がんの骨転移による症候でないのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
がんの骨転移は、骨を破壊したり、その周囲の組織を圧迫したり、全身性の代謝異常を引き起こしたりすることで様々な症状を呈します。疼痛、脊髄圧迫、病的骨折、高カルシウム血症などは、骨転移の典型的な症状や合併症としてよく知られています。一方、振戦は主に中枢神経系の異常や特定の薬剤によって引き起こされる不随意運動であり、がんの骨転移に直接関連して生じることは通常ありません。したがって、振戦は骨転移の症候としては不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。振戦は主に中枢神経系の障害(パーキンソン病、本態性振戦など)や、薬剤の副作用、甲状腺機能亢進症などによって引き起こされる症状であり、がんの骨転移に直接関連して生じることは通常ありません。骨転移は骨自体の破壊や圧迫、あるいは全身性の代謝異常を引き起こしますが、神経系の運動制御異常である振戦を主症状として引き起こすものではありません。
- 2. 骨転移は、骨膜の伸展、骨内部の神経刺激、病的骨折による不安定性などにより、しばしば強い痛みを引き起こします。これは骨転移の最も一般的な症状の一つです。正しくは:痛みは、骨転移によって非常に多くみられる症状です。選びやすい理由:骨転移と痛みの関連性は広く知られているため、これが正答ではないことは比較的容易に判断できます。しかし、「痛みがない骨転移もあるのでは?」と深読みすると迷うかもしれませんが、設問は「症候でないもの」を問うています。混同注意:慢性的な関節痛や筋骨格系の痛みと混同することがありますが、骨転移による痛みは通常、安静時にも存在し、夜間痛が特徴的であることも多いです。
- 3. 脊椎にがんが転移すると、増大する腫瘍が脊髄や馬尾神経を直接圧迫し、運動麻痺、感覚障害、排泄機能障害などの重篤な神経症状を引き起こすことがあります。これは緊急性が高い合併症です。正しくは:脊髄の圧迫は、脊椎への骨転移によって生じ得る重篤な合併症です。選びやすい理由:症状の重篤さから「癌の骨転移特有の症状ではないのでは?」と考えるかもしれませんが、骨転移の直接的な結果として生じる合併症です。混同注意:脳転移による神経症状と混同することがありますが、脊髄圧迫は脊椎転移に起因する症状です。
- 4. がんの骨転移によって骨がもろくなり(骨溶解や骨形成異常)、通常では骨折しないような軽い外力、あるいは外力なしで骨折することがあります。これを病的骨折と呼び、骨転移の重要な合併症の一つです。正しくは:骨の病的な骨折は、骨転移によって骨が脆弱化することで起こり得ます。選びやすい理由:「骨折」という単語から、外傷によるものと誤解し、「病的な」という修飾語を見落とす可能性があります。混同注意:外傷による一般的な骨折と混同するかもしれませんが、病的骨折は基礎疾患による骨の脆弱性が原因です。
- 5. がん細胞が骨を破壊する際に、骨に含まれるカルシウムが血中に放出され、血中カルシウム濃度が上昇することがあります。これにより、意識障害、倦怠感、悪心、嘔吐、腎機能障害などの症状が現れることがあります。これはがんの骨転移による代表的な代謝性合併症の一つです。正しくは:高カルシウム血症は、骨転移による骨破壊の結果として生じ得る代謝異常です。選びやすい理由:電解質異常のため、直接的な骨の症状ではないと感じるかもしれませんが、骨転移の病態生理の結果として頻繁に発生します。混同注意:副甲状腺機能亢進症による高カルシウム血症と混同することがありますが、病態生理が異なります(骨転移では腫瘍が産生するPTHrPなども関与しますが、骨破壊によるカルシウム遊離が主な要因です)。
国試ポイント
がんの骨転移によって生じる代表的な症状や合併症を正確に理解しているか、またそれらと直接関連のない症状とを区別できるかが問われています。特に、痛みに加えて、脊髄圧迫、病的骨折、高カルシウム血症といった重篤な合併症の知識が重要です。
混同注意
がん自体による全身症状(悪液質、倦怠感など)や、脳転移による神経症状(麻痺、痙攣など)、また他の病態(例えば、副甲状腺機能亢進症による高カルシウム血症、パーキンソン病による振戦など)と、骨転移に特異的な、あるいは強く関連する症状とを混同しないように注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
次にこの論点が出題される場合、骨転移の具体的な好発部位、骨転移の種類(溶骨型、造骨型、混合型)、または各症状のさらに詳しい病態生理や治療法について問われる可能性があります。また、画像診断や病理学的特徴に関連した問題も考えられます。
関連知識
骨転移の好発部位:脊椎、骨盤、大腿骨、肋骨、頭蓋骨など。骨転移の原因となる主な癌:乳癌、前立腺癌、肺癌、腎癌、甲状腺癌など。骨転移の種類:骨溶解型(溶骨型)、骨硬化型(造骨型)、混合型。各症状の詳細:疼痛(転移部位の持続性で、安静時にも出現し、夜間増強することもある)、脊髄圧迫(脊椎転移により、腫瘍が脊髄を圧迫し、急激な神経症状をきたす。緊急治療が必要)、病的骨折(骨の脆弱化により、わずかな外力で生じる)、高カルシウム血症(骨溶解により血中カルシウム濃度が上昇し、意識障害、倦怠感、脱水、腎障害などを引き起こす)。診断:X線、CT、MRI、骨シンチグラフィー、PET-CTなど。治療:放射線治療、薬物療法(ビスホスホネート、デノスマブなど)、手術、化学療法など。