神経因性膀胱のうち低活動性膀胱を呈する疾患はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
糖尿病性自律神経障害は、膀胱の知覚神経と排尿筋を支配する副交感神経線維が損傷されることで、膀胱の収縮力が著しく低下し、弛緩性または低活動性膀胱を引き起こします。これにより、膀胱に尿が多量に溜まり(残尿)、排尿が困難になることが特徴です。選択肢1〜4の疾患は、多くの場合、中枢神経系や上位脊髄の障害による過活動性膀胱(排尿筋過活動)を呈します。
選択肢ごとの解説
- 1. 脳出血は中枢神経系の障害であり、排尿筋過活動による過活動膀胱を引き起こすことが多いです。特に脳卒中では、初期に弛緩性膀胱となることもありますが、一般的には排尿筋過活動が優勢となります。正しくは:脳出血による神経因性膀胱は、通常、排尿筋過活動性の過活動膀胱を呈します。選びやすい理由:脳出血は神経系の障害であるため、膀胱機能に影響を与えることは明らかですが、具体的なタイプ(低活動性か過活動性か)の区別が難しいかもしれません。混同注意:中枢神経系の障害による過活動性膀胱と、末梢神経障害や脊髄下位の障害による低活動性膀胱。
- 2. 胸髄損傷は脊髄の上位に位置するため、排尿反射弓が障害され、通常は排尿筋・外尿道括約筋協調不全を伴う反射性神経因性膀胱(過活動性膀胱)を呈します。正しくは:胸髄損傷では、一般的に排尿筋過活動性の過活動性膀胱を呈します。選びやすい理由:脊髄損傷が膀胱機能に重大な影響を与えることは理解できますが、損傷部位によって症状が異なる点を混同しやすいです。混同注意:仙髄以下の損傷(下位運動ニューロン型)による弛緩性膀胱と、上位脊髄損傷(上位運動ニューロン型)による反射性膀胱。
- 3. 多発性硬化症は、脳や脊髄の多発性の病変によって排尿筋過活動を引き起こし、過活動性膀胱の症状を呈することが最も一般的です。正しくは:多発性硬化症では、排尿筋過活動を主徴とする過活動性膀胱を呈することが多いです。選びやすい理由:多発性硬化症も神経疾患であり、多様な症状を呈するため、膀胱機能への影響も多岐にわたると考えがちですが、典型的な症状があります。混同注意:中枢神経疾患による排尿筋過活動と、その他の神経疾患による排尿筋低活動。
- 4. 頸椎後縦靱帯骨化症は、頸髄を圧迫し、上位運動ニューロン型の障害を引き起こすため、過活動性膀胱を呈することが多いです。排尿筋の収縮不全ではなく、むしろ過剰な収縮が問題となります。正しくは:頸椎後縦靱帯骨化症では、頸髄圧迫により排尿筋過活動性の過活動性膀胱を呈することが多いです。選びやすい理由:脊髄への影響があるため、膀胱機能障害が起こることはわかりますが、具体的なタイプを特定するのが難しいかもしれません。混同注意:上位運動ニューロン障害による過活動性膀胱と、下位運動ニューロン障害や末梢神経障害による低活動性膀胱。
- 5. 正解。糖尿病性自律神経障害は、膀胱の知覚神経および排尿筋を支配する副交感神経が障害されることにより、膀胱の収縮力が低下し、排尿困難や残尿増加を特徴とする低活動性膀胱を引き起こします。
国試ポイント
神経因性膀胱の分類(過活動性/低活動性、反射性/弛緩性など)と、それぞれの原因となる疾患を正確に結びつける知識が問われています。特に、中枢神経系疾患や上位脊髄損傷が過活動性膀胱に、末梢神経障害や仙髄以下の障害が低活動性膀胱につながるという基本原則を理解しているかが重要です。
混同注意
中枢神経系疾患による過活動性膀胱(脳卒中、脊髄損傷上位、多発性硬化症など)と、末梢神経障害や仙髄以下(馬尾)の障害による低活動性膀胱(糖尿病性神経障害、仙髄損傷など)の区別。両者の病態生理を正確に理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、疾患名と神経因性膀胱のタイプ(過活動性/低活動性、反射性/弛緩性)の対応関係に加え、それぞれの症状や主な治療法についても確認しておくと良いでしょう。また、具体的にどの神経(知覚神経、運動神経、自律神経)のどの部位が障害されると、どのような機能障害(蓄尿障害、排尿障害)が生じるかまで深く理解しておくことが求められます。
関連知識
神経因性膀胱は、原因となる神経障害の部位によって大きく分類されます。上位運動ニューロン障害(脳・脊髄上位)は排尿反射の中枢と上位のコントロールが障害され、排尿筋過活動や排尿筋・外尿道括約筋協調不全を起こし、過活動性膀胱となります。下位運動ニューロン障害(仙髄・馬尾・末梢神経)は、排尿反射弓そのものや排尿筋への神経伝達が障害され、排尿筋収縮力低下や無力膀胱、弛緩性膀胱(低活動性膀胱)となります。