害のリスクの有無が重要です。混同注意:措置入院
- 5. 医療観察法による入院は、心神喪失または心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った者に対して適用されるものです。本ケースでは、過去に重大な他害行為を起こしたという記述はなく、現在の状況でも自傷他害行為が見られないため、医療観察法の対象ではありません。正しくは:医療観察法による入院は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者が対象となります。選びやすい理由:精神疾患と聞くと、医療観察法を連想するかもしれませんが、その適用要件は重大な他害行為とそれに伴う司法手続きが前提です。混同注意:措置入院、重大な他害行為の有無
国試ポイント
精神科医療における入院形態の判断基準、特に患者の同意の有無、保護者の同意の有無、自傷他害の危険性の有無、緊急性の有無といった要素を正確に理解しているかが問われます。各入院形態の法的要件と適用場面を区別できることが重要です。
混同注意
任意入院、応急入院、医療保護入院、措置入院、緊急措置入院の適用要件の細かい違い。特に、患者の同意の有無、保護者の同意の有無、自傷他害の危険性のレベル。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合は、まず患者本人の入院に対する『同意の有無』を確認します。次に『自傷他害行為の有無と程度』を確認し、最後に『保護者等の同意の有無』と『緊急性』の有無を総合的に判断します。
関連知識
精神保健福祉法における各入院形態(任意入院、医療保護入院、措置入院、緊急措置入院、応急入院)の定義、要件、手続き。精神保健指定医の役割。保護者の定義。